日本で蔡英文本が売れるわけ

前原 志保【Profile】

[2017.10.01] 他の言語で読む : 繁體字 |

日本では今、広い意味での台湾本ブームが起きている。さまざまな雑誌で日々、台湾特集が組まれ、大型書店の旅行関連書籍コーナーには、台湾旅行のガイドブックに比較的広いスペースが確保されている。

そんな中、総統就任式の2016年5月20日、そして17年1月に2冊の蔡英文本が日本で出版された。台湾と発売順序が異なるが、蔡英文氏の著書『蔡英文 新時代の台湾へ(英派 點亮台灣的這一哩路)』と『蔡英文自伝:台湾初の女性総統が歩んだ道(洋蔥炒蛋到小英便當――蔡英文的人生滋味)』である。

蔡氏が執筆したこの2冊以外にも、黄文雄氏の本が2冊、丸山勝氏の翻訳による張瀞文氏の本が1冊と短期間で続けざまに発売された。過去に日本で出版された歴代台湾総統の書籍を見てみると、李登輝氏の著作は別格だとして、陳水扁氏の本が2冊、馬英九氏の本が1冊もないことから今回、蔡英文本が大量に出版されたことは特殊な現象だった。

『蔡英文 新時代の台湾へ』は、昨年度の白水社における年間売り上げ第2位だった。ちなみに第1位は日本在住の台湾人作家・温又柔氏のエッセー『台湾生まれ 日本語育ち』。温氏の本が蔡英文本の約半年前に発売されていること、蔡英文本の定価が2000円、台湾元で550元を超える高値設定であっても売れたということから、この本の注目度を分かっていただけるのではないだろうか。

では、日本の読者はこの2冊をどのように読んだのだろうか? いくら日本に台湾ブームが来ていると言っても、台湾の政治情勢に関する報道は極めて限られている。つまりこの2冊は、多くの日本人にとって蔡氏の人となりを知るための「最初の糸口」となった。ここでは、ご縁がありこの2冊に翻訳者として携わった筆者が日本の読者に2冊がどのように受け止められたのか、そして出版に際する日本独特の事情についてあらためて書いてみたい。

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  • [2017.10.01]

福岡県生まれ。カナダ ブリティッシュコロンビア大学卒業(東アジア研究)、イギリス リーズ大学修士課程修了(中国研究)、2014年国立台湾大学 国家発展研究所で法学博士号取得。現在、九州大学総合研究博物館専門研究員。

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