訪日外国人に人気の観光スポット

東京で和室に泊まろう!—情緒あふれる畳部屋旅館5選

文化

街の歴史を色濃く映す、味わいのある和風の旅館が東京にも残っている。畳の客室がある宿に精通する写真家が、旅情をそそる東京旅館を厳選紹介。

散策した街に泊まって旅情を高める

「せっかく日本を旅するのならば、味気ないビジネスホテルのベッドに寝るのではなく、情緒ある旅館で畳の部屋に泊まる方が楽しいですよね? それは、東京でも同じことだと僕は思うんです」

そう語るのは、小規模ながらも趣のある東京の旅館を、3年間にわたって撮影し続けている写真家・安藤青太(あんどう・せいた)氏。2016年春にはガイド本「東京の、すごい旅館」(アスペクト刊)を制作し、ニュース番組で特集されるなど話題を呼んでいる。

浅草寺雷門

日本人でも外国人でも、東京に行くとなると利便性を優先して、シティホテルやビジネスホテルを予約してしまう人が多い。しかし、それは「もったいない」と言うのが彼の持論だ。
例えば、東京ナンバーワンの観光地・浅草を訪れるとしよう。雷門から仲見世を通って浅草寺をお参りする定番ルートに加えて、老舗料理店や演芸場、花屋敷など、訪れたいスポットが数多い。

「でも、その後にターミナル駅近くのビジネスホテルに戻って寝たら、浅草の余韻が薄まってしまいますよね。観光や散策をするなら、その街の近くにある旅館に泊まることを僕は提案しています。しかも、畳の部屋で布団に寝れば、ホテルのベッドより確実に旅情が高まるし、いい夢が見られると思いますよ」(安藤氏)
そこで、今回は特に訪日観光客にお勧めしたい東京の旅館を5軒紹介してもらった。

浅草を散策した後は、浅草に泊まろう! 左上)浅草を流れる隅田川には水上バス乗り場も 右上)「うますぎて申し訳ないス!」の看板で有名な洋食屋「ヨシカミ」 左下)明治時代から続く大衆演劇場「木馬館」 右下)夕焼けに染まる日本最古の遊園地「浅草花やしき」

スカイツリーを眺めながら眠りにつく

その浅草にはお勧めしたい宿がたくさんあるが、今回はスカイツリーが見えて仲見世も見下ろせる部屋がある『旅館 三河屋』を紹介する。

左)昼間の三河屋405号室から仲見世を見下ろす 右)403号室の障子窓を開けると、ライトアップされたスカイツリーが美しい

浅草は東京で最も歴史を感じさせる街の一つだが、スカイツリーができてから景色に都会的なイメージが加わって魅力が増した。その両面を満喫できて、なおかつ快適な畳の部屋に泊まれるのが三河屋の魅力だ。

「スカイツリーは、やはり夜の姿が素敵です。そして、ライトアップされた仲見世もきれいなんですが、人がほとんどいなくなる深夜にはさらに凛(りん)とした美しい佇(たたずま)いとなります。そうした時間帯の情景が楽しめるのも、浅草に泊まる人の特権ですね」(安藤氏)

左上)三河屋の外観 右上)ロビーにはさまざまな言語のガイドブックがそろえてある 下)人波が途絶えた深夜の仲見世は一見の価値あり

三河屋では、2002年日韓ワールドカップを機に、訪日観光客を積極的に受け入れてきた。日本旅行初心者でも、経験豊富な若女将(おかみ)が優しく対応してくれるので安心。大浴場はないが、若女将いわく「常連さんは、近くにある銭湯『蛇骨湯』(じゃこつゆ)で天然温泉を楽しんでいる」そうだ。旅館から銭湯通いするのも、街の風情が強く感じられて粋だろう。

左上)居心地の良い客室 左下)三社祭の提灯が並ぶフロントでは、若女将が親切な対応をしてくれる 右下)江戸時代から続く銭湯「蛇骨湯」

●「旅館 三河屋」

  • 住所:東京都台東区浅草1−30−12
  • HP:http://www.asakusamikawaya.com/
  • アクセス:東京メトロ銀座線浅草駅、東武線浅草駅から徒歩5分
  • 電話:03(3844)8807
  • 料金:1人朝食なし 7500円〜

アキバで遊んでも学力アップ︎する昭和風旅館︎︎

秋葉原好きの方にお勧めなのが、湯島にある『ホテル江戸屋』。
「ポップカルチャーや激安家電などの日本の最先端文化と、歴史ある街並みの両方を満喫するには湯島辺りに泊まるのが最適。日本に来て、アキバとビジネスホテルの往復だけなんて人は、本当にもったいないですよ」(安藤氏)

左上)激安家電、アニメグッズ、メイド喫茶と、若者には誘惑が多い秋葉原の街 左下)ホテル江戸屋の外観 右)ゆったりと落ち着ける純和風の客室内

湯島は秋葉原から徒歩10分ちょっとだが、近くに湯島天神や神田明神、湯島聖堂など名所旧跡が点在する散策に適した街だ。

「秋葉原に通うのは学生さんなど、若い方が多いと思います。湯島天神、湯島聖堂は日本有数の学問の神様です。アニメやメイド喫茶など遊びばかりに没頭していないで、勉強や仕事のスキルアップのお願いに立ち寄るとバランスいいかもしれませんよ」(安藤氏)

左上)湯島天神へ緩やかに通じる女坂。急な男坂もある 右上)湯島天神には学業成就の絵馬がたくさん奉納されている 左下)湯島聖堂にも大量の絵馬が。 右下)湯島聖堂にある世界最大の孔子像(高さ4.57メートル)

そして、江戸時代には「江戸総鎮守」だった神田明神もすぐ近く。名物の一つ「甘酒」は、腸内環境を整えて疲労回復や美肌・美白に効くと、今日本で人気沸騰中。こちらも、ゲームやアニメで夜更かし気味の方には強い味方になるかも。

左上)神田明神前にある甘酒の老舗「天野屋」 右上)神田明神、湯島聖堂に近く、散歩に最適な昌平坂 下)威厳ある神田明神の御神殿

江戸屋は昭和の香りが色濃い内装で、都会ながら露天風呂もある隠れ家旅館。外国人の長期滞在客やリピーターが多いので対応も行き届いており、秋葉原目的以外の方にもお勧めしたい宿だ。

左上)館内全体が昭和レトロな渋い内装 右上)大浴場の外には露天風呂 左下)障子窓から柔らかい光が入る畳の客室 右下)地下一階にある手打ち蕎麦の店「古拙」も絶品と評判

●「ホテル江戸屋」

  • 住所:東京都文京区湯島3−20−3
  • HP:http://www.hoteledoya.com/
  • アクセス:東京メトロ千代田線湯島駅から徒歩3分
  • 東京メトロ銀座線末広町駅から徒歩6分
  • 電話:03(3833)8751
  • 料金:シングル1人朝食付き 6890円〜

1日1組限定! 昭和の一軒家暮らしを体感できる宿

「畳の部屋に泊まりたい」と希望する外国人に多いのが、小津安二郎の映画やアニメ「ドラえもん」などの世界で見た日本の暮らしを体験してみたいという方。そんな人にお勧めなのが、新馬場駅にある「BAMBA HOTEL」だ。
「昭和の日本の生活を体験したいなら、やはり一軒家でしょう。ここは築70年の古民家を再生したので、1日1組だけが一棟占有するというレアな体験ができます。家族やグループでの旅行には、特にお勧めですね」(安藤氏)

新馬場は旧東海道の一番宿である品川宿として栄えた辺りで、鎌倉時代に起源を持つ品川神社が目と鼻の先。羽田空港にも近いので、日本最後の1日をここで過ごしてみては?

右上)古民家の長屋をリフォームした「BAMBA HOTEL」 上中)リビング部分も純和風の座卓に座布団 右)厳選されたアンティーク家具が揃う 下)夜は畳に敷かれた布団で

●「BAMBA HOTEL」

  • 住所:東京都品川区南品川1−1−2
  • HP:http://47gawa.tokyo/bamba/
  • アクセス:京急線新馬場駅から徒歩1分
  • 電話:070(5566)9441
  • 料金:一棟利用朝食付き 3人まで22680円〜 ※6名以上、子供の利用などは要相談

登録有形文化財に指定される歴史的旅館

日本建築に興味がある方には、本郷の『鳳明館 本館』を推したい。
「この本館は、登録有形文化財に指定されていて明治38年築。つまり、明治期の建物に泊まれるという貴重な体験ができるのです。内装も昭和20年に改装してから、大きく手を加えていないというのですから、その佇まいはまさに歴史そのもの」(安藤氏)

元々は帝大生(現在の東京大学)向けの高級下宿屋だったため、築材には銘木を使用し、職人が意匠を凝らしたという。インターネットを利用して訪日観光客を積極的に呼び込んでいるというので、外国人対応もしっかりと行き届いている。

上左)明治時代に建てられた鳳明館本館 上右)趣のある広々としたロビー 中)職人が趣向を凝らした客室の内装 下左)中庭を客室が取り囲む 下右)大浴場も味のあるタイル張り

●「鳳明館 本館」

  • 住所:東京都文京区本郷5−10−5
  • HP:http://www.homeikan.com/
  • アクセス:都営地下鉄三田線春日駅から徒歩5分 東京メトロ南北線東大前駅から徒歩10分 東京メトロ丸ノ内線本郷三丁目、都営地下鉄大江戸線本郷三丁目から徒歩10分
  • 電話:03(3811)1187
  • 料金:1人朝食付き 6500円〜

日本文化を学べる下町のデザイナーズ旅館

畳の部屋に泊まってみたいけど、純和風すぎるのはちょっと不安という外国人の方にお勧めなのが三ノ輪にある「行燈旅館」(あんどんりょかん)。2003年にオープンした、畳に泊まれる「和風デザイナーズ旅館」だ。
「南千住に近い下町情緒の残る街にあるのですが、外観・内装ともに非常におしゃれ。ジェットバスには有田焼を使った銭湯風壁画があるなど、外国人旅行者大歓迎というオーナーのこだわりを感じます」(安藤氏)

宿泊客向けに茶道や生け花、寿司作りなど、日替わりで日本文化教室が開催されている。宿泊料もリーズナブルなので、長期滞在にはうってつけ。下町を一望できる屋上テラスで、夕日を見ながら飲むビールは最高に贅沢!

上)宿自慢のジェットバス 下左)行燈旅館の外観はおしゃれなデザイナーズ・ビル 下中)くつろげる畳の客室 下右)下町が一望できる屋上テラス

●「行燈旅館」

  • 住所:東京都台東区日本堤2−34−10
  • HP:http://www.andon.co.jp/
  • アクセス:東京メトロ日比谷線三ノ輪駅から徒歩5分
  • 電話:03(3873)8611
  • 料金:1泊朝食なし(一室2名) 7000円〜

【書籍情報】

『東京の、すごい旅館』

写真=安藤青太 文=岩下誠明、杉山茂徳
出版社: アスペクト
価格:¥1500(税別)
言語: 日本語
※今回紹介したものを含めて、東京で畳に泊まれる個性的な21旅館が紹介されている。

写真:安藤 青太
(散策写真、三河屋の夜景は撮り下ろし。他の旅館写真は「東京の、すごい旅館」より)

取材・文:ニッポンドットコム編集部

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