党再生には長期戦略が必要—岡田新体制の民主党
人材の発掘・育成も急務

伊藤 惇夫【Profile】

[2015.01.26] 他の言語で読む : ENGLISH |

民主党は海江田万里氏に代わる新代表に岡田克也代表代行を選出し、党再生を託すことになった。筆者は「政権交代できる態勢づくりに7、8年はかかる。あるべき国家ビジョンの設定、人材の発掘・育成など長期戦略が必要だ」と指摘する。

路線論争不発で注目度ダウンの代表選

これほど注目されなかった民主党の代表選は初めてではないか。細野豪志元幹事長が「野党再編路線」を封印してしまったことで、選挙の争点がぼやけたものになってしまった。細野氏が再編志向であるのは疑う余地がない。岡田氏と細野氏の間で、もっと路線論争があってしかるべきだった。この機会に党が「割れるなら割れる」、「まとまっていくならまとまっていく」、きっちりと議論すれば代表選への関心は高まったし、「民主党は変わってきた」とアピールできたかもしれない。

もう1つ気になったのは、民主党内にいわゆる「リベラル」(旧社会党系)の勢力がまだかなり強いということだ。国会議員の3分の1弱(大半がリベラル系)が長妻氏を支持。決選投票で岡田氏が勝利したのも、旧社会党系の多くの議員が細野氏よりも岡田氏に投票したのが決め手となった。代表選の結果、党内で、彼らの発言権は、むしろ強くなったのではないか。今後党再建に向けて岡田代表が手腕をふるう際、憲法改正問題や安全保障の分野でフリーハンドとはいかなくなる可能性がある。

とはいっても、民主党にとって代表選をやった意義は確かにあった。長妻氏は「格差の問題」について積極的に発言し、多少なりとも社会の関心を集めた。最近の世論調査を見ても「民主党に復活してほしい」との声は少しずつだが高まってきている。また「誰が代表になっても、党は一致していく」というメッセージを各候補が発信したことにより、さらなる党分裂の危険性は低下したと言える。

岡田氏は「人気がない」政治家か?

細野氏は民主党の中でも人気がある政治家と言われている。一方、岡田氏は「人気がない」とか「原理主義者」、「堅物」とこれまで言われ続けてきた。ただ、時代の空気によって、そういうタイプがうける時もあればうけない時もある。こればっかりはやってみないと分からない。

岡田氏については2005年の郵政選挙を党代表として戦い、小泉純一郎首相率いる自民党に惨敗したことばかりが語られるが、前年の参院選では消費税増税なども愚直に訴えて勝利している。だから「既視感がある」とか「新しくない」という理由で、岡田氏では党の人気が上がらない、再生はできないとは思わない。状況次第だ。

「人気がある人間がトップになれば、党勢が拡大する」――。過去を振り返ってみると、この考えは誤りだということが分かる。自民党では2006年から09年にかけ、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各氏が1年ごとに首相を交代し、これが政権交代の引き金になった。3人はいずれも、就任時は党内で一番人気があった人物だ。人気というのは期待値で、現実ではない。実像とのギャップがあるほど失望も高まる。

「人気のある者を担ぐ」のではなく、「担いだ者の人気をいかに高めるか」という方向で動くのが本来の政党のあり方。英労働党のブレア元首相が典型だ。知名度もなかった若手議員を10年かけてリーダーとして育て、ついに保守党から政権を奪還した。リーダーとは上から降りていくものではなく、育てていくものではないか。

あるべき国家目標設定からスタートを

岡田氏の手腕は、今後の党運営を見ないと分からない。だが、マイナスからのスタートというのは間違いなく、党再生には長期戦略を立てて臨まなければいけない。基礎体力をつけ、政権奪還を目指す態勢をつくるには、あと7、8年はかかるのではないか。

まず第1に、党内で徹底的に議論をつくし、党としてあるべき国家目標を設定すべきだ。野党の仕事は、理想を掲げて国民に提示すること。これは与党にはできない。まず目標を設定し、その達成に向け、どういう政策が必要なのかを考える。このアプローチが大事だ。目標設定のないまま政策づくりを行えば、必ず党内の路線対立が再燃する。

見習うべき英保守党の人材育成

もう一つは、人材の発掘、育成をきちんと行っていくこと。これには英保守党のやり方を見習うべきだ。最近は変化もみられるが、若くて優秀な学生らを党のスタッフとして登用し、教育した上で保守の地盤でない選挙区に出馬させる。そこで頑張った者を選抜して保守党の“金城湯地”の選挙区に回して当選させ、早くから国会経験を積ませて40代で大臣や影の大臣、50代で首相候補にするというシステムができていた。

民主党は2012年の総選挙敗北後、立候補者の人材を多く切り捨てた。負けても負けても3回ぐらい選挙を戦える態勢を若手候補者につくってあげることをしないと、人材は集まらない。現在、自民党に人材は余っており、新人が出馬できる余地はない。今こそ優秀な人材を獲得するチャンスだと思わなければならない。

新たな人材をプールしていくことは、旧政党を引きずっていた部分を薄めて、結果的に政策面でのぶつかり合いを減少する要素にもなる。民主党の政党交付金は年77億円ぐらいあるが、その1割を使ってシンクタンクを持つのもいいのではないか。民主党は今どん底なのだから、さまざまな面で思い切った実験をしてみるのも一つの方法だ。

「自分から光る」政党目指せ 

政治の「55年体制」が初めて崩れたのが、細川政権が誕生した1992年。それ以降、政党の流動化が始まり、50を超える新党ができては消えてきた。振り返ってみると、みな失敗している。その原因は何か。私に言わせれば、そのすべてが自民党という恒星の周りをまわっている、「反自民」「非自民」というのが存在価値の惑星に過ぎなかったことだ。

先の総選挙の結果を見ると、有権者は「自民党の補完勢力はいらない」と考えている。「反自民」「非自民」の政党も、自民との関係性の中にある。自民党をあえて視野の外に置き、「自分たちかどういう政治を目指すのか」を突き詰めてこそ、真の対抗勢力たる恒星が誕生するのではないか。

岡田新代表と執行部は今後、「本当の意味での再生を図るためには何が必要なのか」を一から議論していくべき。当面の対応、個別の案件にとらわれている局面ではない。

2009年から3年間続いた民主党政権が、なぜあれだけ国民の期待を裏切ってしまったか。本当の意味での総括もまだ終わっていない。そこまで戻るのが原点ではないか。「なぜ失敗したのか」を徹底的に考え、そこからスタートすべき。「急がば回れ」だ。

タイトル写真:民主党の新体制が発足し、記者会見する岡田克也代表=2015年1月22日、東京・永田町の党本部(時事)

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  • [2015.01.26]

政治アナリスト。1948年神奈川県生まれ。学習院大学法学部卒業。自民党本部事務局スタッフを20年余り務めた後、新進党を経て、太陽党、民政党、民主党の事務局長を歴任。2001年に民主党を退職し、執筆のほかテレビ、ラジオのニュース番組などでコメンテーターとして活躍する。著書に『国家漂流』(中央公論新社)『政党崩壊』(新潮新書)など

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