建築家がつくる家

住宅探訪(9) 神社の隣の細長い家

文化 暮らし

神社の隣に接した小さな土地に、上にも奥にも細長く伸びた家が建った。建築家の自由な発想が詰まった驚きの空間づくりには、住む人の感覚を日々刺激する外との関係性が明確に意識されている。

O邸(設計:中山英之、2009年)、西側からの鳥瞰(ちょうかん)。神社を囲う朱色の玉垣に接して立つ

北西側からの外観

北側の外から見たホール

台所から2階へ続く階段

階段からホールを見下ろす

2階の子ども部屋からホールを見下ろす

夜の北側ファサード

家は京都市左京区にある。住人は親子5人。ここの出身ではなく、時に閉鎖的と言われることもある古都へは仕事の都合で越してきた。この土地を選んだ決め手は、隣の神社に植えられた見事な桜の木だった。

すっかり魅了されて購入を決めると、知り合いの若い建築家に家の設計を依頼した。彼の感受性やクライアントの話に耳を傾ける姿勢が気に入っていた。建築家に出した要望は、家族全員が自由に過ごせる広い共有スペース。隣人たちが集い、時には政治について語り合い、子どもたちを遊ばせ、料理教室を開けるような空間だった。

家の形は、神輿(みこし)を格納する「神輿殿」を思わせる。「ホール」と呼ばれる広いスペースのある本体部分を中心に、左右にダイニングキッチン、浴室、収納といった生活空間を配し、三方を小さな庭が囲んでいる。寝室は2階と中2階にある。

住人が望んだ驚きでいっぱいの不思議な家。時間の経過や用途によって、さまざまな変化に対応できる。自然、季節、時間と共生する家だ。住人が嫌いだというエアコンは設置していない。冬は結露した窓に子どもたちが指で絵を描く。夏は暑い上階を避けて、窓を開け放しにして風を入れ、家族全員が階下で寝る。虫の出入りもまた自由だ。

動画:O邸


© Jérémie Souteyrat

撮影=ジェレミ・ステラ(2013年) © Jérémie Souteyrat
文=ヴェロニク・ウルス/ファビアン・モデュイ/マニュエル・タルディッツ(原文フランス語)

バナー写真=O邸(設計:中山英之、2009年)、北西側からの外観

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