凱旋門賞優勝馬となるか:ニッポン馬の宝石(ダイヤモンド)たち
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欧州競馬の厚い壁を破る年に
今年こそ悲願は達成されるか——。日本競馬界ではもはや、新年恒例の話題かも知れない。悲願とはもちろん、日本競走馬の凱旋門賞制覇である。海外馬券販売開始レースとなった2016年は、日本ダービー優勝馬のマカヒキ参戦で注目を集めたが、結果は14着と大敗。1969年のスピードシンボリから延べ20頭目となる挑戦でも、欧州競馬の厚い壁を破れなかった。
今年、期待を集める2頭は、昨年末の第61回有馬記念で死闘を演じた。名勝負として長く記憶されるであろう一戦は、直線入り口で3頭の勝負に絞られた。ファン投票1位のキタサンブラック、15年の覇者ゴールドアクター、レース寸前に1番人気に浮上したサトノダイヤモンド。ゴール前 100メートル地点ではこの順位だったが、勝負はここからだった。エンジンのかかったサトノダイヤモンドが1頭をかわし、ゴール寸前でキタサンブラックも首差で差し切った。有馬記念が1、2、3番人気の順で決着したのは、77年のテンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスの「TTG」以来。上位2頭は今秋、シャンティイ(※1)に赴く可能性がかなり高い。
凱旋門賞優勝を目指して
サトノダイヤモンドのクリストフ・ルメール騎手は感涙にむせんだ後、大願成就への見通しを聞かれ、「頭が良くて、すぐにいい位置を取れる。凱旋門賞にはいいタイプ」と言い切った。実際、最後の直線での瞬発力が身上と思われてきたが、菊花賞、有馬記念では一皮むけて勝負強さを見せた。菊花賞でもすんなり中位を占め、有馬記念は2周目向こう正面で、2番手にいたキタサンブラックの背後まで押し上げ、トリッキーな中山コースを克服した。
管理する池江泰寿調教師も凱旋門賞への思い入れは強い。「世界の数ある大レースの中でも、凱旋門賞は別格。スタンドの雰囲気が違う」と言い、「あのレースを勝たないと、日本の競馬は次の段階に進めない」とも。有馬記念終了後、「背中や腰が強くなれば、もっと爆発力が出る。完成するのは来年秋では。2017年は凱旋門賞から逆算した日程を組む」と力強く語った。日本の競馬を席巻するディープインパクト産駒の中でも、3歳時にGⅠを2勝した牡馬(ぼば)は同馬が初めて。2006年に生涯唯一連対できずに3位入線(のちに薬物違反で失格)の屈辱をなめた父の遠征から11年。同じ父を持つ昨年のマカヒキより距離に融通が利きそうなだけに期待は高まる。
惜敗したキタサンブラックも17年は海外に向かう可能性が高い。16年は6戦してGⅠタイトルは天皇賞(春)とジャパンカップの2つに終わったが、負けた3戦もすべてタイム差なしの接戦。正攻法で他馬のマークを背負い、かわされても粘る。15年の日本ダービーでは14着だったものの、その後は9戦連続で3着以内と堅実さが光る。昨年、凱旋門賞2着のハイランドリール(アイルランド)との先行争いが実現すれば面白い。
2頭の壁は負担重量か。現行ルールなら3歳牡馬より 3.5キログラム重い59.5キログラムを背負う(※2)。4歳以上の牡馬の優勝は07年のディラントーマス(同)が最後。欧州の3歳勢からもライバルが登場するだろう。今年は欧州競馬からも目が離せない。
文=ニッポンドットコム編集部
バナー写真:第61回有馬記念(GⅠ)を制したクリストフ・ルメール騎乗のサトノダイヤモンド(中央)。左奥は2着のキタサンブラック=2016年12月25日、千葉・中山競馬場(時事)