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目も口も心も大満足-長門市の観光スポット

山口県長門市とはどんな特徴を持つ町なのか。山口県のタウン情報誌「トライアングル」が、「温泉」、「絶景スポット」、「グルメ」の3つをキーワードに、その魅力を紹介する。

山口県最古の温泉を訪ねて

長門市内には5つの温泉地があるが、中でも「長門湯本温泉」は、約600年前に住吉大明神のお告げによって発見された、山口県でも最も歴史が古い温泉として知られている。温泉街には、昔ながらの公衆浴場や足湯もあり、宿泊だけでなく日帰りでも湯を楽しむことができる。

湯本温泉の老舗旅館として名高い「大谷山荘」では、美しい自然に囲まれたそのロケーションを活かし、四季のうつろいを肌で感じながら癒やしのひとときが過ごせる。日本ならではの魅力にあふれた温泉宿だ。

音信川沿いに建つ、大谷山荘の外観(写真提供=大谷山荘)

一番の醍醐味(だいごみ)はやはり温泉。大谷山荘にはあわせて11種類のお風呂があり、ゆったりと湯巡りを楽しむことが出来る。湯本温泉の泉質はアルカリ性単純泉。その成分は化粧水の成分にも近く、「美肌の湯」としても知られている。

大谷山荘の2階にある大浴場「こもれびの湯」(写真提供=大谷山荘)

また、湯本温泉の中心を流れる音信川(おとずれがわ)には、切ない伝説も残っている。昔、かなわぬ恋に落ちた湯女(ゆな)が秘めた思いを文にしたためて川に流したという。

湯女の伝説にちなみ、湯本温泉では口にできない思いをしたためて流せる「短冊」を作っている。

毎年夏に行われる湯本温泉納涼盆踊り大会では、温泉街が幻想的な雰囲気に包まれる。湯本温泉は、情緒ある景観と歴史、そして旅人を癒やす温泉宿が立ち並ぶ、ぬくもりにあふれた場所なのだ。

湯本温泉納涼盆踊り大会の様子(撮影=杉山和郎)

日本海が生んだ絶景の数々

日本海に面し、起伏に富んだ地形の長門は、手付かずの自然がそのまま残っているエリアや、人の手が加わることで印象的な景観が作り出されたスポットも多い。その中でも、思わず目を奪われるような絶景スポットをご紹介しよう。

きれいに並んだ123基の鳥居が美しい「元乃隅(もとのすみ)稲成神社」は、多くの観光客が訪れる人気の観光スポット。赤い鳥居と青い日本海が作り上げるコントラストが見事だ。

連なる鳥居と自然が調和し、美しい景色を作り出す元乃隅稲成神社(撮影=三ツ井正之)

元乃隅稲成神社のさい銭箱は、高さ6メートルの大鳥居上部に設けられており「日本一入れにくい」と評判だ。見事投げ入れることができれば、願いがかなうと言われている。

鳥居上部のさい銭箱にさい銭を入れるのは本当に難しい

また、元乃隅稲成神社の近くには「龍宮の潮吹」がある。北寄りの風が吹く時、まるで龍が天に昇っていくかのように、海水が岸壁を駆け上る現象が見られる時がある。その高さは、最大30メートルにも達する。

龍宮の潮吹では、飛び散るしぶきが光を反射し、まるで銀の砂をまいたような美しい光景が見られる(撮影=いにてん)

絶景スポットはまだある。周囲40キロメートルの青海島周辺は、別名「海上アルプス」とも呼ばれており、日本海の荒波が作り上げた奇岩・怪岩が連なる、不思議な光景を目にすることができる。

夜明けを迎える海上アルプス。周辺の海岸一帯は、北長門海岸国定公園に指定されている(撮影=末廣周三)

標高333メートルの高台に広がる草原「千畳敷」も圧巻だ。海と空の爽快な一大パノラマが楽しめる。

日本海を一望する、気持ちの良い眺めが楽しめる千畳敷(写真提供=長門市役所)

そして、「東後畑棚田」では、毎年5月から6月にかけて、水の張った棚田とイカ釣り漁船の漁火が調和した美しい光景が見られる。このような類いまれなる自然の景色は、多くの人を魅了してやまない。

棚田の水田と漁火が調和した光景は、初夏にだけ見られる特別な光景だ。毎年多くのカメラマンがこの地を訪れる(撮影=持吉勝三)

長門を代表するグルメとして「やきとり」と「かまぼこ」の2つが挙げられる。どちらも、古くから長門の人々に愛されてきた馴染み深い食べ物だ。

生活に密着した庶民の味、「やきとり」

長門は、「全国7大やきとりタウン」の1つとして数えられるほど、やきとり店が多い。それは、養鶏場とやきとり店が同じ地域にあり、新鮮な鶏肉が手に入りやすいことが理由の1つだ。

82歳の2代目女将(おかみ)が切り盛りする、長門で一番古いやきとり店「こうもり」。鶏の腹から取り出した殻のない卵など、新鮮な鶏肉が手に入りやすい長門ならではのメニューも揃う。

長門の老舗やきとり店「こうもり」では、遠方から訪れるお客さんが後をたたない

また、昨年オープンしたばかりのお店「ちくぜん総本店」では、珍しい長州どりのモツのほか、豚バラで巻いたオクラ巻きなど、鶏以外の食材を使用した多彩な創作串があるのが特長だ。

ちくぜん総本店では、一味違ったやきとりメニューが楽しめる

また長門では、「全国やきとリンピック」や「西日本やきとり祭り」など、全国各地のやきとり店が集まるお祭りも開催されており、毎回多くの人たちでにぎわう。やきとりは長門の人々にとって、欠かせない存在なのだ。

お祭りでは大量のやきとりが一度に焼かれる(写真提供=(一社)長門市観光コンベンション協会)

過去に行われたお祭りの様子(写真提供=(一社)長門市観光コンベンション協会)

長年愛され続けてきた「かまぼこ」

魚の身をミンチにして固め、焼いた食べ物が「かまぼこ」。1115年の文献にも載っており、約900年間、人々に愛されてきた。港町である長門市仙崎では、かつては30軒以上のかまぼこ会社が立ち並んでいた。この地域で作られるかまぼこは「仙崎かまぼこ」と呼ばれ、お土産品として人気だ。

かまぼこの製造工程は会社によって異なるが、「大和蒲鉾」では、昔ながらの製法でかまぼこを作っている。原料となる魚「エソ」を手作業でさばいて丁寧に洗い、いくつもの工程を重ねながら、細かくすりつぶしていく。生魚を使用しつつ、常に同じ状態の製品を作り出すには、熟練の技が必要だ。板に載せて成型し、焼き上げたかまぼこは「焼き抜き蒲鉾」と呼ばれており、弾力のある独特な歯応えが特長だ。こうした食文化が根付いているのも、長門に漁港や養鶏場などがあり、新鮮な食材が手に入りやすいからこそである。

かまぼこの材料の中心となっている魚、エソ。この魚をさばいて身をすり潰し、かまぼこは作られる。

昔ながらの製法でかまぼこを作っている「大和蒲鉾」での、さばいた魚の身を練る工程。1時間近く掛けて攪拌(かくはん)することで、魚の身がムース状になる

柔らかくなった身を板の上に載せ、形を整える。この後、加熱させて、かまぼこが完成する。

「焼き抜きかまぼこ」(写真左)、ちくわやひら天(写真奥)、中には、かまぼこフライを挟んだハンバーガー(写真右)を出しているお店もある。

心を癒やす温泉に、感動を与えてくれる絶景、胃袋を誘惑する2つのグルメ。豊かな自然に恵まれた長門は、心と身体を満たしてくれる要素が数多く存在する魅力的な土地なのだ。

取材・文=「月刊タウン情報トライアングル」編集部

【長門市観光情報】

長門市経済観光部観光課
759-4192 山口県長門市東深川1339-2
0837-23-1137
8:30~17:15(平日のみ)
http://www.nanavi.jp/

(一社)長門市観光コンベンション協会
759-4101 山口県長門市東深川1324-1 0837-22-8404
8:30~17:15(土日祝可)

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