ニッポンの“水”

節水ノズルで世界の環境保全に貢献-東大阪の町工場発ベンチャー・DG TAKANOの挑戦

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毎夏のように水不足が報じられる日本。そのため、数多くの節水グッズが生み出されている中で、近年大ヒットしているのが株式会社DG TAKANOの高野代表が開発した節水ノズル「Bubble90」だ。平均9割という節水率と高い洗浄力を併せ持ち、飲食店などで一気に導入が進んでいる。

「水資源小国」日本で生まれたヒット商品

海に囲まれる島国で、降水量も多く、水が豊富なイメージのある日本。しかし、意外なことに実際には水資源(利用可能な淡水)が非常に少ない。1人が最大限利用できる水の量である水資源賦存(ふぞん)量は、1年間に世界平均が約8000立方メートルなのに対し、日本は約3400立方メートルと半分以下である。特に、首都東京を中心とした関東地域は人口が多く、1人の水資源賦存量は北アフリカや中東と同等の低水準。さらに、急峻(きゅうしゅん)な地形で河川も短い上に、梅雨や台風シーズンに降雨が集中しているため、雨水はすぐに海に流出してしまう(参考:国土交通省「平成27年版日本の水資源の現況」)。

そのため夏になると、毎年のように日本各地で水不足が起こり、全国的に節水ムードとなる。そして、今では日本人の約8割が日々節水を心掛けている(参考:内閣府「水循環に関する世論調査」)。

驚異の節水率と強力な洗浄力を持つ「Bubble90」

東大阪にあるDG TAKANOの製造工場

そうした状況から、日本には優れた節水グッズがたくさん生まれてきた。その中で、最近注目を集めているのが、大阪府東大阪市にある株式会社DG TAKANOの節水ノズル「Bubble90」だ。流し洗いに使われる水を80〜95%も節約でき、なおかつ電力も使わずに洗浄力を上げるという優れ物だ。

開発者で代表を務める高野雅彰(たかの・まさあき)さんは、Bubble90の最大の特長をこう語る。
「高い節水率で洗浄力も落とさない秘密は、Bubble90が発生させる“脈動流”にあります。空気を含んだ玉状の水を連続して放出させる脈動流は、半導体の洗浄などに使われている技術で、高級な温水洗浄便座などにも採用されています。しかし、それらは電力を利用します。Bubble90では、世界で初めて水圧だけで脈動流を発生する技術を開発して、小さなノズルに組み込んだのです」

Bubble90を手にする高野代表

蛇口に付けるだけで高い節水・洗浄効果

通常の水道から出てくる水を洗浄に使うと、一部の水のみが物体に当たり、残りの大半はその水の上を滑り落ち、物体に触れることはない。水量を増やした場合、水を押し付ける力は増すが、上を滑り落ちる無駄な水の量も一気に増えてしまう。それが、Bubble90の発生させる脈動流の場合、勢いよく放出された水の玉が間隔を空けて連続して打ち付けるので、上を滑り落ちる無駄な水が少ない上に、波が押し寄せるような振動も加わって洗浄力がアップするのだ。

高速シャッター撮影したBubble90の脈動流

電力を使わず、脈動流を水圧のみで発生させる独創的な技術で、Bubble90は国内外で高く評価されている。日本を代表する大手企業が数多く出品する「"超"モノづくり部品大賞」においても、2009年の大賞に輝いた。

そして、現在はいくつもの大手外食チェーンに採用され、工場は24時間フル稼働中だという。
「Bubble90は世界中の蛇口に簡単に取り付けることができるので、導入も簡単。水流の調整もでき、目詰まりも一発で解消できるメンテナンスフリーの商品です。節水効果や洗浄力に加えて、そうした使い勝手を兼ね備えていることも高く評価していただいています」(高野代表)


↑Bubble90の脈動流、節水効果や洗浄力は、上の動画をご覧ください。

“モノづくりのまち”が培った技術力

町工場の密集率日本一を誇る、“モノづくりのまち東大阪”の地がBubble90の誕生には大きく関わっている。
高野代表はIT企業勤めを経て、起業したばかりの時に、節水グッズの通販を手伝ってもらいたいと頼まれた。その商品を見て、「自分ならもっと良い商品を作れる」と奮い立ったことが、開発のきっかけだったという。
「節水グッズを調べていくうちに、世界中で水の問題がどんどん深刻になっていることを知り、参入を決めました。うちの父親は東大阪で町工場をやっていて、非常に高い技術を持っています。僕がアイデアを考えると、通常は製作に何日もかかるような試作品を数時間で作ってくれたのです。それが、開発効率を上げてくれました。僕は父親の事業は継いでいませんが、技術を継承させてもらったと思っています」(高野代表)

コンパクトなスペースに所狭しと並べられた世界最高峰のマシーン

しかし、大きな賞を受賞し、海外でも好評を得ていたBubble90でも、ヒットするまでは時間が掛かった。
「開発当初、日本ではLED電球ブームで、企業では節水よりも節電に目を向けていました」(高野代表)
2011年の東日本大震災によって発生した、福島第一原発事故の影響も大きい。それが拍車をかけ、公共機関や企業では照明のLED化を筆頭に節電に力を入れた。そのため、節水グッズを採用しようとする動きは非常に少なかった。

「そこで、東京に仲間とセールス会社を設立し、飲食店を中心に営業するスタイルに変えました。最初はなかなか採用されないので、お試しで飲食チェーンの1店舗に無償で設置してもらったんです。すると、数か月後に『すごいコスト削減効果だ!』となって、数十店舗での採用が決定しました。その後は、同じ方法でどんどん顧客を増やし、さらに口コミも加わって、一気に発注が増えたのです」(高野代表)
名を聞けば日本人なら誰でも知る大手飲食チェーンに数多く設置され、2年前には3人だった従業員が今では、グループ全体で50人を超えるまでに成長した。

一つ一つ丁寧に削り込まれるBubble90

世界の水資源に貢献する

現在、Bubble90は業務用のみの展開で、まだ家庭用は販売されていない。これだけの節水効果があるので、ぜひ実現して欲しいところだ。
「今までは、飲食店からの発注だけで生産はギリギリ、セールス部門も手一杯の状況でした。少しずつ、体制が整ってきたので、17年度には家庭用の販売を目指したいと思っています」(高野代表)
実際、飲食店以外にも、学校や病院、工場の手洗い場などで使用されている。珍しいケースだと、有害物質に汚染された部品の洗浄に使い、結果として汚染水を平均10%程度に減らすこともできる。

世界的な異常気象によって水資源の減少や汚染が心配されている昨今、確実に実績を積み上げているBubble90には、環境保全での貢献が期待される。
「もともと、Bubble90は洗浄用の蛇口に使われ、使い捨ての流し洗いに使われる水を減らす、環境に優しい製品です。日本では、水道の節水量がCO₂削減量にも換算されます。また、お湯用もあり、こちらはお湯の使用量を減らすことで、電気代やガス代の削減にもつながり、トータルな省エネができるグッズと言えるでしょう。今後は開発施設を増やし、海外生産も開始する予定です。アイデア、技術力、加工力を最大限に活かしたモノづくりと営業体制をしっかりと整え、世界中の人にBubble90を使っていただけるようにしたいと考えています」(高野代表)

自ら最先端の工作機械を操り、開発・製造に取り組む高野代表

写真・動画撮影=三輪 憲亮 取材・文=ニッポンドットコム編集部

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