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特集 建築家がつくる家
住宅探訪(5)光と影が交わる家

ジェレミ・ステラ【Profile】/ヴェロニク・ウルス【Profile】/ファビアン・モデュイ【Profile】

[2018.05.03]

採光と通風に優れた日本家屋の格子戸。この構造を、上下階をゆるやかに分かつ天井および床として平面に用いたらどうか。建築家のこんな工夫で、都内の限られた土地ながら開放的な居住空間が生まれた。

駒沢の住宅(設計:長谷川豪、2011年)、東側外観

階段の踊り場から見下ろしたリビング

窓のある踊り場

2階の寝室

床がルーバー(格子戸)状になった2階の書斎

リビングから見上げたルーバー状の天井

東京・世田谷区の駒沢にあるこの家は、形からすれば近隣の家とさほど変わらない。建築家のプランには、戦後日本の家のアーキタイプ(元型)を再解釈しようと思いがあった。ただし、外見上の形によってではなく、壁面の素材や、上下階の関係性、窓の位置によって新しさを打ち出した。外壁と屋根にくすんだ色のユーカリ材を張ったことで、どことなく日本の古い民家の雰囲気が漂うのかもしれない。

住人は以前、マンションの最上階に住み、日当たりと風通しに恵まれていたという。戸建ての住宅を建てるにあたって望んだのも、それと同じくらい快適な環境だった。つまり、日が差し込んで明るく、なおかつ外から見られる心配のないこと。そして、限られた土地でありながら、広々としたリビングがあること。

1階の天井となる2階の床板は、日本の伝統的な「格子戸」をアレンジしたものだ。隙間をあけて羽板を並べることで、天窓からの光が階下へも行き渡り、味わい深い陰影を生む。こうして上と下の空間は、完全に分けられることなくゆるやかにつながるのだ。

リビングに大きな窓を付けて、隣の敷地にある梅林を「借景」として取り入れた。窓の位置を高くして、住人のプライバシーを守る工夫がしてある。

ご主人のお気に入りの場所は、空を仰ぐバスルーム。階段の踊り場を定位置とするのは、この家ができた年に生まれたというワンちゃんだ。家の中から通りが見える唯一の場所から、外の見張りに余念がない。


© Jérémie Souteyrat

撮影=ジェレミ・ステラ(2013年) © Jérémie Souteyrat
文=ヴェロニク・ウルス/ファビアン・モデュイ(原文フランス語)
バナー写真=駒沢の住宅(設計:長谷川豪、2011年)、2階の書斎

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  • [2018.05.03]

写真家。1979年、フランス生まれ。東京在住。2001年に大学の工学科を卒業。09年、日本を拠点に活動することを決意。ル・モンド、ウォールストリート・ジャーナル、ELLE、デア・シュピーゲルなど、欧米のメディアで活躍。14年、初写真集『tokyo no ie』をフランスで出版(ル・レザール・ノワール)。17年、その日本版『東京の家』を出版(青幻舎)。

website:www.jeremie-souteyrat.com

建築家。カナダ・モントリオール出身。現在は南仏ニース在住。2008年、ファビアン・モデュイとともに、建築、ランドスケープ、アートを横断する創作活動の促進をめざす集団「A.P.ARTs」を結成。2013年、日本を訪れ、個人住宅をテーマとする研究のため各地を旅する。2016年、ファビアン・モデュイとの共著による『チリ建築ガイド』を刊行。

建築家。ニース在住。ヴェロニク・ウルスとともに「A.P.ARTs」の共同創設者。近現代建築の研究を進めながら、異なるテーマでさまざまな規模のプロジェクトを手掛ける。ヴェロニク・ウルスと『チリ建築ガイド』(2016年)を刊行。

website:www.a-p-arts.com

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