「稼げる」と勧誘され、借金して日本へ:急増する日本語学校留学生の“闇”

出井 康博【Profile】

[2017.07.13] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية | Русский |

外国人留学生を受け入れる国内の日本語学校が年を追うごとに増え、600校を超すまでになった。筆者は「留学生の多くは出稼ぎ目的で、ブローカーの甘い言葉につられて来日している」と指摘。歪んだ“教育ビジネス”の在り方に警鐘を鳴らす。

4年で10万人も増えた外国人留学生

日本国内の教育機関に在籍する留学生の数は、2016年の年末時点で過去最高の27万7331人に達した。12年からの4年間で約10万人の増加である。政府が20年の達成を目指す「外国人留学生30万人計画」も、17年中に実現する可能性が高い。

留学生の増加に対し、異を唱える人はほとんどいない。外国人労働者や移民の受け入れには反対する人も、「留学生」と聞けば外国人観光客の増加を喜ぶがごとく歓迎する。

だが、急増している留学生の多くが、勉強よりも出稼ぎが目的だとしたらどうか。本来は「留学生」として入国を許されないはずの外国人が来日し、さまざまな形で食い物にされた揚げ句、不法残留や犯罪を引き起こす原因になっているとしてもなお、留学生を増やすべきだと言えるだろうか。

「急増」の中身はアジアの新興国出身者

留学生を国籍別に見ると、数年前までは全体の6割を中国人が占めていた。しかし、近年は中国人留学生の数はほとんど増えていない。代わって急増中なのが、ベトナムやネパールといったアジアの新興国出身者である。とりわけ目立つのがベトナム人で、過去4年間で4倍以上の6万2422人まで膨らんでいる。

日本で学ぶ留学生の多い国(地域)ベスト10(2016年12月末)

総数 277,331
中国 115,278
ベトナム 62,422
ネパール 22,967
韓国 15,438
台湾 9,537
インドネシア 5,607
スリランカ 5,597
ミャンマー 4,553
タイ 4,376
マレーシア 2,925

単位:人、出所:法務省「在留外国人統計」

その理由について、新聞などではよく「日系企業の現地進出が増え、日本語学習熱が高まっている」といった解説がなされる。だが、それは全く的外れな指摘だ。彼らが日本を目指すのは、日本に行けば「稼げる」からに他ならない。

留学生には「週28時間以内」でのアルバイトが認められる。そこに目をつけ、斡旋するブローカーが「日本に留学すればアルバイトで簡単に月20万~30万円は稼げる」といった具合に宣伝し、希望者を集めているのだ。

借金し、ブローカーのあっせんで日本語学校へ

ベトナムの庶民の月収は1万~2万円ほどに過ぎない。「月20万~30万円」と聞けば、希望者が殺到するのも当然だ。その結果、日本への「留学ブーム」が起きている。筆者が4年にわたって取材してきた印象では、現在急増中のベトナムやネパール出身の留学生の大半は出稼ぎ目的の“偽装留学生”である。

そうした“偽装留学生”の日本での入り口となるのが日本語学校だ。その数は過去10年で200校以上も増え、全国で600校を超すまでになった。ベトナムなど新興国で起きている日本への「留学ブーム」が、「日本語学校バブル」を生んでいるのだ。

日本へ留学するには、日本語学校の初年度の学費やブローカーへの手数料などで150万円程度が必要となる。ベトナムなどの庶民にとっては気の遠くなるような金額だ。しかし彼らは家や田畑などを担保に金を借り、留学費用を工面する。新興国では経済成長が続いているとはいえ、庶民の暮らしは厳しい。そんな中、「留学」を装っての出稼ぎに一家の夢を託し、若者を日本へと送り出す。

一方、日本政府は留学ビザ取得のための条件に「経費支弁能力」を課している。アルバイトなしでも生活でき、学費も払える外国人に限ってビザが発給されるのだ。しかし新興国では、よほどの特権階級でもなければ経費支弁能力などない。そこで留学希望者は銀行や行政機関に賄賂を払い、ビザ取得に必要な書類を用意する。預金残高や親の年収といった必要事項にでっち上げの数字が記された証明書をつくり、支弁能力があるように見せかけるのだ。そうした手続きもブローカーが担ってくれる。

書類の数字がでっち上げだということは日本語学校、さらにはビザを発給する入国管理当局も分かっている。しかし、学校は自らのビジネス拡大のため、入管は「留学生30万人計画」実現のため、支弁能力のない外国人までも受け入れる。

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  • [2017.07.13]

ジャーナリスト。1965年、岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウィークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイントセンター」客員研究員を経てフリーランスに。著書に『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)など。

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