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日本語再発見① オノマトペの不思議な世界

イハーブ・アハマド・エベード【Profile】

[2017.09.18] 他の言語で読む : FRANÇAIS | ESPAÑOL | Русский |

そばやうどんを「ツルツル」と食べればおいしそうなのに、「ズルズル」としたとたんになんだかだらしなく感じる。日本語のオノマトペ(擬音語・擬態語)が持つ不思議な世界とは。

オノマトペが豊富な日本語

「ゴロゴロしていないで、子どもの面倒を見なさい」「ダラダラ電話しないで!」「ウロウロしないで!」。こんな家人の声を聞くと、僕は決まって「ビクビク」する。――こんな夫婦の様子に限らず、状況の細かいニュアンスを上手く描写してくれるのが「ゴロゴロ」「ビクビク」といったオノマトペである

オノマトペとは、状態や感情、あるいは動物の鳴き声や物音を、模倣したものであり、その中には「擬音語」と「擬態語」がある。「擬音語」とは、物音や動物の鳴き声など、人間の発声器官以外のものから出た音を、人間の音声で模倣したものである。

もう一つの「擬態語」の語彙(ごい)が豊富であることが、日本語の大きな特徴の一つである。これは、日本語を当たり前に使っている人々にとっては体にしみついたごく普通の表現である。もちろん世界中の言語にはオノマトペがあるが、それに対する音感覚は言語によってかなり違ってくる。

日本語のオノマトペ:一例とその主な意味

イライラ
草木のとげのことをいう「イラ」に由来。不快で落ち着きを失ってるような状態を指す
例文: 試験勉強が思うように進まずイライラする。

ピカピカ
光沢、つやがあるさま
例文:靴をピカピカに磨いて会社に行く。

ワクワク
水が地中から「わく」様子が語源とされる。期待や喜びなどで気持ちが高ぶるさま
例文:恋人が留学を終え、帰ってくる。ワクワクしながら空港に迎えに行った。

フワフワ
ふっくらとして軽いさま、またその軽いものが浮いてただよう様子
例文:青空に白い雲がフワフワ浮いている。

モチモチ
1. 粘りけがある食物の柔らかい食感 2. 肌がふっくらとして張りがあるさま
例文:赤ちゃんのモチモチした肌がうらやましい。

ニコニコ
楽しそうな微笑みを浮かべた笑顔
例文:何かいいことがあったのか、今日の上司は終始ニコニコ顔だ。

ペコペコ
空腹な様子。人にへつらう様子。「へこむ」が変化して重なったのが語源との説も
例文:お腹がペコペコで集中できない。社長にペコペコする。

ドキドキ
喜び、不安、恐怖、驚きなどで心臓が高鳴る様子
例文:試験結果発表の日、不安で心臓がドキドキする

ペラペラ
よどみなくしゃべるさま、特に外国語に長けていること。
彼は英語がペラペラだ。

「鳴き声」はオノマトペで使い分け

日本語は、アラビア語や英語に比べれば動詞と形容詞が少ない言語であり、カラス、小鳥、犬、ネコ、羊、カエル、虫などが「なく」場合、みんな「鳴く」という表現しかない。その代わりそれぞれの鳥や動物が副詞の擬音で鳴くと表現する。例えば、カラスはカーカーと、小鳥はチュンチュンと、犬はワンワンと鳴く。漢字が豊富にあるから「鳴く」「啼く」「哭く」と使い分けすることで動詞が発展しなかったとも説明できる。

また、笑い方や歩き方、食べ方などを表す擬態語、擬音語が日本語の中には圧倒的に多い。例えば、笑い方を表すオノマトペには「ケラケラ」「ゲラゲラ」「クスクス」「ニヤニヤ」「ニコニコ」「ニタニタ」などがある。

しかし、アラビア語や英語などのような言語では、それぞれの鳥や動物が個別に動詞で鳴く。例えば、英語では犬が「なく」場合は“Bark”、ライオンが「なく」場合は“Roar”、カエルが「なく」場合は“Croak”となるわけである。アラビア語も同様である。要するに日本語で例えると「囀(さえず)る」や「吠える」や「嘶(いなな)く」などといったものであろう。

1つで複数の意味があるオノマトペも

ゴロゴロ

①雷の音
例文:雷がゴロゴロと鳴っている。

②大きく重いものが転がるさま
例文:岩がゴロゴロと転がり落ちていった。

③目に異物が入ったり、腹の調子が悪い様子
例文:牛乳を飲んだらおなかがゴロゴロしてきた。

④ありふれた例であること
例文:そんな話は世間にゴロゴロしている。

⑤暇を持て余している様子
例文:休みの日は家でゴロゴロしている。


痛みの種類を的確に伝達

日本語では痛みを表す表現として、「キリキリ」「ズキズキ」「ピリピリ」「ジンジン」「ズキンズキン」「ビリビリ」「チクチク」「ガンガン」といった、さまざまなオノマトペがある。

痛みの種類とその表現を把握することは、実際に痛みを説明したり、理解させたりする際に大変役に立つ。 例えば「とがったもので刺すような痛みが何度も襲ってくる」と言わなくとも、「キリキリ痛む」と言えば十分に医師や相手に伝わる。私の場合、まだまだ日本語のオノマトペの語彙が十分でないため、胃が痛くて苦しい時にさらに苦しくなる。しかしオノマトペを使えば、表現にそんなに苦しまなくてもいいのである。

そう考えれば、オノマトペをもっと有効に活用していった方が、はるかに円滑なコミュニケーションが可能になる。そんな独特な世界を作るオノマトペが好きで、これからもドンドン使っていきたい。

バナーと文中漫画=モクタン・アンジェロ

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  • [2017.09.18]

1970年、エジプト・ギザ生まれ。サウジアラビア国立イマーム・ムハンマド・イブン・サウード・イスラーム大学東京分校アラブ・イスラーム学院講師。91年カイロ大学文学部日本語日本文学科卒業、97年大阪大学言語文化研究科修士終了。カイロ大学文学部日本語日本文学科助講師、東京外国語大学世界言語社会教育センター外国語主任教員(2011年~15年)を経て、現職。編著には『パスポート日本語アラビア語』、『基礎日本語学習辞典アラビア語版』、『大学のアラビア語 文法解説』、『大学のアラビア語表現実践』がある。

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