「ライバルは自分」 初場所で勝ち越した大砂嵐関

文化

大相撲の初場所で、幕内力士として初めて勝ち越したエジプト出身の大砂嵐金太郎関が2014年1月29日、東京・内幸町の一般財団法人ニッポンドットコムを訪れた。

十両昇進前に、多言語ウェブサイト「nippon.com」とのインタビューに応じた頃の大砂嵐関は、小さめのちょんまげ姿で親方に叱られながら稽古に励んでいた。しかし、幕内で9勝6敗の好成績を残しただけに、大銀杏(おおいちょう)が似合う関取の風格も漂い、体も明らかに一回り大きく(187センチ、157キロ)なっていた。

「遠藤関をライバルと考えたことはありません」

初場所では、11勝4敗で敢闘賞を初受賞した遠藤関との取組(8日目)で、熱戦の末、勝利した大砂嵐関。「ライバルといわれる遠藤関にも勝ちましたね」と聞くと、大砂嵐関は、「自分にとってのライバルは自分です」とずばりと答えた。

遠藤関についても「よくライバルといわれるのですが、遠藤関をライバルと考えたことはありません。自分の中ではすべての力士が同じです」と、自身に言い聞かすように答えた。

アフリカ・中東地域の初めての力士として、新弟子の時からプレッシャーを感じてきただけに、今は自分に集中していかなければと感じているのだろう。

ちなみに、28回目の優勝を果たした横綱の白鵬関は、初場所後「前半で遠藤関や大砂嵐関が活躍していた」と、20代前半の2人の力士の名前を挙げて論評した。

“横綱”に向かって「ガンバリます」

大砂嵐のサイン。

もっとも、根は明るい、茶目っ気たっぷりの大砂嵐関。関取初の勝ち越しに「本当にうれしい」と満面の笑顔。人気力士になったことについても、「有名人になって重い責任を感じています」と言いながら、「同時に縛られている感じもします」と本音もチラリ。

インタビューはアラビア語の通訳入りだったが、日本語はかなり上達。“達筆”とは言い難いが、大胆な筆致で色紙に「大砂嵐」と揮毫するサービス精神もたっぷりだった。

訪問時間は約20分。ニッポンドットコム内には多言語翻訳に携わる欧米各国や中国出身のスタッフが多くいるが、日本で頑張る大砂嵐関だけに、人気は絶大だった。

拍手に送られながら、目標の「横綱」に向かって「ガンバリます」と言い残して後にした。

大砂嵐関とのインタビューは次の通り。

——幕内になって初めて勝ち越しましたがどんな気分ですか?

「幕内になって挑んだ九州場所では今までに経験したことがないほどの緊張を感じました。いつもの自分と違って、最初から負けているような精神状態。自分としてはまだ幕内のレベルに達していないと感じていたのです。実際に場所が始まって、最初の5つの取り組みで1勝しかあげられず、結局、初めて負け越してしまいました。

ですから、今場所は、どんなランクの相手とどのように戦うのか、などあまり考えないようにしました。いつものように自分の相撲を楽しむようにしたんです。勝ち越せて本当にうれしい」

——ライバルといわれる遠藤関にも勝ちましたね。

「よくライバルと言われるのですが、遠藤関をライバルと考えたことはありません。自分の中ではすべての力士が同じ、自分にとってのライバルは自分だけです」

——相撲を見ていると力強いときと脆いときの落差が大きいように思いますが、親方から指摘されますか?

「『体をもっと柔らかくしないとダメだ』と指導されています。股割り(両足をいっぱいに開き、上半身を地面につける動き)などの稽古を重ねること大事だといつも言われています」

——関取になってさらに人気が出たのではないですか?

「有名人になって重い責任を感じています。同時に縛られている感じもします」

——家族から何か言われますか?

「最初はルールが分からず、なんで負けたのかも分からないようでしたが、今では相撲に興味を持っていますし、詳しくなってきました。楽しみながら、理解してもらいながら見てもらっています」

——仕切りや立ち会いなどに慣れましたか?

「ステップバイステップで学んでいます」

——横綱という目標に向かって頑張ってください。

「ありがとうございます。頑張ります」

大砂嵐関の成績(2014年1月現在)

2013年11月場所(九州) 前頭15枚目 7勝8敗
2014年1月場所(両国) 前頭16枚目 9勝6敗 
幕内通算戦歴16勝14敗(2場所)
大相撲での生涯戦歴78勝30敗1休(12場所)

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