【原発事故比較表】
●チェルノブイリ原発事故の概要
旧ソビエト連邦(現ウクライナ)のチェルノブイリ発電所4号機で起きた原子炉暴走・爆発事故。電力供給の試験運転中に、原子炉の出力が予定より低下するなどの異常事態が発生したものの、運転規則違反を重ねながら試験を続行。原子炉が構造的欠陥(冷却水の温度が上昇し、沸騰による気泡が生じるほど、核分裂を促進する反応度が増加する)を持っていたこともあり、核暴走が発生し、急激な出力上昇により原子炉が破壊され、建物上部が開放状態となった。さらに黒鉛火災が発生したことで、放射性物質は上空高く舞い上がり、汚染が広範囲に広がった。
希ガスについては原子炉内存在量のほぼ100%、ヨウ素131は20%程度、セシウム137は10%程度が放出。セシウム137で370億ベクレル/km2以上汚染された地域はウクライナ、ベラルーシ、ロシアの計10万km2近くに及んだ。半径30km圏内の約11万6,000人が強制避難させられ、多くの村が廃墟となった。欧州各地でも食物が汚染された。2006年、世界保健機構(WHO)はチェルノブイリ原発事故による死者は9,000人と発表した。
●スリーマイル島原発事故の概要
米国ペンシルバニア州スリーマイル島発電所2号機で1979年3月28日に起きた事故。2次給水系にトラブルが発生し、冷却水を供給する給水ポンプが停止。ECCS(緊急炉心冷却装置)が作動するものの、運転員が誤判断によりECCSを停止したため、冷却材喪失事故が進行、炉心の崩壊熱を除去できない状態に陥った。
その結果、炉心の3分の2が露出し空焚き状態になり、45%が溶融した。燃料棒の中に閉じ込められていた放射性物質の一部が1次冷却材中に放出され、原子炉格納容器と補助屋を経て大気中に放出された。ただ、原子炉建屋など建物自体は損壊しなかったため、放射性ヨウ素やセシウムの大部分は原子炉建屋に保持され、外部への影響はほとんどなかった。
【国際原子力放射線事象評価尺度INES】
レベル | 主な基準 | 主な事故 | |
事 故 |
7 深刻な事故 |
放射性物質の重大な外部放出(ヨウ素131等値で数万テラベクレル以上) | 福島第一原発事故(2011年) 旧ソ連・チェルノブイリ発電所事故(1986年) |
6 大事故 |
放射性物質のかなりの外部放出(ヨウ素131等値で数千から数万テラベクレル以上) | ||
5 広範な影響を伴う事故 |
放射性物質の限定的な外部放出(ヨウ素131等値で数百から数千テラベクレル以上) 原子炉の炉心や放射性物質障壁の重大な損傷 |
米国・スリーマイルアイランド発電所事故(1979年) イギリス・ウインズケール原子炉事故(1957年) |
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4 局所的な影響を伴う事故 |
放射性物質の少量の外部放出。 原子炉の炉心や放射性物質障壁のかなりの損傷。 従業員の致死量被ばく |
JCO 臨界事故(1999年) フランス・サンローラン発電所事故(1980年) |
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異常 な 事象 |
3 重大な異常事象 |
放射性物質の極めて少量の外部放出。 重大な放射性物質による汚染。 急性の放射性障害を生じる従業員被ばく |
スペイン・バンデロス発電所火災事象(1989年) |
2 異常事象 |
施設内のかなりの放射性物質による汚染。 法定の年間線量限度を超える従業員被ばく |
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷(1991年) | |
1 逸脱 |
運転制限範囲からの逸脱 | 浜岡原発1号機余熱除去系配管破断(2001年) 「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故(1995年) |
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0 尺度以下 |
安全上重要ではない事象 | ||
評価対象外 | 安全性に関係しない事象 |
国際原子力放射線事象評価尺度(INES)は、原子力発電所で発生したトラブルが安全上どのような意味を持つかを簡明に表現できる指標として、世界共通の「ものさし」がIAEAとOECD/NEAにより1992年3月に提案され、日本は92年8月から正式運用を開始した。