特集 銭湯で日常の「旅」を楽しむ
湯を巡る旅—個性豊かな銭湯10軒

町田 忍【Profile】

[2017.04.25] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

日本全国3000軒以上の銭湯を巡ってきた筆者が、一度は訪れたい特徴ある銭湯を紹介する。

現在、1日1軒のペースで日本のどこかの銭湯が姿を消している。それでも、伝統を守りながら生き残ってきた銭湯や、時代の移り変わりに順応して、外装も刷新、新たな利用者を開拓している銭湯も少なからずある。ここでは、北海道から沖縄まで、個性的な10軒を紹介する。

大正湯【北海道函館市】

函館の漁港が見える坂の上にある「大正湯」。北海道開拓時代のロマンを思い起こさせる造りである。戦時中の空襲からも免がれた貴重な銭湯だ。外観は木造、下見板張りで、ペンキは開業時から何回も塗られている。脱衣場も開業の1927年の面影が色濃く残っている。

<詳細:大正湯

ピンク色の外装がおしゃれな雰囲気を醸し出す

三吉(みよし)湯【群馬県桐生市】

昭和初期に建てられた「三吉湯」は、かつてすぐ前に製糸工場があり、そこで働く女性らで連日大変な混みようだったという。外観は洋風で、屋根の上に三角小屋根があるのが印象的だ。現在入口一部に軽食スペースがあり、ひと風呂浴びて利用する客に人気だ。

<詳細:三吉湯

食事処としても地元住民に親しまれている三吉湯

燕(つばめ)湯【東京都台東区上野】

都内唯一の国の登録有形文化財に指定されている銭湯。その外観の宮造りもさることながら毎日午前6時から営業しているのが特徴だ。朝早く上京してきた人や夜勤明けのお客で開店時は列ができるほど。湯船の温度は都内でも最も高く、開店時は約48度である。

<詳細:燕湯

創業以来100年以上にわたり朝風呂を続けている

ふくの湯【東京都文京区千駄木】

2011年に改装工事をして装いも新しくなった銭湯。屋号の通りお客さんに福が来るようにと「ご利益気分な銭湯」ということで、内部は風水理論を参考に配色をし、浴室には七福神にあやかった絵もある。また伝統的な富士山の絵も2種楽しめる(男湯、女湯は1週間で入れ替わる)。

<詳細:ふくの湯

2011年にリニューアル。遠方から若いカップルが多く訪れる粋でおしゃれな銭湯に生まれ変わった

和洋折衷の雰囲気が魅力。右側の湯船の上には青富士、左側には赤富士が描かれている

武蔵小山温泉清水湯【東京都品川区小山】

創業は1924年。2008年、家業を継いだ3代目が3階建ての銭湯にリニューアル。江戸の門をイメージした入口は堂々としている。湯は天然温泉の黒湯と地下1500メートルからの赤茶色の「黄金の湯」と2種の天然温泉が特徴。さらにその黒湯でつくったゆで卵を販売している。

<詳細:清水湯

外観は木戸門のある和風様式

露天風呂も楽しめる

明神湯【東京都大田区南雪谷】

現在都内に残る宮造り銭湯の中において、これほど開業時の姿をほぼ完全に保っている銭湯は、そう多くはない。伝統的な「番台」という監視台も現役で、そこにはいつも笑顔の女将(おかみ)さんが座る。浴室には丸山清人(きよと)絵師による巨大な富士山の絵もある。1958年築。

<詳細:明神湯

戦後建てられた宮造り唐破風(からはふ)銭湯の定番の姿を残す

丸山絵師による富士山は圧巻だ

船岡温泉【京都市北区】

京都には歴史ある名銭湯が多い。船岡温泉はそんな中で京都の銭湯の頂点に君臨している。1923年創業から戦前までは2階が料亭であった。脱衣場には京都三大祭や、天狗(てんぐ)と牛若丸の立体彫刻、さらには上海事変を題材とした透かし彫りの欄干もある。

<詳細:船岡温泉

2003年、京都の銭湯では初めて登録有形文化財に登録された

天井には大きな飾り彫刻。 脱衣所の周りを透かし彫りの欄干が囲む

源ヶ橋(げんがはし)温泉【大阪市生野区】

大阪の下町にある1937年に建てられた銭湯。当時流行した和洋折衷様式で、屋根にはシャチホコ、入口上部には「自由の女神」が乗っている。これは入浴とニューヨークをひっかけた洒落(しゃれ)で置かれたものである。浴槽は大理石や、オパール原石使用のものがある。

<詳細:源ヶ橋温泉

戦時中、「自由の女神像」を憲兵が撤去しようとしたが、頑丈でびくともしなかったという

だんぢり湯【大阪府岸和田市】

「だんじり祭」で有名な大阪の岸和田にある天然温泉銭湯。入口正面の屋根の上には、本物のだんじり(山車)が乗っている。これだけでも1億円近く費用がかかっているという。館内には、ちょうちんが下がり、浴室には8種のジェットバスのほか、露天風呂やサウナなどさまざまな設備がある。

<詳細:だんぢり湯

だんじり山車が正面で出迎えてくれる

ご主人の息子さんがだんじりをつくる職人ということもあり、本物のだんじりを屋根に乗せたとのこと

中乃湯【沖縄県沖縄市安慶田】

日本最南端、沖縄県唯一の貴重な銭湯。1960年に建てられた。脱衣場と浴室がワンルームになっている。高めの位置にある湯と水の蛇口は二股のホースで結ばれ、シャワーのようにして使用する。地下350メートルから汲み上げられているアルカリ鉱泉。番台はなく、フロント方式となっている。

<詳細:中乃湯

浴室の中央に楕円形の湯船がある

写真提供=町田 忍

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  • [2017.04.25]

庶民文化研究家、日本銭湯文化協会理事。1950年東京生まれ。和光大学人文学部芸術学科卒。少年時代から商品パッケージなどを収集。その歴史などを皮切りに、明治から戦後における庶民文化史を幅広く研究。1980年頃より全国の銭湯巡りを始める。『昭和レトロ博物館』(角川学芸出版, 2006年)、『銭湯の謎』(扶桑社、2001年)など著書多数。

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