特集 「地方創生」―地域の未来をつくる力
地方は生き残るために、稼ぐ事業と政策を組み立てよ <後篇>
地域活性化伝道師・木下 斉氏インタビュー
[2015.05.07]

人口減少社会にあって、急務の一つとされるのが地方活性化である。だが、従来型の補助金頼みの地域開発では、これまでの数多くの失敗例と同じ轍を踏むことになってしまう。

木下 斉

木下 斉KINOSHITA Hitoshi一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事、内閣官房地域活性化伝道師。1982年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、経営学修士。2000年、早稲田大学高等学院在学中に全国商店街合同出資会社設立、社長就任(~2004年)。2009年より現職。現在、熊本城東マネジメント株式会社代表取締役(2008~)、一般社団法人公民連携事業機構理事(2013~)。主な著作は『まちづくり:デッドライン』(広瀬郁氏と共著/日経BP社/2013年)など。

地方創生、失敗事例の「墓標」

——地方創生で成功している事例がある一方で、まちの活性化として始まった事業が、まち衰退の原因となっている例も見受けられます。そうした失敗例を教えていただけますか。

青森駅前再開発ビル・アウガ(写真提供=毎日新聞社/アフロ)

「失敗例は後を絶ちません。青森駅前再開発ビル・アウガは、その典型例と言えるでしょう。これは、青森中心部を活性化しようとして始まったプロジェクトで、総費用185億円のうち、公共からの開発費補助額は85億円にものぼります。それでも、施設経営は初月から赤字で、事業計画上進んでも、今後ずっと赤字になってしまうという施設なのです。そこで自治体は緊急出資や緊急融資をしたりと、さらに支援金額はうなぎ登りになり、未だに再建に向けた火消しともいえる状況が続いています。活性化どころか自治体財政の足かせになり、地域としても衰退の象徴のようになってしまっています」

「私が代表をつとめているエリア・イノベーション・アライアンスでは、2014年に全国7つの活性化目的で開発された失敗事例を『墓標シリーズ』としてまとめ、レポートを発表しました。先日日本経済新聞にも掲載されるなど各所から反響がありました。なぜならば、これまでの政策では成功事例は共有されても、失敗事例は共有されなかったからです。しかし、過去の成長期に確立した手法が現代では機能不全となっている。その事実と向き合って解決策を生み出していかなければ、地方の活性化は不可能であると思っています。そのため、民間としてこのようなレポートを発表し、政策の改善を求めています」

従来型の助成金を使った地方活性化モデルの問題点

——失敗に終わってしまう地方活性化事業に共通する要素はありますか。

「要因はいくつもありますが、活性化事業は常に使い捨てをされてきました。地方活性化事業は、政策が先にできて、各地域で挑戦し、その中から成功事例が生まれるわけではありません。むしろ、政策とは関係なく、ある地域で地元の方たちの努力で成功している事例が突発的に生まれます。すると、『このような事例は今後の全国の参考になる』ということで、それを政府などが取り上げ、支援する予算が付きます。ここで政策になっていくのです」

「つまり政策によって成功事例が生み出されるのではなく、成功している事例を元にして政策が組み立てられるのです。なぜなら、政府などは現場を持っているわけではないですから、自分では成功事例を作れません。そのため成功している事例を見つけ、表彰したり、モデル事業などでピックアップして、政策の参考にします。さらに、その事業を参考にして、同じような事業をやりたいという全国各地の取り組みに補助金を配り、真似させて成果を上げさせようとします。しかしそう簡単に皆がお金をかければ成功するわけではありません」

「最初は成功事例だったはずの事業も、国の支援などで構造的に歪んでしまい、3年間もたてば最悪の場合失敗事例になってしまったりします。そうすると、あっさりと政府などは事例をポイ捨てをする。もう成功事例としては取り上げないし、補助事業のモデルにもしなくなります」

「そうこうしているうちに、担当している役所の人間もローテーションで入れ替えとなり、また次なる担当の方々が次の事業を発掘しモデル事業化して補助をする、ということの繰り返しです。これでは、政府としても予算の無駄遣いになりますし、何よりも地域活性化事業が常に使い捨てられていくという悲しい状況になっています。私自身も実際にそういった状況に幾度となく遭遇しました。だから行政に依存するような成功事例の普及啓発などは意味がないと思っています」

「だから、市場と向き合った取り組みが大切であると思うのです。成果を生み出している事例の共通要素は、何かの支援事業に依存せず、独立して取り組み成果を上げているという点です。そこに変な支援を入れてしまうので歪んで失敗してしまうわけです。支援はいらないのです。自立した成果を収め続けるしか道はないわけです」

「そもそも、誰しも稼ぐ以外の予算がくると、自分たちで稼ぐことが二の次になってしまいますね。なぜなら、黙っていても予算としてお金がくるわけですから。予算は補助金で担保されるので、その範囲内でやれることだけやっていればいい、という後ろ向きの考え方になってしまうのです。それでは地方に活力は生まれません。失敗する地域活性化事業に共通するのは、このような稼ぐ以外の資金に依存し、自ら稼ぎだすという姿勢を失ってしまったものばかりです」

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