建築家がつくる家

住宅探訪(10) 一人の時間を過ごす家

文化 暮らし

建築家が設計した住宅を紹介するシリーズの最終回。これまでの家で建築家たちが考え抜いた家族の共有スペースがない、一人きりの静かな空間。しかしどこかに、外へと開き、家族とつながっているのを感じさせる要素がある。

窓の家(設計:吉村靖孝、2013年)、砂浜から見た西側外観

玄関を入って1階のダイニングキッチン

2階のリビング

3階の寝室

海岸通りと東側外観

東側外観、夜

東京から近い葉山(神奈川県)の海岸に建てられたこの家は、家族から離れて一人の時間を過ごすための別宅だという。家主はその設計を、家族で住む家を建てた時と同じ建築家に依頼した。

小さな建物と不釣り合いな窓のサイズに驚く。両方の壁面に巨大な窓を向い合わせに設置したのは、実は近隣住民のことも考えた選択だった。彼らにとって、道路と海岸の間にこのような狭小建築が建てられるのは予期せぬ出来事だったはず。そこで新参者としては、せめて道路から見える空と海をなるべく遮らないよう配慮したのだ。

建築家は構想の段階で、毎日暮らす場所ではなく、時おり訪れて静かに考えをめぐらすための空間と捉えた。家の構造は極めてシンプルだが、快適な「シェルター」となるような工夫が施してある。窓ガラスに用いた「Low-E」という複層ガラスは遮熱性に優れる。外壁と断熱材の間に空気の層を設けて通気性を高めた。また各階に小さな開閉窓を取り付けることで、建物の形状を利用した自然な排気が可能になった。

コンクリートのピロティ式(1階部分が上階を支える柱のみという構造)になっており、建築面積はわずか30平方メートルしかない。地上階は駐車スペース。建物の中は、吹き抜けの一つの空間を階段で3つの階に分け、それぞれ台所、居間、寝室とした。家主は一人になりたくなるとここへやってきて、目の前に広がる海と壮麗な富士山を眺めて過ごし、また家族の元へと帰っていく。

動画:窓の家


© Jérémie Souteyrat

撮影=ジェレミ・ステラ(2013年) © Jérémie Souteyrat 文=ヴェロニク・ウルス/ファビアン・モデュイ/マニュエル・タルディッツ(原文フランス語) バナー写真=窓の家(設計:吉村靖孝、2013年)、海岸通りと東側外観

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