デザインによって共通の意識を【勝井 三雄・グラフィックデザイナー】

日本再生に向け、グラフィックデザインに求められるものとは何か。日本を代表するグラフィックデザイナーの勝井三雄氏は、デザインがもつコミュニケーション力に着目する。

日本再生に向け、グラフィックデザインに求められるものとは何か。日本を代表するグラフィックデザイナーの勝井三雄氏は、デザインがもつコミュニケーション力に着目する。

全国のグラフィックデザイナーでつくるJAGDA(社団法人日本グラフィックデザイナー協会)という組織があります。一昨年、その組織で「ヴィジョン」というものをつくりました。

われわれグラフィックデザイナーはさまざまな仕事をしています。しかし共通なのは、「コミュニケーション環境」の質を上げていくための任務があるということ。究極的には社会に存在する問題を解決するため、アクションを起こす任務があるということです。

グラフィックデザインの役割は、ある問題に対して、切り口を与え、それを鮮明にしていくことです。そして、この役割が及ぶ領域を少しずつ広げていくというイメージです。そして、一般の人にも、専門家にもグラフィックデザインのこの役割を知らせゆくのがわれわれの仕事だと思っています。

伝えるためのアクション

原発や節電の問題は、数字的なこと、技術的なこともあってなかなか伝わりにくい、分かりにくい。行政にしても、マスコミにしても、情報の出され方が一向に整理されていない、統一感が取れていない状況が続いています。

ここでも、われわれがアクションを起こすことで、原発の問題も含めて分かりやすく、伝えやすくすることができると考えます。一つはきっかけづくりです。例えばワッペンやサインシンボルのようなものをつくったりして、行動を喚起し、意識付けをしていく。もう一つは情報の内容を正確にどう伝えていくか。つまり、より深い情報の伝達です。この二つの伝達があると思います。

既に3・11(東日本大震災)は東日本だけの問題ではなくなっていますので、日本全体のエネルギー政策にしても、生活スタイルにしても、もう少し全体的に共通ヴィジョンが生まれていくようにする必要があります。デザインをそうした意識付けするための一助にしていきたいと思います。

社会との結びつきを考えるチャンス

世界で起きているさまざまな社会的な現象が、デザイナーが関わることでより生き生きとしたものになってゆく――。こういう仕事をこれまでも、デザイナーのうち数パーセントの人々がやってきました。いろんな情報を一般化するためにビジュアライズし、伝えてゆく――。コミュニケーションの力、というものにデザイナーがしっかりかかわっていく。それがかつては厳然としてありました。

もともと、デザインはごく近い人のために何かやろう、という気持ちから生まれてきたものです。それが経済行為として、自立したことによって、多少問題が出てきました。本来の目的のために、資本力が役立ってくれるのは大変ありがたいですが、それが逆転して資本のために役立つものへと変わってしまっている。20世紀後半のいわゆるグローバル経済のなかでそういう傾向が強まってきました。

そう言った意味で、3.11は社会との結びつきをどう考えるかをデザイナー一人ひとりが考え直す機会になりました。

そして、日本全体が少し違った考え方を見せることのできるチャンスである、と言えます。

(6月21日 談)

勝井 三雄

勝井三雄
Katsui Mitsuo

グラフィックデザイナー。1970年大阪万国博や1985年つくば科学博のアートディレクターを務める。1990年花博ではシンボルマークを手がける。テクノロジーを使った表現で新たなコミュニケーションの領域を拓く。JAGDA会長。武蔵野美術大学名誉教授。芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章などを受賞。