「おかげさま」【石田 治】

宮城県在住のフリーライター石田治氏が、被災して改めて気づいた東北人らしさを武器に復興に向けての決意を語る。

宮城県在住のフリーライター石田治氏が、被災して改めて気づいた東北人らしさを武器に復興に向けての決意を語る。

東北人が使うあいさつ「おかげさま」の意味

東北地方の人たちが、あいさつ代わりとしてよく使う言葉に、「おかげさま」という言葉があります。

言うまでもなく「おかげさまをもちまして…」という意味。

私がいま、ここにこうしていられるのは、私だけの力ではなく、支えてくれた誰かがいたから、助けてくれた何かの力があったから…。

そう思い、そう考えて、他者と、そして自分を取り巻く世界に感謝する言葉です。

本当は、個人的に受けた、何か具体的な支援や援助に対して返す言葉なのかもしれません。でも、こちらでは、あいさつ代わり、または枕詞のように、会話の始まりに付けて使います。

お元気ですか? 「あはは、おかげさまで…」

退院されたそうで 「ええ、おかげさまで…」

地震は大丈夫でしたか? 「はい、おかげさまで…」

というふうに。

関西出身の妻は「意味が曖昧で、使い方が分からない」から使ったことがないそうです。「皮肉にも聞こえる」。なるほど。そう言われれば、特に何もしてくれなかった相手に対しては、却って嫌味な言い方になるかもしれませんね。

今回の震災でも、被災地からは「おかげさま」という言葉が多く聞こえてきます。でも、それは皮肉でも何でもなく、今、助かって命があること、全国から支援やエールが届けられることにお返しする普段使いの言葉なのです。

 

宮沢賢治が描いた東北人気質

宮沢賢治がその作品世界に描いたように、東北の人たちは、幾度も冷害や飢饉に襲われたり、厳しい自然条件と向かい合ったりして生きてきました。田舎の代表のように言われ、政治の施策の外に置かれることもしばしば…。人々は、互いの協力、助け合いが不可欠であることを知りました。

そんな歴史が、他者の善意を信じる大らかさ(裏を返せば「お人好し」)と、隣人への敬意を大切にする東北人気質を形作っていったのかもしれません。

だから私は「おかげさま」という言葉は、いかにも東北人らしい言い方なのだと思っています。

日本中の人たちから、世界中の人たちからも、たくさんのエールが東北地方に届いています。

世間の耳目は、原発の事故の方に集まっているのかもしれませんが、東北地方の復興への戦いは、これからが本番です。

どうか東北地方への応援を、よろしくお願い申し上げます。

(3月30日 記す)

石田 治

Ishida Osamu

1960年岩手県生まれ。大阪芸術大学芸術計画学科卒業後、編集プロダクション、新聞社勤務などを経て93年よりフリーに。宮城県富谷町在住。地元情報誌や行政刊行物、学校・会社の周年誌などで活躍中。