特集 シニア消費から見る日本の高齢化社会
データから見たシニア消費の実態

熊野 英生【Profile】

[2015.11.06] 他の言語で読む : ENGLISH | 简体字 | 繁體字 | FRANÇAIS | ESPAÑOL | Русский |

日本の多くの高齢者は、豊かなのか、貧しいのか。高齢化社会で「老後破産」への不安が募る中、さまざまなデータから高齢者世帯の実像に迫る。 

シニア消費は個人消費の48%、しかし消費総体は停滞

ここ十数年にわたって、おおむね右肩上がりにみえる需要がある。高齢者消費である。家計消費の中の60歳以上の消費支出は、筆者の推計では2003~2014年まで年平均3.1%で増え続けている。特に、リーマンショック後の2010~2014年は年平均4.4%の増加率である。

2014年のシニア消費、すなわち世帯主60歳以上の世帯の消費は、実額で115兆円に達すると試算される。この大きさは、個人消費(帰属家賃を除く家計最終消費)の48%、名目GDPに対して24%になる(図1)。

誤解のないように記しておくと、シニア消費の増加は、わが国の人口のウエイトが年長に変わっていく変化を反映したものに過ぎない。もう一方で、若い世代の消費支出は大きく減っている。世帯主60歳未満の消費支出の伸び率を平均すると、2003~2014年までの年平均マイナス1.9%である。つまり、総体としての個人消費は、停滞している。2003~2014年の年平均は0.1%増加、ほぼゼロ成長なのだ。

シニア消費の増加は、人口動態が高齢者増に向かっていて、シニア消費は増えているだけで、消費全体が活性化しているわけではない。

1世帯当たりでみれば、60歳未満の世帯の平均消費額は月27.5万円と、60歳以上の世帯の23.0万円を上回っている。60歳未満の世帯の大部分は勤労者世帯であり、60歳以上の多くは年金生活世帯である。世帯の高齢化が進んでいくと、かつては高所得だった50歳代が次々に、60歳以上世帯に移っていき、平均値としての1世帯当たりの平均消費額は減っていく。高齢化は成長率を低下する圧力になっている。

論理的に言えば、60歳以上の世帯がより収入を増やせば、シニア消費が牽引役になり得る。もっとも、社会保障給付が切り下がっていく未来に、シニア消費が増える将来像は描けない。公的年金制度には、物価上昇率から一定割合を差し引いて支給するマクロ経済スライドが敷かれている。年金生活者の1世帯当たりの購買力は、物価上昇が進むほどに減少するだろう。

将来の個人消費は減少の一途

ここまで右肩上がりにみえていたシニア消費であるが、今後も大きくなり続けるのであろうか。そのことを、60歳以上人口の見通しを通じて考えたい。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(中位推計)では、2017~2025年までは年平均0.4%とごく僅かな人口増加になる見通しである(図2)。これまでシニア人口の増加を後押ししたのは団塊世代(1947~49年生まれ)であった。彼らよりも5歳くらい若い世代になると、人数がそれほど多くなくなるため、シニア人口の増加が鈍化する。

先にみた2014年のシニア消費の年代別内訳を計算すると、各年代の消費額は、60歳から70歳以上になって段々と減っている(図3)。これは、世帯の高齢化が進むと、1世帯当たりの平均消費額がじわじわと減っていくからである。

おそろしいのは、働き手になる20~59歳の人口が、さらに減っていくことである。この年齢層は、2000年に初めてマイナスに転じ、リーマンショック前後から急激に減ってきた。

これからの未来は、シニア人口が増えなくなって、さらに勤労世代も加速度的に減っていく(図4)。ならば、移民を増やせばよいという論者もいるが、2015~2020年だけでみても、年間40~60万人の人口が減るので、その穴埋めに毎年その人数の移民を入れるのは技術的に不可能だ。そうした中、将来不安を抱えているシニア層に、未来の日本経済のために貯蓄を取り崩して消費拡大をしてほしいとお願いするのは酷である。

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  • [2015.11.06]

(株)第一生命経済研究所経済調査部・首席エコノミスト。1967年7月 山口県生まれ。1990年3月 横浜国立大学経済学部卒。1990年4月 日本銀行入行。同行調査統計局、情報サービス局を経て、2000年8月 第一生命経済研究所入社。2011年4月より現職。2014年日本FP協会理事。専門は、金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。主な著書は『本当はどうなの? 日本経済―俗説を覆す64の視点』(日本経済新聞出版社、2012年)等。

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