建築家がつくる家

住宅探訪(8) 海を見通す家

文化 暮らし

亡き父の家を壊し、残された母と自分の家族が暮らすために建て替える。建築家である息子が大切にしたのは、父が選んだ土地から見晴らす海の景色。これを周りの人たちとも共有できるような家に仕上げてみせた。

材木座の家(設計:柳澤潤、2012年)、居間

ダイニングルーム

台所

1階和室

2階テラス

道路側からの外観

北西側ファサード

鎌倉・材木座の海を見下ろすこの家は、建築家が両親から受け継いだ実家を、自分たちが住むために建て替えたものだ。夫を亡くした母にとって、夫婦で人生の大半を過ごした家に一人で住み続けるのは難しいことだった。息子は、彼女が前を向いて進むには、新しい家を建てたほうがいいと考えた。そこに、自分の家族3人も同居すればいいと。

敷地は斜面を切り開いた道路沿いにある。その形状に合わせて、1階を挟んで階上にリビングを、階下に寝室を設けた。そして間の1階には、大きな開口部をつくった。というのも、家の裏手は坂の上にある中学校へと続く通学路になっており、登下校の際に子どもたちが見る海を、自分の家で遮ってしまいたくなかったからだ。

こうして土地の特徴と周囲の環境にうまく適合するように、家の大きさが計算され、形状が決められた。そのおかげで、住む人も通行人たちも、共に素晴らしい眺めを楽しめる家になった。

家の中は場所によって光や眺望もさまざまで、季節に応じてどの部屋をどう使うかで、変化をつけた過ごし方ができる。上の階はよく断熱されて暖房が効き、まるで木でできた巣穴のように冬でも温かい。反対に1階は風通しが良くて涼しく、夏も快適に過ごせる。

動画:材木座の家


© Fabien Mauduit & Véronique Hours

撮影=ジェレミ・ステラ(2013年) © Jérémie Souteyrat
文=ヴェロニク・ウルス/ファビアン・モデュイ/マニュエル・タルディッツ(原文フランス語)

バナー写真=材木座の家(設計:柳澤潤、2012年)、北西側ファサード

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