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特集 心躍る文房具の世界
カキモリのオーダーノート:「自分だけの一冊」でアナログな時間を楽しむ

三田村 蕗子【Profile】

[2017.12.29]

パソコンに向かう時間が多い日常だからこそ、オーダーメイドの1冊のノートに日々の雑感をしたためる時間が大切に思える。カキモリ (東京都台東区) は、「書く時間」をいとおしむ人たちのための文具店だ。

「自分だけの一冊」を作る

木のぬくもりに満ちた店内に足を踏み入れると、棚一面に並べられた鮮やかなノートの表紙が目に飛び込んでくる。ここは、好みの表紙や中にとじる紙、リング、留め具を選んで、自分だけのオリジナルノートをオーダーできる店、「カキモリ」だ。

豊富な種類の表紙や中紙から選んで組み合わせて自分好みの1冊を作る

「最初の1年はお客が来なかった」と語る広瀬琢磨さん

写真はリングノートを作る工程。20分もかからずに出来上がる

表紙は無地、花柄、和柄、幾何学模様など常時60種類。中紙も、万年筆に合うフールス紙からざらっとした手触りのコミック紙、写真やカードを貼るのに適したクラフト紙まで約30種類がそろっている。5色そろったリング、13色のゴム留めや8色のボタン留めなどを組み合わせれば、オーダーできるノートの種類は無限大といっていい。

選んだツールをスタッフに手渡せば、あとはもう出来上がりを待つだけだ。通常は約20分かかる。店内の工房で仕上がった「自分だけの一冊」を手にするときには誰もがワクワクするに違いない。

店主の広瀬琢磨さんが、台東区蔵前に店を開いたのは2010年。「書くこと」に的を絞り、オリジナルノートに加えて、国内外から独自のセンスでセレクトした万年筆や文具がそろったカキモリは、いまや全国の文具ファンに名前がとどろく人気店だ。

「でも最初の1年ほどはほとんどお客さまがいなくて、一時はまずいな、どうしようかなと思っていましたよ(笑)。蔵前にクリエイターのアトリエ兼ショップやオシャレな雑貨店が増えたこともあり、少しずつ人気が広がってきました。最初の頃は単に持っていて可愛いノートを作りたいという方が大半でしたが、最近は自分の思いをしたためたる日常的な道具としてのノートが欲しいという方が多くなったのはうれしいですね。『こういう風にノートを使っている』とか『次はこんなノートが作りたい』とスタッフとの会話を楽しむ方も目立ちます」

ノートに書き込む「アナログ」な時間を大切に

スケジュール管理はスマートフォンで済ませる一方で、ちょっとしたアイデアや日々の雑感をお気に入りの一冊にしたためたい。アナログなノートを楽しむカキモリファンのノートへのこだわりは、年々強くなる一方だ。以前は1000~1200円だった平均単価(顧客が表紙や中紙を選んでオーダーノートを作る際の平均価格)は、いまでは約2千円だ。パソコンやスマホを操作する時間が長いからこそノートを開く時間を大切にしたいと、価格よりも好みを優先させる人が多いのかもしれないと広瀬さんは言う。

カキモリの人気を受けて、同じようなオリジナルノートのサービスを導入する文具店が増えているが、広瀬さんは意に介さない。

「表紙や中紙、留め具に製本機さえそろえれば、簡単にまねができる。でも、これだけの種類の紙や留め具などを小ロットでそろえ、かつ、この価格で販売できるのは、活版印刷や箔(はく)押しなどの職人さんのほか、文具の町工場や問屋がこの地域にたくさん存在するからです。職人さんたちの高齢化は気がかりですが、半径1キロから3キロに広げて墨田区まで足を伸ばせばまだたくさんの職人がいる。こんなにノートを支える業者が集結しているエリアはほかにはない。地元と連携してこそのカキモリです」

仕組みやノートの種類だけではない。時間をかけて築き上げた地元産業との信頼関係もカキモリの大きな武器なのである。

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  • [2017.12.29]

フリーライター。福岡生まれ。津田塾大学学芸学部卒業。流通を皮切りにビジネスの幅広いテーマを手掛け、現在、ビジネス誌や経済誌、流通専門誌で活動中。2014年11月下旬から経済成長著しいバンコクに拠点を移し、東南アジアの取材活動にも力を入れている。移住の経緯やバンコク情報は、ホームページで発信中。著書に『夢と欲望のコスメ戦争』(新潮選書、2005年)、『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか? 』(日本実業出版社, 2015年)など。

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