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日本のコンビニと成人誌:ミニストップの「販売中止」で見えてきた裏事情
[2018.04.27]

外国人旅行者や日本に住む外国人が増え続けていることもあり、コンビニの利用者はどんどん多様化している。コンビニで働く外国人も増えている。その外国人が気になるというのが、「コンビニに置かれた成人誌」。なぜ日本のコンビニには多くの成人誌が置かれているのか。それはこれからも置かれ続けるのだろうか。

外国人が不思議に思う成人誌の取り扱い

日本のコンビニには雑誌コーナーがあり、その端には多くの店で「成人向け雑誌」と書いた、申し訳程度の仕切りがある。仕切りの向こうには、あられもない姿をした女性の絵や写真が表紙になったマンガや雑誌が並んでいる。この光景に外国人が驚くというのはよく聞く話だ。品揃えや利便性の点で称賛されることが多い日本のコンビニだが、確かに成人誌の取り扱いは不思議な一面かもしれない。

「海外では成人誌をコンビニのような一般的な店舗に置かない」とも言われるが、それは本当なのだろうか。では成人誌はどこでどのように手に入るのか。

米国人の男性は「おそらく州によって法律が違うのだろうが、ニューヨークでは、コンビニやドラッグストアの子どもの目の届かないレジカウンター内にあったり、20歳以上しか入れない酒屋に置いてあったりすると思う」。またフランス人の男性に聞くと、「フランスでは普通の店舗で成人誌を見かけることはない。まして子どもの目に入る場所に堂々と置いてあることなどあり得ない。日本の男性は女性の体を簡単に消費して良いと感じている印象を持つ」と首をかしげる。

2004年に成人誌をシール閉じに

今から約30年前の1989年、東京都生活文化局の調べによると、都内にあるコンビニの92.3%の店舗で成人誌が販売されていた。そこに大きな変化が起きたのは2004年、石原慎太郎知事の時代だ。都の青少年健全育成条例が改正され、審議会が「青少年に有害」とした「指定図書」を販売する際に従来の区分陳列に加え、雑誌の中身を見えなくするために包装を義務づけた。また、各出版社が自主的に「成人向け」と判断し、「成人マーク」をつけていた「表示図書」については、出版社に「包装するよう努めなければならない」という努力義務を課した。

この条例改正の動きを見て、コンビニ各社が加盟する「日本フランチャイズチェーン協会」が「日本雑誌協会」に成人誌の包装を要請した。当時、コンビニでの雑誌の売り上げは年間約5000億円にも達し、雑誌全体の売り上げの約半分を占めていた。このため、出版業界はコンビニ業界の要請を無視できなかった。

しかし、雑誌を包装してしまうと運搬の際に荷崩れしやすくなることから、出版社が自主的にシールで閉じることにした。どの雑誌をシール閉じするかは各出版社が判断し、コンビニに置いてもらうために約350誌のうち約100誌をシールで閉じた。そして、閉じる作業は一括して印刷会社や製本会社が行ったため、都内流通分だけというわけにもいかず、シール閉じされた成人誌が全国で販売されることになった。

「扱いは店のオーナー判断」と大手3社

それから10年以上経った現在、どのくらいのコンビニが成人誌を販売しているのか。大手3社の広報に取材したところ、以下のような回答だった。

セブン-イレブン 

  • 全国約2万店舗中の約3000店舗が成人誌を置いていない。
  • 成人誌を置くかどうかは、加盟店オーナーの判断に任せている。
  • 条例等の法令の方向性が決まれば、それを順守していく。

ファミリーマート

ファミリーマートが堺市で行っている、成人誌の表紙に緑色のフィルムをかけた陳列風景(堺市のホームページより)

  • 全国約1万7000店舗中の約1200店舗が成人誌を置いていない。
  • 成人誌を置くかどうかは、加盟店オーナーの判断に任せている。
  • 大阪府堺市と協力し、2016年3月から堺市内11店舗で成人誌をビニールカバーで覆っている。

ローソン

  • 全国約1万3000店舗中の約2500店舗が成人誌を置いていない。
  • 成人誌を置くかどうかは、加盟店オーナーの判断に任せている。
  • 成人誌は雑誌のなかでも単価が高く、店舗の売上に貢献しているところも多い。

業界4位のミニストップが販売中止を決断

日本のコンビニのほとんどはフランチャイズ方式を取っており、各店舗にオーナーがいる。大手3社はどこも、成人誌を置くかどうかはそのオーナー判断としている。そんな中、業界4位で流通大手「イオン」傘下のミニストップが、全国に約2300ある全店舗で成人誌の販売をやめた。きっかけは千葉市からの働きかけだった。

千葉市は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けたイメージ向上と女性や子どもへの配慮を目的とし、17年2月に市内の一部のコンビニで、不透明なフィルムを巻いて表紙の一部を隠す取り組みを試験的に行うことを発表した。しかし、「店の負担が増える」などの理由でコンビニ側が難色を示し、実施を断念する。そうした中で、ミニストップはこの千葉市の働きかけをきっかけに、表紙の一部を隠すのではなく、一気に販売中止という決断をすることになる。

ミニストップでは、以前から主に子ども連れの客から「子どもの目線に成人誌があると困る」「トイレに向かう時、ちょうど目に入る場所に置いてある」などの意見が寄せられていた。販売中止前は大手3社同様に、成人誌の取り扱いは加盟店オーナーの判断に任せていた。

女性スタッフからは「良かった」の声

ミニストップの広報担当者は、販売中止に至った理由をこう説明する。「成人誌の売上高は、すでに雑誌全体の中で1割を切っていました。快適かつ便利に誰もがご利用いただける店舗を目指す中で、どこかで判断を下さないといけないと思っているところに千葉市からの働きかけがあり、それがきっかけとなり販売中止の判断をしました」

成人誌の販売中止は、イオングループの本社がある千葉市で2017年12月に始まり、18年1月には全国で実施された。店舗からは、女性スタッフを中心に「良かった」との声が聞こえてきたという。店頭に陳列したりする際、目にしたり手にしたりすることに実は不快感や抵抗があったのだ。

「当初はいろいろなご意見が寄せられましたが、その8割は賛成で、1割は男性のお客さまを中心とした『販売を継続してほしい』というご要望でした。どこからが成人誌かという線引きに関する問い合わせもありましたが、弊社では売れていない商品を他の商品と入れ替えるという通常の作業と同様に、雑誌の1つのカテゴリー販売をやめたという認識です」(ミニストップ広報)

成人誌購入はネット使わない高齢者

そもそも、コンビニに置かれる雑誌はどのように決められているのか。ローソンで店長や店舗運営の指導をするスーパーバイザー、商品開発をするバイヤーとして22年間勤務した経験をもつ流通アナリストの渡辺広明氏はこう解説する。

「雑誌は販売委託商品のため、コンビニ各店舗で雑誌が売れ残れば、それは取次(出版社と店舗の間をつなぐ流通業者)に返品されます。取次は返品された雑誌を運ぶのにもコストがかかるため、返品が起きないように配本を調整しています。そのため人気のある雑誌は大手を中心に配本され、中小チェーンの店舗には月刊誌や週刊誌よりも比較的入れ替え頻度が低い成人誌が配本されやすくなります。一方で、札幌のすすきのや福岡の中洲といった歓楽街のコンビニは風俗情報誌の品揃えが豊富で、この手の情報誌だけで月30万円の売り上げがある店舗もあります」

しかし、こうした一部の店舗を除いては、成人誌はほとんど売れなくなっている。

「成人誌の単価は400〜800円ですが、普通の規模のコンビニでは2日に1冊程度しか売れていません。もはや成人誌以上の内容が、ネットを使えば無料で見られる時代ですから、購入するのはネットを使わない高齢者だけです。成人誌だけでなく雑誌自体の売り上げも、この10年で6割から7割も減少しています」(渡辺氏)

コンビニから雑誌が消える日も?

実際、都内の大手コンビニの店舗に入ると、雑誌売り場自体がないところもある。セブン−イレブンでは、昨年9月から雑誌の取り置きサービスを行っており、店舗やサイトで定期購読を申し込むと店頭で受け取ることができる。

ファミリーマートは出版社の「ゴマブックス」と組んで、人気のある電子書籍を「ファミマセレクトBOOKS」として店頭で販売している。ネットの時代に合わせて、コンビニでの雑誌や本の売り方も変化してきている。韓国では日本のコンビニに当たる店舗で、すでに雑誌自体を置いていないという。日本のコンビニから、成人誌はおろか雑誌が消える日もそう遠くはないのかもしれない。

取材・文:桑原 利佳(POWER NEWS)

バナー写真:都内のコンビニエンスストアの雑誌売り場。成人誌の区画はつい立てで区切られ、「成人向け」と明示されている(nippon.com編集部撮影)

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