「いざ、日本の祭りへ」(3)青森ねぶた祭

豊かな食材と緑と水に囲まれる青森の夏

“食”も青森の魅力。十和田湖や奥入瀬(おいらせ)渓流に足を延ばせば、都会の蒸し暑さが忘れられる森と水がふんだんにある。ねぶたが終わっても、青森を楽しんでみませんか。

「ワ・ラッセ」で作品をライトアップ

青森の玄関口、JR青森駅。改札を出て海側に進むと、赤い印象的な建物が見えてくる。「ねぶたの家ワ・ラッセ」だ。ねぶたは、祭りが終わると取り壊されて二度と見ることができなかった。しかし、「ワ・ラッセ」では、前年の入賞作品数台を、夜を模した暗い展示室にライトアップして展示。ねぶた師ごとの作品の特徴などの解説も交えて、ねぶたを深く知ることができる。

さらに左手に海を見て進むと、ピラミッドを半分にしたような三角形の建物「青森県観光物産館アスパム」だ。青森県の特産品や県内の観光情報がそろい、13階の展望台からは青森港も一望できる。毎年5月の連休には、アスパムの周囲に「ねぶた小屋」が建ち並ぶ「ねぶた団地」が出現する。

アスパムで情報を仕入れたら次は腹ごしらえ。海外からの観光客もよく訪れ、ねぶた祭の期間中も青森の食が味わえる3店を紹介する。

味噌カレー牛乳ラーメン

まずは、青森市民の“ソウルフード”「味噌カレー牛乳ラーメン」。青森なのに店名が「味の札幌・大西」。1970年代初めに北海道出身の店主の大西文雄さんが、師匠の故・佐藤清さんとともに開発した。漁業の盛んな青森では煮干しでだしを取った醤油ラーメンが主流で、油の多いコッテリ系の札幌ラーメンは不人気。しかし、ボリューム重視の学生らの間に口コミで広まり、当時のメニューにあった味噌、カレー、牛乳などを全部入れた「味噌カレー牛乳ラーメン」が誕生した。札幌に行ってラーメン店に入り『味噌カレー牛乳ラーメン』と頼んだら『何ですかそれ?』と言われてびっくり。青森オリジナルなんだと実感しました」と大西さん。

大人気の「のっけ丼」

青森市内で“旬”の観光スポットとして注目されているのが「古川市場」(青森魚菜センター)だ。2009年12月、お好みの魚介類を少量ずつ選んでごはんに乗せて食べる「のっけ丼」をスタートしたところ、新鮮な素材を味わえるだけでなく、地元の市場の人とのコミュニケーションも楽しめると大人気に。特別な高級素材以外は、ごはんも魚も貝類もほぼ100円均一。魚が食べられなくても焼肉もあるので大丈夫。

郷土の味なら「貝焼きみそ」

最後に郷土料理「貝焼きみそ」を紹介。青森名物ほたて貝の貝柱を小さく切って味噌で味付けしたものを卵でとじるシンプルな料理。地酒にもよく合うが、かつては栄養価の高い家庭料理として青森の食卓の定番だった。伝統的な「貝焼きみそ」を味わえる人気店が「六兵衛」。店主の松森利光さんによると「貝殻で焼くと味が良くなります。味噌がこぼれないよう大きくて深い貝を選ぶのがポイント」だという。「六兵衛」はねぶたの運行ルートにも近く、地下の店内までお囃子(はやし)が聞こえる。

“阿修羅の流れ”で涼をとる

ねぶた祭と青森市内を堪能したら、涼を求めて奥入瀬渓流へ。青森市内から車で約2時間。田園風景や牧場の中を走っていると次第に緑が濃くなってくる。やがて十和田湖から流れ出した奥入瀬川が見える。ホテルや売店が並ぶ「焼山」のバス停が渓流の入り口だ。渓流に沿って進むとカーブを曲がるたびに景色が変化する。「三乱の流れ」で複雑な水の動きを見て、石ケ戸休憩所に移動すると流れが穏やかな水面に変わる。ここで出会った地元のボランティアガイドが、いろいろ教えてくれた。続いて現れる「阿修羅の流れ」は、ポスターに使われることも多く迫力満点だ。白絹の滝を過ぎると、それぞれ表情が違うさまざまな滝が続く。銚子大滝の豪快な流れを通り過ぎると神秘の湖・十和田湖に到着する。

天然ヒメマスなら「十和田食堂」

十和田湖の名物はなんといっても天然のヒメマス。湖畔には多くの土産店や食堂が建ち並び、名物のヒメマスの塩焼きが楽しめるが、「十和田食堂」のヒメマス料理は一味違う。ヒメマスの天丼や、漬け丼など新メニューが多い。オリジナルのタレで味付けした、漬け丼の刺身は舌の上でとろけるような食感。

奥入瀬渓流沿いの道を戻り、十和田湖温泉郷に立ち寄る。温泉街の中心にご当地グルメ「十和田バラ焼き」の名店、「上高地食堂」がある。近年「B1グランプリ」で注目されたバラ焼きだが、この店では1972年の開店当時から変わらぬ味を提供している。店を切り盛りする中田さん母娘によると「バラ焼きは肉汁のしみ込んだタマネギがポイント。青森県産のタマネギにこだわっています」だという。牛肉100グラム当たりタマネギは250グラム。タマネギの甘さと秘伝のタレで、ごはんが進む。バラ焼きだけでなく、地元で採れた山菜やキノコなどの料理もある。

十和田市の中心部で国道4号線に入り、2011年に開業したばかりの東北新幹線「七戸十和田駅」へ。駅前にある「道の駅しちのへ」内のレストランで郷土料理「けいらん」をいただく。鶏卵の形のあん入りもちが、だし汁に入っている。昆布としいたけのだしの上品な味ともちの甘さがよく合う。かつて祝い事などの席でよく作られていた伝統料理をこの店で再現したところ、人気が復活しつつあるという。もう一つの名物「そばもち」もおすすめ。

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