「戦時」への対応が、今求められている【成相 修・麗澤大学教授】

非常時こそトップのリーダーシップと横断的な仕組みが必要であると、エコノミストの成相修氏が、現政府に問いただす。

非常時こそトップのリーダーシップと横断的な仕組みが必要であると、エコノミストの成相修氏が、現政府に問いただす。

大震災1カ月後あたりから復興に向けた「良い」ニュース報道が目に付く。「大手自動車メーカーが生産を再開」、「酒造メーカーが新たな出発へ」といった「復興」を伝えようとしている。企業や市町村における日本の「現場力」の素晴らしさを見る思いがする。

ところが、仮設住宅の建設、避難民への義援金給付、破壊されたインフラの再構築、原発事故処理など国の行政が担うべき中心的支援と「復旧」の基本的基盤の再生が大きく遅れている。電力不足と放射能問題は、サプライチェーン(供給網)の復活を目指す産業活動に深刻な影響を持つ。今後3カ月程度、本格的な生産回復が遅れれば、取り返しのつかない「日本外し」が現実になる。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)など対外政策の思考停止状況は、日本企業が世界から大きく取り残されるリスクを増大させている。

与野党が共同で取り組む「大人」の政治を

短期的な急務である瓦礫処理をめぐっても、個人の許可が必要といった「平時」の建前論を盾にとって作業が滞っていては、先が思いやられる。仮設住宅の建設も責任がいくつかの役所にまたがっているため時間を要している。「戦時」の思考と対応を取らなければならないことを国民に理解してもらうという毅然たる姿勢が、指導者に決定的に欠如していることが最大の原因である。

国民への放射線の影響の伝え方は、政府に対する不信感と絶望感を増幅させている。復興に取り組んでいることを政治的に示すために、総理の周りに「会議」、「本部」といった議論の場を多くつくり、肝心の実施は各省庁に任されている。これでは、喫緊の課題にも迅速に対応できない。

各省庁や自治体にまたがる権限と責任を一元化した「復興安定本部」を現地に置き、戦後の経済安定本部のように権限の集中を図る必要がある。人材もトップから担当者に至るまで政治家や官僚のみに頼るのでなく、各分野の専門家を動員して超法規的な対応もできる強力な実施母体の設置が急がれる。そのための時限立法の制定に与野党が共同して取り組むといった「大人」の政治が必要である。
(4月22日 記す)

成相 修

成相 修
Nariai Osamu

麗澤大学国際経済学部教授。1972年東大経済学部卒業、99年東北大学大学院国際文化研究科博士課程修了。経済企画庁調査官、OECD(経済協力開発機構)エコノミスト、JICA(国際協力機構)専門家(ブルネイ国に派遣)等を経て現職。