特集 「地方創生」―地域の未来をつくる力
人口急減社会、国・地方はどのように対応するべきか—北海道から考える

山崎 幹根【Profile】

[2014.12.12] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | Русский |

今後25年で、8割の市町村で30%以上の人口減少が見込まれるという北海道。現状は厳しいが、独力で個性的なまちづくりを実践する自治体も出てきている。

全国の中でも際立つ北海道の苦境―人口減、札幌一極集中、経済の低迷

人口急減社会を迎える中で、北海道が今後直面するであろうインパクトは、全国の中でも極めて大きい。日本の北辺に位置する北海道は、国土の約20%を占める一方、人口は約4%であり、広域的かつ積雪寒冷という地理的条件の下、人々が分散して社会を形成しており、日本の他の府県とは異なる特徴を有している。

国立社会保障・人口問題研究所による「日本の地域別将来推計人口」によれば、2040年までに北海道の人口は2010年の550万人から2040年には419万人へと大幅に減少することが予測されている。さらに、北海道のすべての市町村で人口が減少する他、30%以上減少する市町村が141と約80%に達する。また、日本創成会議が発表した、20~39歳の女性人口が50%減少すると予想される「消滅可能性都市」は、全道の市町村の約78%がこれに該当し、全国で一番ではないものの、極めて高い部類に位置している。中でも、開拓、開発の歴史を反映し一時期繁栄を経験してきた、旧産炭地域や漁業が主要産業であった地域の衰退が著しい。

それとともに、北海道の地域構造を歪めている現象として札幌一極集中が指摘され続けてきたが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、人口に関してこの傾向が今後も続くと予想されている。札幌市は、政治、行政、経済における北海道の中心地として発展し続けてきたが、これに教育や医療の機能の他、サービス業などが集積することによって、その集中傾向に拍車がかかっている。その一方、函館、旭川、釧路など、道内の地方拠点都市は人口減少が続いている。他府県でも、また、他のブロック圏でも中心市への集中現象が問題になっているが、札幌一極集中は突出している。

経済動向に関して見れば、長期間、北海道は全国の経済成長の動向を下回っている。これは製造業の全産業に占める比率が低く成長率も低いこと、農林水産業は比率は高いものの成長率が低いこと、そして2000年代以降続いた公共事業費の削減により建設業が低迷したことが主な理由である。換言すれば産業構造が高度化していないために、産業全体に占める比率、そして成長率を確保できていない。

国策で進んだ北海道開発

このような北海道の現状と課題を国と地方の双方の視点から考えるに際して、まず北海道が他の府県と異なる制度に位置づけられてきた歴史的な経緯を振り返る。北海道開発体制の沿革は明治初期の北海道開拓使設置までさかのぼることができるが、戦後に限っていえば、敗戦後の日本経済の復興を遂げるために国策として北海道を開発した。さらに、非公式的には、ソ連との国境隣接地域として北海道に政治的、軍事的な意味づけを与え、北海道を日本の国土とし、住民を国民として定着させることも作用した。

1950年、北海道開発法が制定、国務大臣をトップにした中央省庁として北海道開発庁が創設され、翌51年には、国が開発事業をすすめるための総合的な出先機関として北海道開発局が設置された。さらに、56年には政府系金融機関として北海道開発公庫を設置、翌57年に北海道東北開発公庫に改組され、ほぼ戦後の北海道を開発するしくみの概要ができあがった。また、戦前のしくみを引き継ぐ形で、北海道開発予算をまとめて扱う一括計上権や、開発事業の地方負担を軽減する高率補助も維持された。

国主導の開発政策を振り返れば、第1に、開発事業についてみればほかの地域に比べて膨大な開発事業費が北海道に投入され、北海道の社会資本は短期間で急速に整備された。第2に、人口についてみると戦後から90年代までは、ほぼ一貫して道内人口が増加してきた。明治初期に約6万人にすぎなかった人口は、20世紀末には約570万人にまで達した。北東北や南九州などの類似県と比較すれば人口は定着していたといえる。第3に、産業振興政策という点では、北海道は食料、石炭をはじめとした地下資源など、日本経済社会が必要としていた資源を全国に供給する役割を担ってきた。

“公共事業依存”体質が固定化

ところが、それぞれの時代に策定されてきた北海道総合開発計画が目指した人口増加の目標、そして産業構造の高度化や経済成長、また既成工業地域からの工場誘致は、十分には達成できなかった。他方、開発事業の増大は、北海道の公共事業依存構造を固定化する結果を招いた。

その後、北海道開発の国策としての位置づけは、冷戦の終結、経済の国際化、グローバル化によって、90年代以降急速に低下した。開発体制が持つ特質は2000年の行政改革によって薄れ、中央省庁のひとつであった北海道開発庁は国土交通省に統合され、省内の一部門として北海道局となった。

地方自治体である北海道は、インフォーマルな形で国と相互補完関係を形成し、開発体制の一翼を担ってきた。両者は、より多くの財政資源を確保、開発事業を進捗させることに関して利害を共有し、協調関係を構築してきた。一方、70年代後半以降、両者が置かれている環境の違いから、すなわち国策としての開発を追求する国と、地域住民の意向と直面し広範な政策分野を担う北海道が、それぞれ独自性を指向するようになった。

また保革を問わず、歴代の知事はその時々の課題を解決するために独自の政策づくりに努力をしており、環境アセスメント条例、ケア付公営住宅、時のアセスメント(※1)、道州制特区法(※2)など、全国に先駆けて北海道が行った公共政策も少なくない。北海道知事はそれぞれのやりかたで、時に国と協調して北海道の抱える問題を解決するとともに、時に国と対抗しながら北海道の独自性を追求してきたのである。

しかしながら、近年の北海道政は、財政難のため最近まで人員と給与の削減を強力に進めるとともに、新規事業を抑制してきたこともあり、存在感を低下させつつある。更に、北海道全体で実践してきた道州制特区法を利用した権限移譲が中央各省の消極姿勢から見るべき成果をほとんど生まなかったことや、北海道内にある道の出先機関(支庁)改革が実質的に進まなかったことなどが重なり、地方自治体である北海道が、地域としての北海道の発展方向を強力に明示できていない現状にある。

今後の方向性―ニセコなど独自の地域政策の例も

このような状況にある北海道は人口急減社会の課題にどのように向き合い、解決策を見出していくべきであろうか。第1に、グローバル化の下で、いかに北海道の地域特性を活かした産業政策を展開することができるかが問われている。2000年代以降の経済状況といわゆる三位一体改革と呼ばれた地方財政の見直しは、2007年に財政破たんした夕張市のみならず、多くの道内市町村の財政状況を悪化させた。

一方、北海道の市町村の中には、早くから独自の地域づくりに努力し、全国の中でも先端をゆく実践を行っている自治体も多い。その一例として挙げられるニセコ町は、周知のとおり、2001年に全国で初めて、住民参加と情報共有を基本理念とした自治基本条例(正式にはまちづくり基本条例と呼ばれる)を制定した。現在、ニセコ町にはオーストラリアをはじめとして海外から多くの観光客が訪れ、また、国内外の移住者、そして、観光関連を中心として雇用も増加している。外国人観光客の誘致は全国レベルでも推進されているが、その中でもニセコ町は、オーストラリアや東アジアの観光客に、スキーリゾート地としての魅力を積極的にPRし、国内外の人々との交流を促進し、観光、農業、環境の分野を中心とした個性的なまちづくりを実践している。

また下川町は、1980年代より持続可能な森林資源を活用した地域づくりを実践してきたが、近年、木質バイオマスエネルギーの利活用に力を入れるとともに、町内の一の橋地区では、木質バイオマスを中心とした自然再生エネルギーを取り入れたユニークな集住化と地域再生事業を実践し、注目を集めている。

釧路市では、数年前から夏季の長期滞在者誘致を進めている。釧路の夏は余りに涼しく、霧が多いことから地元の人々からは余り好まれてこなかった。しかしながら、本州の猛暑で苦しんでいる人々にとっては別天地であり、近年では、釧路の魅力が知られるようになり、個人滞在者のみならず学会やスポーツ大会の開催も増えている。こうして避暑に止まらず地域経済の活性化、新たなライフスタイルの提案、そして電力の節約と、さまざまな政策効果が生み出されることが期待されている。

以上のような個々の自治体で行われているユニークな実践のみならず、国によって「北海道フードコンプレックス国際戦略総合特別区域」の指定を受けることにより、北海道、札幌市、江別市、函館市、帯広市、北海道経済連合会らが主体となって第1次産業の生産性向上、高付加価値化の推進を目指して食の研究開発を進めるとともに、競争力を持った農業および食品関連産業の確立を目指している。

いうまでもなく、人口急減社会への最も重要な対策の一つが地域における雇用創出である。北海道には全国の中でも優位性を持つ地域の特性が数多くあるが、これを磨き、競争力を高める実践を、官民を挙げて行うかがカギになる。

潜在力高めるネットワーク拡充を

第2に、北海道の潜在力を伸ばすためには、いかに内外とのネットワークを強化、発展させるかが重要である。この間整備されてきた北海道の社会資本をいかに活用するのか、換言すればハードとソフトをいかに結びつけるかが課題となる。北海道は本州以南および東アジア諸国と北米、欧州を結ぶ空路、航路の結節点にあるという地理的な優位性を持っている。しかしながら、空路、航路ともにいっそうの発展の余地はある。今後、北半球の拠点空港、港湾としての展開が、そして、2016年に予定されている北海道新幹線の函館開業の効果を最大限に引き出せるかが問われよう。

また、地域レベルにおいては、コンパクト化、集住化を進めることが望ましいエリアと、社会経済構造上、必然的に広域分散型の居住にならざるを得ないエリアが併存することを踏まえた上で、道路整備などハード面のみならず、地域交通や物流、防災、医療などのソフト面を組み合わせた上で、それぞれのエリアに適したネットワークの整備、発展が望まれる。

地域特性生かした国土保全・環境管理が必要

第3に、国土保全・環境管理の面から、北海道に他府県とは異なる政策が必要である。北海道は依然として国土の約22%を占め、積雪寒冷地という条件の下で、分散型の社会を形成している。そのため、効率的な行政運営を行ったとしても、他府県と比較して地域社会を維持するために必然的に割高なコストを要する。農業に関していえば、国際競争力を高める努力をする一方で、欧州連合(EU)で行われているような農業者への直接所得補償制度を整備すべきである。更に、国境隣接地域の国土保全という観点から、離島や辺境の地に一定の人口が安定的に定着することは、安全保障上も重要性を増している。また、世界遺産や国立公園を含めて、今日ではまったく手つかずの自然は道内でもほとんど残っていない。国民的な財産としても、自然環境を維持管理するためには一定の人口を維持する必要があることに留意しなければならない。

こうした北海道の持つ潜在力を活かす形で、北海道では東日本大震災以降急速に高まったリスク回避の意識に応え、首都圏の経済機能の分散化の受け皿となるための「バックアップ拠点構想」を政策として打ち出しているが、こうした中、アクサ生命が本社機能の一部を札幌に移転させることを決定したことは注目される。

あるべき国と地方の役割―市場主義・画一主義をこえて

北海道は国主導の開発政策が進められてきたこと、他地域とは異なる積雪寒冷地での広域分散型社会であるがゆえに、人口急減社会の影響が顕在化している。そのため、北海道全体として、また、苦境に立たされている地域が数多く存在する。しかしながら、現在までの開発政策の成果を踏まえ、そして北海道の自然的、地理的特性を積極的に活かそうとする実践も数多く見られることも確かである。

今後、ますます求められるであろう、ソフトとハードとの融合、官民の連携、内外とのネットワークの発展を進めてゆく担い手は、地方自治体や地域の企業家、住民らが主体となってゆくことが期待される。地域の創意工夫を高めるためにも、国はいっそうの地方分権を進めてゆくことが求められる。と同時に、地方の側の努力は市場における民間企業の競争とは異なる面があることに留意しなければならない。

全国画一的な制度の下では難しい国土保全、環境管理面の対応に関しては、全国的見地からこれを考えてゆくことも必要である。こうした国と地方の役割を踏まえ、両者が協調関係を構築することによって、北海道から数々の地域再生のモデルが産み出されることが期待される。

(参考文献・資料)

増田寛也編著『地方消滅』中央公論新社、2014

国土交通省北海道局『北海道開発の将来展望に関するとりまとめ(案)』2014

山崎幹根『国土開発の時代 戦後北海道をめぐる自治と統治』東京大学出版会、2006

小磯修二『地方が輝くために 創造と革新に向けての地域戦略15章』柏艪社、2014

タイトル写真:オーストラリアからのスキー観光客でにぎわう北海道・ニセコ町。街中の看板にも英語表記が目立つ=2011年2月撮影(時事通信フォト)

(※1)^ 長時間進捗しない公共事業を行政機関が時代状況の変化を踏まえて再評価し、中止や継続を判断する政策。北海道が日本で初めて1997年に導入した。

(※2)^ 2006年制定。北海道が道州制のモデルとして指定され、国の権限の一部が移譲された。

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  • [2014.12.12]

北海道大学公共政策大学院教授。1967年三重県生まれ。北海道大学大学院博士課程単位取得退学。釧路公立大経済学部助教授、北海道大学大学院法学研究科助教授などを経て、2007年より現職。著書に「国土開発の時代―戦後北海道をめぐる自治と統治」(東京大学出版会、2006年)「『領域』をめぐる分権と統合-スコットランドから考える」(岩波書店、2011年)など。

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