特集 心躍る文房具の世界
発売から30年、進化し続けるラベルライター「テプラ」

三田村 蕗子【Profile】

[2017.11.24]

身の回りのモノにラベルを貼って整理したい、あるいは「自分用」として区別したい。そうしたニーズを掘り起こして進化したキングジムのラベルライター「テプラ」。多彩な文字とテープの組み合わせで使い道はさまざまだ。

オフィスから工場、家庭まで広がる用途

文字を入力し印刷ボタンを押すと、セットしているテープカートリッジにカタカタカタと文字が印刷され、機械から出てくるラベルをモノに貼ってできあがり。会社勤めの経験がある人なら、文書ファイルにもロッカーにもOA機器にも手軽に使えるラベルライター「テプラ」を一度は目にしたことがあるのではないだろうか。

オフィスや家庭用の文具メーカー、キングジムがオフィスの常備品「テプラ」を発売したのは1988年。開発本部商品開発部ラベルライター課長の植原隆行氏は当時をこう振り返る。

「ちょうどオフィスのOA化が進んできた頃です。当社の稼ぎ頭はファイルですが、ずっとこの路線のままでいいのか、OA化を背景に何か電子文具を開発した方がいいのではないかと、企業の方向性を検討する中で『テプラ』が生まれました。ラベルライターなら、オフィスでファイルの見出しにも使えるので、当社の既存製品とも親和性がある。売りやすいと考えました」

ファイルの背につける見出しを、人によって字が異なる手書きから、誰がやっても同じフォントを美しく印刷できるラベルに変えよう。そうすれば見やすくなり、棚に入れたときも美しくそろう。

このキングジムの狙いは、ある意味で当たり、ある意味ではずれた。発売された「テプラ」はファイルのタイトルの見出し用として重宝されると同時に、別の需要も生み出したからだ。

「オフィスではファイルだけではなく文具に部署名や個人名を入れるために使われ、工場では安全安心に関する注意書きをラベルに記して貼るという利用法が生まれたんです。『テプラ』のテープはぬれても字が消えないので、その点も重宝されたようですね」

やがて「テプラ」の活躍場面はオフィスから一般の家庭へと広がっていった。子どもの持ち物、台所の調味料や食材の保管容器、洋服の収納ケースなど…。当時、テレビ番組の録画にはDVDではなくビデオテープが利用されていたが、このビデオテープや音楽を録音するカセットテープの整理や趣味のコレクションの分類に使うという人も多かったという。消費者は、名前が簡単につけられる「テプラ」の機能に注目し、「ファイルの背見出し用に使ってもらえれば」と考えていたメーカーの意図を超え、消費者が必要に応じて用途を開拓していった。

用途によって、価格はさまざま。写真のテプラはかわいい絵文字も打てるタイプ(SR170)で、本体価格は8800円。 まず名前を打ち出してみる。印刷するたびに自動的にテープがカットされる。

さまざまなテープがあり、りぼんにも印字できる。英語や中国語(簡体字)、韓国語などのラベルもキングジムの無料ウェブサービスサイト「テプラ外国語ラベル工房」を利用して作成できる

マグネットタイプから蓄光タイプまでテープは350種以上

現在までに開発された「テプラ」は約70機種もある。製品は価格や機能によって、高機能を搭載したハイスペックタイプ、基本的な機能を備えたスタンダードタイプ、安価なエントリータイプ、家庭での利用に特化したホームタイプ、パソコンからの出力が可能なPCタイプの5つがある。

「テプラ」の歴史から代表的な機種をピックアップしてみよう。まず筆頭に挙がるのが、1992年に発売した初のキーボードタイプの製品だ。ダイヤル方式からキーボード入力への変更は、パソコンが本格的な普及期に入ったことを反映している。

1988年に“デビュー”したダイアル入力のTR55機種(上)。下は2015年に発売されたSR970。高速印刷が特長で、PCに接続しても使えるため「外国語ラベル工房」にも対応する

同年には機械にセットするテープも進化した。最初はテープにラミネート加工を施していたが、インクの改良でラミネートなしでも印字がかすれにくくなり、価格も安くなったのだ。

その後、テープの種類も爆発的に増えていく。もっともオーソドックスな幅12ミリに加えて、4ミリ、6ミリ、9ミリ、18ミリ、24ミリを発売、97年には工場での需要を見越して、幅36ミリタイプの発売に踏み切った。

「それまでは幅を広くすると、どうしても端の方の文字がかすれてしまったのですが、改良により、クリアに印刷することができるようになりました。幅36ミリタイプは工場内で注意を喚起するための表示などに利用されています」と植原氏は説明する。

現在テープは350種類以上を発売している。会議で使用するホワイトボード用やオフィスのスチール什器(じゅうき)に便利なマグネットタイプのテープ、布に貼ることができるアイロンラベル、布製のりぼんやマスキングテープ素材のテープに文字をプリントできるもの、「ケーブル表示」ラベル(白地部分に印刷し、透明部分を巻きつけることでセルフラミネートが可能)、明るいところで光を蓄え、停電や消灯時など、室内が暗くなると一定時間発光が続く蓄光タイプのテープまで登場している。

また、印刷物の訂正用途に使用するためのラベルが透けないテープもある。植原氏によれば、消費税が5%から8%に上がった時に開発したもので、小売店が主なユーザーだ。

かわいいフォントや絵文字搭載の「ガーリーテプラ」

発売当初こそ、作り手の思惑を超えて、消費者が次々に用途を見いだしていったが、もう今は違う。キングジムは積極的に社会情勢や消費者のニーズに耳を傾け、目を凝らして、新しい用途の開拓に乗り出している。

2013年には、女性たちの間で小物やアクセサリーのハンドメイドがブームなのに着目し、女性向け「テプラ」が投入された。かわいいフォントや絵文字、フレームを搭載し、りぼんやマスキングテープへの印字も簡単な「ガーリーテプラ」だ。11月にはさらに機能をブラッシュアップした新機種を発売した。

11月24日に発売された新「ガーリーテプラ」SR-GL2(本体価格1万2000円)。コスメポーチのような縫製カバー付きで、「日付シール」印刷機能やフォント、絵文字などに新デザインを多数搭載。右は初代「ガーリーテプラ」SR-GL1。

「ピンポイントで女性に的を絞った製品です。女性が家の中をきれいにかわいく整理できるような機能に特化しました。作ったラベルをSNSにアップする女性も多いんですよ。誰かのためではなく自分のために使用されているのは、従来の『テプラ』とは異なる点ですね」(植原氏)

パソコン全盛の時代にあっても「テプラ」の売れ行きは右肩上がりだそうだ。きれいに見やすく印字ができて、幅広い素材への印字が可能なラベル作りを可能にする「テプラ」。整理整頓好きな日本だからこそ生まれ、進化を遂げた文具である。

撮影=長坂 芳樹

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  • [2017.11.24]

フリーライター。福岡生まれ。津田塾大学学芸学部卒業。流通を皮切りにビジネスの幅広いテーマを手掛け、現在、ビジネス誌や経済誌、流通専門誌で活動中。2014年11月下旬から経済成長著しいバンコクに拠点を移し、東南アジアの取材活動にも力を入れている。移住の経緯やバンコク情報は、ホームページで発信中。著書に『夢と欲望のコスメ戦争』(新潮選書、2005年)、『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか? 』(日本実業出版社, 2015年)など。

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