深刻化する日本の「空き家」問題―その背景と解決策

米山 秀隆【Profile】

[2014.09.24] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

日本の住戸の空き家率が上昇し続けている。人口減少局面を迎えた日本における「空き家」問題に対応するには、空き家の利活用や、中古住宅取得促進策の拡充が急務だ。

戦後の住宅政策—一貫して上昇を続ける「空き家」率

2013年の日本の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%と過去最高を記録した。多くの国では空き家率は経済状態によって上下に変動するが、日本の場合、戦後一貫して上昇し続けてきた。この背景には、住宅建設を促進してきた戦後の住宅政策がある。

戦後の住宅不足、その後の高度成長期の人口増加に対応するため、日本では持ち家取得が奨励された。住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)が低利融資を行い、住宅ローン減税の仕組みも設けられた。大量に新築住宅が供給される中、住宅の質の確保は不十分となっていった。それでも高度成長期には地価は右肩上がりの上昇を続け、建物の価値はなくても土地の価値は十分残るため、人々にとって早期に住宅を取得することが有利であった。90年代以降は、住宅建設が景気対策の色彩を強め、住宅ローン減税は大幅に拡充されていった。

こうして戦後は質の高くない住宅が供給され、それを使い捨てていくこと(25~30年程度の短期間で建て替え)が一般的となったが、これは住宅建設の需要が途切れないという点で、供給業者にとっても都合が良かった。こうした過程で、日本でも戦前にはあった、良い住宅を造って必要な手入れを行いながら長く使っていくという考え方が失われていった。

この結果として、欧米では新築と中古を合わせた全住宅取引のうち、中古の割合が70~90%程度を占めるのに対し、日本ではその比率は10%台半ばという極めて低い状態となった。新築比率が高い要因としては、しばしば日本人の新築志向が指摘されるが、こうした志向は、戦後の住宅政策の中から生まれてきたと考えるのが妥当である。

人口減少で裏目に出た住宅取得促進制度

こうして次々と新築住宅が供給されたが、現在の日本は人口減少局面に入っており、地方や都市部でも特に条件の悪い地域ほど、空き家が目立つようになってきた。家族形態の変化も空き家増加に拍車をかけた。戦後は核家族化が進展し、親の死亡や高齢者向け施設への転居などで空き家になっても、子どもはそれを引き継がなくなった。

親の家を引き継がないのであれば、買い手や借り手を探すべきであるが、戦後の住宅は建築された時点の質が高くなかった上、その後の手入れも十分行われてきたわけではないため、中古住宅として価値を持たない住宅が大半である。

売却や賃貸化が難しい空き家ならば、取り壊すべきである。しかし、日本の税制では、土地に対する固定資産税は、住宅が建っていた方が更地の場合の6分の1で済む。しかも、税の軽減措置は老朽化して危険な状態になった住宅でも適用されるため、税負担増を避けるためには、どんなに古い住宅でも残しておいた方が有利である。住宅を建てた場合に税を軽減する仕組みは、住宅が足りない時代には住宅取得を促進する効果を持ったが、住宅が余っている現在では、危険な状態の住宅でも撤去せず残しておくという効果を生じさせている。

このように日本では、住宅取得を促す仕組みが人口減少局面に入って裏目に出ている。空き家が増加する現在でも、年間80万戸ほどの住宅が新築されており、2013年度は消費税率引き上げ前の駆け込み需要で、99万戸もの住宅が新築された。日本の住宅市場は、空き家が増加する一方、新築住宅が造られ続けるという特異な状況に陥っている。

空き家の撤去と利活用の促進策

空き家対策としては、倒壊寸前になるなど危険なものについては速やかに撤去していくこと、また、まだ使えるものについては利活用を促していくことが必要になる。

空き家撤去については、空き家所有者に適正管理を義務付け、従わない場合には罰則を課したり強制取り壊しを行うとする自治体が増えている。危険な空き家の自主撤去を促すため、撤去費を補助する自治体もある。固定資産税は、危険な状態になった住宅では税軽減を止める自治体も出てきた。こうした取り組みを推進する法律も準備されている。

利活用の促進については、地方の自治体を中心に「空き家バンク」を設ける例が増えている。ウェブサイトに情報を掲載して需給マッチングを行うとともに、改修費補助などを実施している。田舎暮らしを志向する若者やリタイア層、手に職を持っていて仕事場を探している層、農業を始めたいという層などが空き家バンクを利用するケースが増えている。

中古住宅取得が有利になる仕組みづくりを

こうした取り組みと併せて、今後より一層重要になってくると考えられるのは、中古住宅の質を高めることと、新築よりも中古を取得した方が有利になる仕組みに変えることである。

これまで日本の住宅は、いずれ売却することを念頭にきちんと手入れしてこなかったため、中古住宅購入者の不安が大きかった。また、住宅所有者にとっては、たとえ手入れをしてもそれが中古市場で評価されるわけではなかったため、手入れを行うインセンティブがなかった。

近年では、日本でもようやく住宅のメンテナンス記録を残し、それを中古市場で評価する動きが出ており、国もこうした仕組みを広げようとしている。建築時点での住宅の質を高める仕組みは、2000年代以降徐々に整えられており、それに対応した住宅も増えている。

中古住宅を取得する場合の金銭的インセンティブとしては、住宅ローン減税を新築よりも中古の方が手厚い仕組みに変えること、一部自治体が実施している改修費補助の仕組みを国レベルでも導入することなどが考えられる。

住宅セーフティーネットとしての活用

このほか、空き家を公営住宅として活用することも考えられる。日本の住宅弱者支援は、自治体が公営住宅を建てて供給する方式で行われてきた。公営住宅は高度成長期に建てられたものが多く老朽化が進んでいるが、財政難で建て替えが難しくなっている。今後は、住宅弱者が空き家に住む場合、家賃補助する仕組みに変えていくことが選択肢としてあり得る。

ただ、空き家の利活用を進めていったとしても、今後、日本の人口が大きく減少していく中では、空き家増加に歯止めをかけることは難しい。日本では現在、高度成長期に無秩序に拡大した市街地を縮小しコンパクト化することが大きな課題になっている。空き家利活用も、そうしたエリアで重点的に取り組むことなどによって、まちづくりと連動させていく必要がある。

(2014年9月8日 記)

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  • [2014.09.24]

富士通総研経済研究所上席主任研究員。1963年生まれ。筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所を経て現職。慶應義塾大学客員研究員などを歴任。専門は住宅・土地政策、日本経済。著書に『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)、『少子高齢化時代の住宅市場』(日本経済新聞出版社、2011年)ほか多数。

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