東日本大震災から4年、三陸被災地の今

東日本大震災から4年、三陸被災地の今・上

社会

震災による津波で、特に大きな被害を受けた三陸地方。被災前から交通が不便で、漁業以外に目立った産業を持たず、過疎に悩んでいたこの地域の社会にとって、文字通り壊滅的な打撃となった。それから4年。瓦礫が取り除かれた被災地に残されたのは、広漠とした無人の土地であった。

土砂運搬コンベアが空を走る陸前高田

4年前、震災の翌月に岩手県陸前高田市の市街地を訪れた時、その風景に異様さを感じた。被災地は震災直後から何か所も見ていたが、どこかが違う。ファインダーをのぞきながら、その理由に気が付いた。瓦礫がないのだ。

他の津波被災地は、どこも見渡す限り瓦礫で覆い尽くされていた。誰もが、あの震災と津波の風景として記憶しているだろう。それが全くないのだ。もちろん処理されてしまったわけではなかった。津波ですべて沖へ持ち去られたのである。これだけでも、この地の津波のすさまじさがわかるだろう(写真1)。

写真1 2011年4月1日

陸前高田は、東日本大震災に伴う津波の被害が大きかった三陸沿岸のなかでも、とりわけ深刻な被害をこうむった。3368戸が被災し、死者・行方不明者は人口の約8%にあたる1976人に上った。3月11日の夜、自衛隊の偵察機からの「陸前高田、壊滅」という報告がテレビで報道されたことを今でも覚えている。

無人の街を覆う土盛りとベルトコンベア

その陸前高田の元中心市街地を現在、覆っているのは、空中を縦横に走るベルトコンベアである(写真2)。復興計画では、市街地を従来より海岸から離れた位置に、地面をかさ上げして造成することになっている。そのための土砂を近郊の山を崩して採取し、このベルトコンベアで運んできているのである。総延長約3キロメートル。ダンプカーを使った輸送に比べ、約3分の1に工期を短縮できるという。

写真2 2014年10月3日

昨年、2014年10月に訪れた時には、すでにかなりの土砂が台形に盛られていた。しかし、当然のことながら元市街地はいまだに無人。その上でベルトコンベアによる無人の工事が進んでいる。

田老の「日本一の防潮堤」は一瞬にして崩壊した

岩手県宮古市の田老地区は、いかなる津波にも耐えうると思われていた。

この土地は、何度も大津波で全滅した歴史を持っていた。記憶に新しいところでは、1896年の明治三陸津波で村の家屋がすべて流され、人口の8割以上が犠牲になっている。また、1933年の昭和三陸津波でも約9割の家屋が流され、人口の約3割が犠牲になった。

この昭和三陸津波の翌1934年から巨大防潮堤の建設が始まった。途中、戦争による中断があったものの戦後再開し、1958年に、全長1350メートル、海面からの高さ約10メートルという大堤防が完成した。工事はその後も追加され、最終的には、総延長約2400メートルのX字型2重堤防という空前の規模になった。田老は自他ともに認める「津波防災の町」として名を知られるようになったのである。

しかし、今回の津波はその自信を一瞬にして流し去った。津波の高さは約15メートル。2重堤防の内、海側の約500メートルは一瞬にして崩壊した。そのほかの部分も容易に乗り越えられ、陸側堤防のさらに内側も広く被害を受け、市街は壊滅。多くの犠牲者を出した(写真3)。

その2重堤防の内側では、現在、地盤かさ上げ工事が進んでいる(写真4、5)。しかし、巨大堤防への過信から逃げ遅れた犠牲者が多くいた、という意識が地元には強く、多くの住民が高台移転に賛成しているという。

写真3 2011年3月30日

 

写真4 2012年1月22日

 

写真5 2014年10月4日

いったん復旧した墓地を埋めていく大槌

岩手県上閉伊郡大槌町の復旧は最初から困難が付きまとっていた。町役場が津波の直撃を受け、町長が行方不明に。そして課長級全員も津波にさらわれるなど、町の行政機能は一気に失われてしまった。

死者・行方不明は1300人弱。中心市街地は、津波で崩壊した後、火災が発生していた。

写真6〜8は、その大槌の中心市街地の中でも山際の場所である。この場所は火災が収まったあとも容易に瓦礫の処理はできなかった。下に大規模な墓地があったからである。墓石等を破壊しないために、手作業で瓦礫除去が行われた。翌2012年には、一旦、復旧したが、結局、地盤の嵩上げを行うことになり、山際には新たに市街地が移転してくることになった。墓地は結局移転。現在市街地の土盛り、造成が行われている。

写真6 2011年3月19日

 

写真7 2012年1月23日

 

写真8 2014年10月4日

カバー写真=岩手県釜石市市街地、2011年3月31日(右)と2014年3月17日(左)
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