SNS

最新記事

ニュース

More

特集 建築家がつくる家
住宅探訪(2)北国の開放的な家

ジェレミ・ステラ (写真)【Profile】/マニュエル・タルディッツ (文)【Profile】

[2018.02.01]

建築家が手掛けた住宅建築シリーズの第2弾は、極寒の地・旭川に立つ「リポジトリ」。夏と冬の気温差が最大で60度という過酷な気候から住人を守る役割を果たしながら、驚くほど明るく開放的な空間づくりに成功している。

リポジトリ(設計:五十嵐淳建築設計、2012年)北東から見た周辺と外観

ダイニングルーム(手前)とキッチン横のらせん階段(奥)

キッチン

洗面室。カーテンを開けた右側は寝室、左はダイニングと居間

寝室から見た洗面室と居間(奥)

寝室

南西側外観

家は北海道旭川市の外れの広大なむき出しの大地に立つ。冬は氷点下30度にも達する極寒の地でありながら、夏の間は猛暑に見舞われることも珍しくない。建築家に設計を依頼した住人が望んだのは、この土地の気候に合わせた家であること。そして、ハウスメーカーのカタログから選ぶのとは違う個性的な家であることだった。

白く塗装したアカマツ材の外壁に囲まれた吹き抜けの空間に、親子4人が暮らす。田畑が広がる周囲の風景ともよくなじんでいる。窓が小さいため、外部から閉ざされているように見えるが、白を基調とした室内は、実は光が差し込んでとても明るい。それぞれのスペースはゆるやかにつながっており、家族全員が共有する大きな一つの部屋という印象を与える。

「リポジトリ」(貯蔵庫)と名付けられたこの家の設計者である五十嵐淳は、玄関を建物の内と外の緩衝空間と考え、伝統的な「縁側」というコンセプトを現代的にアレンジし、開放と遮蔽(しゃへい)のどちらにも対応できるようにした。

住人は、しっかりと包み込む構造によって冬の間は寒気から守られ、それ以外の期間は季節を十分に感じながら暮らすことができる。天井からは明るい光が差し込み、春から秋にかけて窓を開け放てば、耕した土や刈り取った草のにおいが漂い、虫やカエルの声が聞こえてくる。

動画:リポジトリ


© Jérémie Souteyrat

撮影=ジェレミ・ステラ(2014年) © Jérémie Souteyrat
文=マニュエル・タルディッツ(原文フランス語)
バナー写真=リポジトリ(設計:五十嵐淳建築設計、2012年)南西側外観

これらの写真は、「家の列島」と題した展覧会の形でヨーロッパ各地と日本(2017年4月、東京・パナソニック汐留ミュージアム)を巡回し、フランスと日本で刊行された図録に所収されている(レザール・ノワール社、鹿島出版会)。

この記事につけられたタグ:
  • [2018.02.01]

写真家。1979年、フランス生まれ。東京在住。2001年に大学の工学科を卒業。09年、日本を拠点に活動することを決意。ル・モンド、ウォールストリート・ジャーナル、ELLE、デア・シュピーゲルなど、欧米のメディアで活躍。14年、初写真集『tokyo no ie』をフランスで出版(ル・レザール・ノワール)。17年、その日本版『東京の家』を出版(青幻舎)。

website:www.jeremie-souteyrat.com

東京を拠点とする建築家。株式会社みかんぐみ一級建築士事務所の共同代表であり、明治大学の建築・都市デザイン国際プロフェッショナルコースの特任教授とICSカレッジオブアーツ教授を務める。数々の展覧会で作品を発表。受賞歴多数。展覧会:ARCHILAB 2006「都市に棲む:日本の若手建築家30人による都市環境から捉えた建築デザイン展」、UIA2011 東京大会(第24回世界建築会議)、「東京 2050//12の都市ヴィジョン展」等。著作:『家のきおく』、『Post-officeワークスペース改造計画』、『団地再生計画/みかんぐみのリノベーションカタログ』、『東京断想』。

website:www.mikan.co.jp

関連記事
この特集の他の記事
  • 住宅探訪(6) リビングの向こうに田園が広がる家都会のオフィスで一日の仕事を終えて帰宅し、玄関を開けたらドアの向こうに田園風景が広がっている—。何もSFの世界の話ではない。町の外れという立地を生かした建築家の発想力で、現実の日常的な体験になるのだ。
  • 住宅探訪(5)光と影が交わる家採光と通風に優れた日本家屋の格子戸。この構造を、上下階をゆるやかに分かつ天井および床として平面に用いたらどうか。建築家のこんな工夫で、都内の限られた土地ながら開放的な居住空間が生まれた。
  • 住宅探訪(4)光が透過する木の家天井の四辺から光が降り注ぐ正方形の家。1つのスペースを分けるのではなく、中に4つの箱を配置して、ゆるやかにつながる空間を作り出し、その周りを玄関から続く土間が取り囲む。居住空間デザインの発想力が秀逸だ。
  • 住宅探訪(3)空中ダイニングのある家建築家が手掛けた住宅建築シリーズの第3弾は、木の箱を重ねたようなシンプルな家。ユニークな立地を利用して空中に張り出した部分をつくるなど、周囲の自然を存分に味わえる工夫がこらされている。
  • 住宅探訪(1)季節が通り抜ける家建築家が手掛けた住宅建築シリーズの第1弾。夫婦である二人の建築家が自分たちの家を建てる。その空間には、デザインのこだわりや快適さへの配慮だけでなく、より自由に展開されたさまざまな実験の成果がある。

ピックアップ動画

最新の特集

バナーエリア2
  • nippon.comコラム
  • in the news
  • ニッポンドットコム・メディア塾 —ジャーナリストを志す皆さんに
  • シンポジウム報告