「アベノミクス」3本の矢そろうことがデフレ脱却の道筋

安部 順一 【Profile】

[2013.01.10] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | االعربية |

安倍晋三政権の掲げる経済政策「アベノミクス」への期待が高まっている。

衆院解散の直前に打ち出してから、市場では円安・株高が急速に進み、安倍首相が招かれた経済3団体(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)の新年祝賀パーティーには、前年より100人以上も多い約1700人が詰め掛けた。だが、期待通りにデフレから脱却できるかどうかは予断を許さない。

金融緩和、財政出動、成長戦略の「3本の矢」

アベノミクスは、大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略を「3本の矢」とする経済政策だ。

まず、インフレ目標を掲げ、それが達成できるまでは金融緩和を継続するメッセージを明確にすることで、これから景気が良くなるだろうというインフレ期待を高める。インフレ期待が高まるまでには時間がかかるので、政府は2012年度補正予算と2013年度当初予算で公共事業など積極的な財政出動を行い、その間の景気を引っ張っていく。さらに、6月にまとめる成長戦略で民間の投資意欲を引き出し、景気を引っ張るエンジンの役割を政府から民間に引き継ぐ。いわば、3段ロケットでデフレ脱却を目指すわけだ。

安倍首相が中でも重視しているのが、大胆な金融緩和だ。衆院選の政権公約に「物価目標(物価上昇率2%)」を書き込み、政府と日本銀行でアコード(政策協定)を結ぶ考えを鮮明にした。首相就任直前のインタビューでは、日銀が物価上昇率2%のインフレ目標の設定に応じない場合、「日銀法を改正してアコードを結び、目標を設ける」と踏み込んだ。

苦い経験から金融緩和に執念

安倍首相がここまで金融緩和に執念を燃やす背景には、小泉純一郎政権の官房長官だった2006年3月の苦い経験がある。

官房長官として「緩やかなデフレが継続している認識には変わりない。政府と日銀が一体となってあらゆる政策を動員していく」と強調していた中で、日銀は2001年3月から続いた金融の量的緩和策の解除を決めた。

日銀は続いて、2006年7月にゼロ金利政策を解除、第1次安倍内閣が発足した後の2007年2月には利上げに踏み切った。安倍首相に近い関係者は「あの時、金融緩和をもう少し続けていれば、デフレから脱却できたとの思いが首相にはある」と明かす。

金融政策だけでデフレは克服できない

ただ、首相の思惑通りに大胆な金融緩和が行われても、景気が本当に良くなるとは限らない。副作用もあるからだ。例えば円安は、製造業には当面プラスだが、原子力発電所の停止で液化天然ガス(LNG)などを輸入して電力を賄っている現状では、円安になった分輸入コストが膨らみ、いずれ電気料金値上げという形で製造業にも跳ね返ってくる。

何よりも、金融政策だけではデフレを克服できないことをあらためて認識する必要がある。財政出動、成長戦略の3本の矢がそろって初めてデフレ脱却への道筋が見えてくる。

日銀に責任をかぶせるのでなく、政府と日銀が車の両輪となってデフレに立ち向かう。そんなアコードこそが求められている。

▼筆者による第2次安倍内閣発足後100日間の経済政策分析はこちら

アベノミクスが100日で起こした「マインドチェンジ」

  • [2013.01.10]
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読売新聞調査研究本部主任研究員。1961年東京都生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部卒業、読売新聞社入社。岐阜支局、横浜支局などを経て、経済記者として税・財政、金融危機、エネルギーと環境問題などを取材。東京本社、中部支社の編集委員を経て現職。著書に『メガチャイナ 翻弄される世界、内なる矛盾』(共著/中公新書/2011年)、『東海の産業遺産を歩く』(風媒社/2013年)など。

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