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海外展開を図る日本のテレビ局:訪日旅行者の誘致にも貢献

内山 隆【Profile】

[2018.07.09]

日本のテレビ番組の海外輸出額は、ここ数年大幅な伸びを示している。その内訳を見ると、番組放送権だけでなく、インターネット配信権や商品化権など売り上げが多様化しているのが分かる。

訪日外国人旅行者の数は2010年に800万人強だったが、16年には2400万人強と約3倍になった。急増にはさまざまな要因が考えられるが、その一つにテレビ番組の海外展開が進んだことを挙げてもいいだろう。10年に66.3億円だった日本の放送コンテンツ輸出額は、16年には393.5億円と大幅に伸びた。日本の文化や日常生活が紹介される番組を見て興味を抱き、実際に訪日する外国人が増えたことは想像に難くない。

総務省が18年6月に発表した「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(16年度)」によると、ジャンル別に見た番組販売権(番組放映権・インターネット配信権・ビデオ・DVD化権)の輸出額では「アニメ」が8割を占め、ついで「ドラマ」、「バラエティー」が続く。実写モノのドラマでは日本語という特殊な言語がネックになるが、アニメはそうした壁を容易に乗り越えることができるジャンルだ。また輸出先では、アジア、北米への展開が中心となっているのが分かる。以下、それぞれのジャンルの特徴について解説する。

さまざまな展開が期待できるアニメ

日本のアニメに対する国際的な認知が広がったのは1980年代である。欧州各国の放送民営化に伴い、ケーブルテレビや衛星多チャンネル放送が始まり、世界的なコンテンツ不足に陥った時代だ。大量かつ安価にコンテンツを供給できる売り手には買い付けが集まり、特にハリウッドのテレビドラマと日本のアニメには強い引き合いがあった。

欧州のエリート層は、そうしたコンテンツの大量流入を文化的侵略と受け止めた側面がある。しかし日本側には文化侵略的な意識はなく、国際交流的な感覚で積極的に海外展開を行っていった。当時日本のアニメ番組を見て育った欧州の子供たちが大人になり、毎年7月にパリで開催される「ジャパンエキスポ」に代表されるような日本のポップカルチャー・イベントを欧州各地で開くようにもなった。

日本アニメの強みは、マンガや小説をベースにした企画開発を行う出版社と映像制作を行うテレビ局・映画会社の社会的な分業体制ができていることだろう。映像作品を魅力的なものにするためには、面白いストーリーが不可欠である。日本では出版業界との連携によって質の高い原作が供給されており、大人が見ても楽しめる作品となっている。

現在でも、日本のアニメ業界に魅力的な作品の供給力があると期待される状況は変わっていない。近年ネット配信事業が急速に普及したことで、再び世界的なコンテンツ不足に陥っている。「ネット配信バブル」と言われる中で、世界各国から日本アニメに対する引き合いは強い。特に中国のバイヤーや米国のネットフリックスのようなネット配信事業者が積極的にアプローチしている。

アニメは単に映像展開のみならず、知的財産としての活用性も高く、さまざまな展開が期待されるジャンルである。おもちゃや食品、文房具といった商品化権への展開はいうまでもなく、最近では「アニメソング・フェスティバル」のようなイベントも行われている。

アニメの舞台となっている場所を訪ねる「聖地巡礼」もその一つで、欧米ではコンテンツ・ツーリズムとよばれる行動だ。日本のアニメは作品の舞台となる場所が実際に存在していることが特徴で、訪日旅行者に日本へ行きたいと思わせる動機付けの一つとなっている。

さらにタイで高い人気を誇るアイドルグループ「BNK48」のメンバーを起用し、日本各地のアニメ聖地を巡り、その地域の魅力を紹介する番組をタイのテレビ局と連携して放送する企画をアニメツーリズム協会が立案し、日本のテレビ局が制作するなど新たな展開が見られる。

リメークしてグローバルヒット

2017年、「Mother(マザー)」(日本テレビ系、2010年)、「Woman(ウーマン)」(同、2013年)といったテレビドラマの海外展開に関係者の話題が集まった。この2作はトルコでのリメーク版(それぞれ「ANNE(母)」、「Kadin (女)」)に人気が出たことで、さらなる展開を生んでいるからだ。「ANNE」がメキシコやチリ、クロアチア、セルビアなど20カ国以上で放映され、「Kadin」も同じように各国のテレビ局からオファーを受けている。トルコのテレビ局が日本のドラマを現地の嗜好(しこう)に合わせてリメークし、グローバルにヒットさせたという点で注目に値する例だ。ドラマなどのリメーク権販売は、完成パッケージ販売(※1)と並ぶ海外展開オプションの一つである。リメーク権販売が成功するには、もとになるドラマの内容が面白くなくてはならない。

完成パッケージ販売は、これまでアジアを中心に行われてきた。特に1990年代から2000年代にかけてのテレビドラマが中国で人気となり、留学生や訪日旅行者の増加に大いに貢献している。長年、日本のテレビドラマを数多く受け入れてきたのは、台湾、韓国、中国である。

観光情報に力を入れる地方テレビ局

ドラマのリメーク権の販売と共に活発なのは、バラエティー番組のフォーマット輸出である。例えばTBSの「SASUKE NINJA WARRIOR」などは、大成功を収めた例と言えよう。米国、台湾、マレーシアで評判となり、現在では世界165の国と地域で放映されている。

TBS以外にも東京や大阪のキー局は国際的に評価の高い情報バラエティー番組を持っており、番組丸ごとの企画から、番組内のコーナー企画に至るまで、現地の有力な制作会社や代理店と協働し、現地向けにローカライズした番組を制作している。そして協働したパートナー企業から現地のテレビ局に販売され、放映されている。さらには国際共同制作者という立場で現地の制作会社に投資したり、台湾やシンガポールなどに現地法人を設置したりする局も現れ、単なる番組の販売からさらに一歩進んだステージに入りつつある。

2010年代に入ってから、「散歩モノ」「街歩きモノ」とも言うべき情報エンターテインメント系の番組が国内で数多く放送されるようになった。お笑い芸人などが街を歩きながら人気の店舗で食事をしたり買い物をしたりする番組だ。海外のテレビ局に販売されることで、日本各地の観光地やグルメなどのリアルな映像情報が海外に伝わっていき、日本を一度訪れてみたいと思わせているようだ。自分たちの町を広く海外に知らせたい自治体、制作予算が厳しくなっているテレビ局、そしてタレントの活躍の場を広げたい芸能事務所の思惑が合致して、このジャンルの海外展開が活発になっている。

北海道のテレビ各局は1990年代からこうしたジャンルに取り組み、成果を上げてきた。北海道の冬の自然や食文化に憧れる熱帯や亜熱帯、季節が逆転する南半球からの観光客の誘致に成功し、不調だった北海道経済の構造転換に大きく寄与するまでになった。九州のテレビ局では湯布院や別府など温泉地を海外に紹介する番組に力を入れている。東海・北陸地方の各局は連携して広域観光周遊ルート「昇龍道」の主なスポット紹介を行っている。ラーメンという食は日本中にあるが、地域ごとに具材や味つけも異なるので、それぞれの特性を反映させることができる。こうしたご当地ラーメンの紹介番組も海外で好評のようで、各地のラーメン店では訪日外国人をよく見かけるようになった。

さまざまな放送局間の連携のもとで、食(スイーツや海産物、A級・B級グルメなど)、観光スポット、伝統文化などをテーマにしたテレビ番組の制作が行われており、海外で放映されている。こうした番組の情報量は膨大で、訪日外国人の数が世界で30位ぐらいだった2000年代には、東京と京都ぐらいしか認知されていなかったことを思うと隔世の感がある。

バナー写真=PIXTA

(※1)^ 売る側が自国で放送したままの状態で売り、買った側は言語の吹き替えなどの最低限のローカライズ作業を行う。

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  • [2018.07.09]

青山学院大学総合文化政策学部教授。専門は「映像コンテンツ産業の経営戦略と政府経済政策」。2008年より現職。日本民間放送連盟研究所客員研究員、総務省情報通信政策研究所特別研究員などを兼務。

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