特集 東日本大震災2周年を迎えて
夢の実現に向けて―震災で犠牲となったアメリカ人教師家族の被災地支援
アンディ・アンダーソン/ジェフリー・アンダーソン
[2013.03.11] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | العربية |

東日本大震災ではふたりのアメリカ人が犠牲となった。宮城県石巻市で英語を教えていたテイラー・アンダーソンさん(当時24歳)はそのひとり。震災後、テイラーさんの意志を継いだアンダーソン家は追悼基金を設立。草の根レベルの援助活動に対する資金の提供を通じ、被災地の学生や子どもを支援してきた。震災2周年にあたりニッポンドットコムはテイラーさんの父親アンディさん、弟のジェフリーさんに寄稿をお願いした。

東日本大震災で多くの日本人が愛する人を失ったように、私たちアンダーソン家も英語教師の娘そして姉だったテイラー・アンダーソンを失った。彼女が亡くなったのは外国の地、宮城県石巻市である。私たちは想像を絶する破壊からは海を隔て遠く離れていた。東北の人々は2011年3月11日にすべてを失い、私たちは家族の一員を失った。

その「一員」――遠い国、そこに住む人々、その地の子どもたちに教えることや独特な文化を愛した人間――が私たち一家と日本を結んでいる。彼女を失った悲しみから立ち直るのに、私たちはいとしい彼女にならい、その情熱を受け継ごうとした。彼女は日本やその文学を学んだ経験から、問題の解決には人との絆を築くのが最上の手段と理解し、私たちは彼女からそれを学んだ。

テイラーを失った私たちの心の傷が消えることはないが、彼女の日本への情熱を分かち合い、大震災の後に彼女がしたに違いないことを実行し、私たちは大きな生きがいを感じてきた。

親を失くした子どもたちへの援助

テイラーは読書が大好きだった。時間さえあれば、本が作り出す世界の中で想像を膨らませていた。この好奇心がテイラーと日本と結び付けた。彼女の情熱を分かち合うようになり、私たちは彼女の世界を日本の皆さんと分かち合いたいと考えた。

テイラーが「JETプログラム」(※1)の参加者(英語指導助手)として石巻で教えていた7つの小中学校・幼稚園に文庫を作ったのもそのためだ。文庫のために地元の木工作家の遠藤伸一さんが素敵な書棚を作ってくれた。遠藤さんのお子さんたちはテイラーの教え子だった。

書棚にはテイラーが子どものころ好きだった本のほか、学校が選んだ多くの本が並べられた。寄贈された本は津波で水をかぶった本の一部を補い、さらに子どもたちはテイラーと世界を分かち合い、幼いながら異文化に触れられる。

震災で親を失くした子どもは、援助を最も必要としており、私たちは非営利団体「リビング・ドリームス」と「スマイルキッズジャパン」と協力し、長期的な支援を提供している。私たちが2011年3月に設立したテイラー・アンダーソン追悼基金は、気仙沼市内の児童養護施設、旭が丘学園を支援している。学園におもちゃや教材を寄付し、さらに施設で暮らす子供が、早期に英語を習う機会を得られるよう日本での英語アドベンチャー・キャンプに2011年と2012年の8月に参加した。過去2年のクリスマスには72人の子どもにクリスマスプレゼントを贈り、JET参加者とともにクリスマス・パーティーを催した。

さらにテイラー基金はNPO法人「東日本大震災こども未来基金」に寄付金を送った。この未来基金は震災で親を失った子どもたちに学資を援助し大切な役割を果たしている。

高校卒業後の教育継続も支援

私たちは被災地の高校卒業者が教育を受け続けるための援助にもかかわっている。

テイラー基金と仙台YMCAが共同運営する「テーラー記念奨学金」は、被災地の高校を卒業し、仙台YMCAが関連する専門学校2校に進学する学生に、2013年4月から学資を提供する。テイラー基金はまた、児童養護施設で暮らしていた高校3年生を大学に進学させるボランティア秋田の募金運動にも貢献した。

さらに、テイラー基金は石巻など被災地の高校生の大学受験費用を軽減する運動にも加わっている。多くの大学による、被災地出身の学生向け奨学金の対象となるには、学生と家族は相当な大学受験料の負担に迫られる。テイラー基金では、大学受験費用を援助するNPO法人、Hope for Tomorrowへの寄付を通じて受験生家族の負担を軽減している。

このような支援を通じ、私たちはテイラー基金を、あらゆる段階で被災者の教育を受ける機会の改善に向け役立てたい。被災地の未来、特に子どもたちの未来は最も大切であり、私たちの基金が、助けを必要とする人たちの状況の改善に役立っていることを嬉しく思う。

教室以外の文化交流でも貢献

テイラーは派遣された教室の外でも文化交流に貢献した。教室外でもさまざまな能力を発揮する他のJET参加者たちと共に、大人の集まりで英語やアメリカの文化・歴史を教えた。

「夢を生きる」上映会でのアンダーソン家。左からテイラー・アンダーソンさんの父アンディさん、母ジーンさん、妹ジュルズさん、弟ジェフリーさん。右端はこの映画を監督したレジー・ライフさん。(2013年3月8日、都内のホテルで/撮影=花井智子)

宮城・仙台JET少額補助金は宮城県在住のJETプログラム参加者たちが企画した英語・文化プログラムに資金援助する。補助金の申請は、宮城県在住のJET参加者によるグループ、MAJETの委員会とアンダーソン家が認可・不認可を決める。この補助金は、JETプログラム参加者が授業外の学校やコミュニティー活動に参加したり、指導的な役割を果たすことを可能にする。

インターネット、本や音楽やビデオや思想は、テイラーが日本を愛するきっかけを作った。そして彼女は実際に日本を訪れ、この国に対する愛情はゆるぎのないものとなった。人々とじかに接し、そこで話されている言葉を聞き、名所を訪ね、地元の料理を食べる――自分が魅せられる文化の地を実際に訪れるほどの強烈な経験は、他にはあり得ない。

テイラー基金と東京、仙台、リッチモンドのYMCA、日本YMCA同盟の協力で実現したテイラー基金青少年国際交流プログラムを通じ、テイラーが教えた7人の石巻の中学生は2012年7~8月にアメリカを訪れた。

7人は首都ワシントン、バージニア州リッチモンドやウィリアムズバーグを訪問した。リッチモンドでは地元のYMCAのキャンプに参加し、テイラーが学んだセント・キャサリン高校に子どもが通った家でのホームステイを楽しんだ。この日本からの訪問前に23人のセント・キャサリンの生徒たちも、日本政府主催の「キズナ強化プロジェクト」で日本を訪問した。今後もこのプログラムが学生たちの交流につながることを願っている。

娘の映画「夢を生きる…」に未来を託す

私たちは、できるだけ長く石巻の復興を手助けしたい。テイラーも彼女のJETプログラムの仲間もそう望んでいるに違いない。新たな「普通の」状態に落ち着くまでには何年もかかるだろうし、3・11の悲惨なできごとは何世代にもわたり人々の記憶に残るだろう。このためイスラエイド(イスラエルの非政府援助組織)、東京YMCAプロジェクト結(ゆい)などの非営利団体とテイラー基金が協力して石巻にコミュニティーセンターを設立しようとしている。このセンターはさまざまな団体が続けている石巻の人たちへの支援活動に使われ、癒しの場、そして震災を思い起こす場を提供する。

映画「夢を生きる――テイラー・アンダーソン、津波の犠牲となった米国人英語教師」のパンフレット

私たちは3月4日から11日まで日本に滞在し映画「夢を生きる――テイラー・アンダーソン、津波の犠牲となった米国人英語教師」の各地での上映会に出席する。

この映画のタイトルはテイラーが日本で実現していたこと、そのものだ。彼女が生きていたら必ず望んだであろうし、私たちが望むのは「夢を実現する」ことだ。

私たちが立ち直るための旅を東北と共に続ける中で、多くの人と出会い、多くの友人を得た。

テイラー・アンダーソン追悼基金に寄付し、協力してくれた人々に深い感謝の念を表したい。ここで紹介した各プロジェクトを通じ、私たちは太平洋の両側に住む多くの人と接する機会を得た。このグローバルなコミュニティーの住民は地理的には遠く離れているが共通の夢でつながっている。その夢とはテイラーが抱いていた文化の交流と子どもたちの幸せ、そして未来への希望だ。

(※1)^語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)」は、地方自治体が外務省、文科省、財団法人・自治体国際化協会(CLAIR)との協力の下に実施している事業。『JET(ジェット)プログラム』という名称で広く知られている。招聘(しょうへい)された人材は、外国語指導助手、国際交流員、スポーツ国際交流員の3つの職種に分けられ、小・中・高校や地方自治体に配置されている。2012年度で26年目を迎え、参加者の累計が57,172人に上っている。世界最大規模級の人的交流プログラムであり、JETプログラム参加者は帰国後も日本理解の促進に貢献している。

 

(2013年2月18日 記、原文英語。タイトル写真=映画「夢を生きる――テイラー・アンダーソン、津波の犠牲となった米国人英語教師」のパンフレットより/© 2012 Theodore R. Life Jr., Global Film Network Inc.)

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