【概要】
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震が起因となり、東京電力福島第一原子力発電所で発生した放射性物質流失を伴う原子力事故。
地震により操業中だった原子炉1~3号機が緊急自動停止したが、その後の津波により全電源喪失状況に陥り、冷却が不可能となり事故に至った。
2号機は原子炉格納容器とつながる圧力抑制室を損傷。1、3、4号機は水素爆発を起こして建屋が損壊した。
原子力安全・保安院による国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価は最悪のレベル7(深刻な事故)。これは、1986年4月26日にソビエト連邦で発生したチェルノブイリ原子力発電所事故以来2例目の評価である
【1~4号機の状態】
1号機 | 2号機 | 3号機 | 4号機 | |
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地震発生時の状況 | 運転中 | 運転中 | 運転中 | 定期検査で停止中 |
建屋の状況 | 大きく破損 | 破損 | 大きく破損 | 大きく破損 |
格納容器 | 破損なし | 破損の疑い (圧力抑制室は損傷) |
破損の疑い | 破損なし |
ベント | 3月12日実施 | 3月14日実施 | 3月14日実施 | 実施せず |
水素爆発 | 3月12日 | × | 3月14日 | 3月15日 |
火災 | × | × | × | 3月15日 |
現況 | 淡水注水および格納容器内に窒素注入 | 淡水注水 | 淡水注水 | 淡水注水 |
燃料棒(原子炉) | 溶融 | 溶融 | 溶融 | 原子炉内には燃料なし(貯蔵プール内使用済燃料の一部に破損の可能性) |
燃料棒(燃料プール) | 不明 | 不明 | 損傷の疑い | |
汚染水の状況 | 高濃度汚染水確認 | 高濃度汚染水確認 | 高濃度汚染水確認 | 高濃度汚染水 発生の可能性 |
【事故の経緯】
・運転中の1〜3号機が自動停止(4〜6号機は定期検査中のため冷温停止中)
・地震により外部電源が喪失し、非常用交流電流が起動するも、その後津波により喪失
→現在は外部電源復旧、中央制御室の照明が点灯(全号機)、タービン建屋の一部の照明が点灯(1〜4号機)
・燃料を冷却する機能が不十分。当初は淡水による冷却を行い、その後、海水(一部ホウ酸入り)
→現在は仮設電動ポンプ等により淡水を注入(1〜3号機)
・1〜3号機で、原子炉格納容器内の過大な圧力を防止するため、格納容器内の圧力を降下させる措置(ベント)を実施
・水素爆発と思われる事象が原子炉建屋で発生し、原子炉建屋に損傷を確認(1、3号機)
・圧力抑制室付近で異音が発生するとともに同室の圧力が低下(2号機)
・大きな音が発生し、原子炉建屋に損傷を確認(4号機)
・1〜3号機のタービン建屋等で、高濃度の放射性物質を含む多量の溜まり水を確認、2号機トレンチを通じて、海洋への漏えいを発見、4月6日止水に成功。溜まり水の排水作業を実施中。極めて高線量の2号機の溜まり水を集中環境施設へ移送し保管するために、集中環境施設の低レベル水約1万トンを海洋に放出。
・5、6号機、冷温停止中
※東京電力資料より
【避難区域】
現在、原子力発電所から20km圏内は警戒区域に指定され立ち入りが禁止されている。また、放射線量が多く計測された地域も計画的避難地域に指定され、住民は5月下旬を目処に避難することとなっている。