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自民総裁選、改憲手続きの進展が焦点:2018年政治展望

高橋 正光【Profile】

[2018.01.05]

2018年は、衆院選、参院選、統一地方選といった「大型選挙」がない久しぶりの年となりそうだ。こうした中、安倍晋三首相(63)の3選が懸かる9月の自民党総裁選と、安倍首相が強い意欲を示す憲法改正の手続きがどこまで進むのかが、日本政治の焦点となる。

順当なら安倍首相3選

自民党は10月の衆院選で284議席を獲得し大勝した。大政党に有利な小選挙区制の下、野党分裂に助けられたとはいえ、安倍政権が国民の信任を得たのは間違いない。それから1年も経ずに首相を代えることは、民意に反するとも言える。政権の足元を見ても、細田派、麻生派、二階派といった主要派閥が支えており、順当なら「安倍3選」の流れだ。

対抗馬として出馬が確実視されるのが石破派の石破茂元幹事長(60)。野田聖子総務相(57)も閣内にいながら立候補への意欲を隠さない。とはいえ、現状では党内で石破氏の支持は広がりを欠いている。野田氏も立候補に必要な国会議員20人の推薦人確保にめどが立っているようには見えない。

総裁選の構図を変える意味で注目が集まるのは、岸田派を率いる岸田文雄政調会長(60)の動向だ。岸田氏は第2次安倍内閣以降、外相や政調会長として一貫して政権を支えてきており、「ポスト安倍」の有力候補だ。安倍首相から事実上の後継指名を受ける「禅譲路線」を政権獲得の基本戦略としてきた。

これまでのスタンスを変えず、総裁選で安倍首相の3選を支持すれば、「本命」の立場は変わらないが、退任時の安倍首相が後継指名できるほど政治的な影響力を維持している保証はない。その間に、小泉進次郎筆頭副幹事長(36)や河野太郎外相(54)といった次世代のリーダー候補が台頭してくるかもしれない。

一方、総裁選に出馬すれば、安倍政権から距離を置くことになる。勝てなくても善戦すれば、「ポスト安倍」の有力候補として一層存在感を増すことになる。しかし、石破氏の後塵を拝するような惨敗を喫すれば、「ポスト安倍」争いから脱落しかねない。岸田派内には「政権は勝ち取るもの」という主戦論もあり、岸田氏はぎりぎりまで党内状況を見極めて出馬の是非を判断するだろう。

もっとも、3選に向け盤石とも見える安倍首相だが、死角がないわけではない。不安材料の一つが内閣支持率の行方だ。衆院選を経て、報道各社の内閣支持率は概ね5割前後を確保、不支持率を上回っている。しかし、自民党が惨敗した7月の東京都議選前後のように不支持が支持を上回る状況になれば、党員の間で「安倍離れ」が進みかねない。

安倍首相が3選を果たしたとしても、党員票で石破氏を下回れば、求心力は一気に低下するだろう。そういう意味で、22日召集の次期通常国会で、森友学園、加計学園の問題にどう対応し、世論がどう反応するのか。また、東京地検特捜部が捜査中のリニア中央新幹線建設をめぐる談合、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成金詐欺事件がそれぞれどう展開するのか。政界では関心が集まる。

改憲へ4つのハードル

衆院選で憲法改正を公約に掲げた安倍首相は早速、実現に動き出した。歴代首相の誰も成し遂げていない改憲という「レガシー」を残すには、①自民党案の策定②公明党との調整③改憲の発議④国民投票-という4つのハードルを越える必要がある。党総裁選で3選を果たせば、21年9月までの超長期政権が視野に入り、実現への時間は増えるが、政権を取り巻く状況や今後の政治日程を考慮すると、低いハードルではない。

自民党が打ち出した改憲項目は、自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参院選挙区の合区解消の4つ。党の憲法改正推進本部で改憲案の策定作業を進めているが、調整は遅れ気味。与党ながら衆院選で6議席減の敗北を喫した公明党は独自色を強める構えで、支持母体である創価学会内の空気もあり、改憲には極めて消極的だ。

衆院選で野党第1党になった立憲民主党は、自民党の掲げる4項目の改憲に反対しており、協力は期待できない。報道各社の世論調査を見ても、国民の間で改憲への機運が高まっているとは言えず、国民投票で過半数の賛成を得られる保証はない。

また、改憲のスケジュールを考える上で、ポイントとなるのが2019年夏の参院選だ。参院(定数242)の3分の2は162議席。会派単位で自民、公明、日本維新の会、希望の党を「改憲に前向きな勢力」とした場合、現在はわずかに超える程度だ。

次回改選を迎える自民党会派に所属する議員は69人と多く、自民党は単純計算で60台半ばの議席を確保しないと、改憲勢力が3分の2を切る可能性がある。前回は55議席にとどまっており、かなり高い数字だ。こうした政治状況を考慮すれば、安倍首相は参院選までに「発議」しようとする可能性が高そうだが、そうなると時間的な余裕はそれほどない。

重要法案を例にとれば、改憲案の審議時間が衆参それぞれで、100時間を大きく超えるのは確実。参院選までには、22日召集の通常国会、秋の臨時国会、19年1月召集の通常国会と3国会しかない。また、発議から国民投票まで60~180日必要だが、19年には参院選のほか、天皇陛下の退位・新天皇の即位とそれに伴う儀式、G20首脳会議やアフリカ開発会議、ラグビーワールドカップなどの国内行事が目白押し。どこに国民投票を組み込むにも、政治日程は極めて窮屈だ。

18年中の2国会で、どこまで改憲への手続きが進むのか。それによって、参院選までの発議にこだわるかも含め、安倍首相が描く改憲のスケジュールがおぼろげながら見えてくることになろう。

野党再編へ

衆院選に伴い、民進党は立憲民主党、希望の党、参院議員主体の民進党に3裂。野党勢力の多党化がさらに進んだ。立憲以外の各党は支持率が低迷したまま。希望内部は、改憲や安保法制の評価を巡り2分されている。リベラル系が中心の立憲は、支持率の低下を懸念して希望や民進との合流に否定的だ。とはいえ、参院選、特に「1人区」での戦いを考えると、野党が連携しなければ、自民党を破るのは極めて困難と言える。

既に民進党内では、政党交付金算定の基準日となる年末をにらみ、「解党して新党」の動きも出るなど混乱が続いた。18年中には野党の分裂、再編が起きる可能性が高い。

バナー写真:記者団の質問に答える安倍晋三首相(中央)=2017年12月12日、首相官邸(時事)

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  • [2018.01.05]

時事通信社編集局総務兼解説委員。1961年、東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。時事通信政治部で自民党小渕派、新進党、公明党などを担当。外務省、自民党、首相官邸の各記者クラブキャップ、政治部次長兼編集委員、政治部長、神戸総局長を歴任し、2015年から現職。

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