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悪質タックル問題と「ブラック」部活動指導
名ばかりの「自主性」がもたらした悲劇から考える

内田 良【Profile】

[2018.07.18]

課外の部活動は「生徒の自主的・自発的な参加」に基づくと学習指導要領に定められている。しかし、実際には「自主性を強要」し、自分で考え判断する機会を奪っているのではないだろうか? 中高時代の部活動の在り方にさかのぼって、日大アメフット部の悪質タックル問題を考える。

「1プレー目でつぶせ」

大学スポーツとして決してメジャーとは言えないアメリカンフットボールが、これほど注目されたことがあっただろうか。2018年5月6日に行われた日本大学と関西学院大学の定期戦で、日大のディフェンスライン(DL)の選手が、試合の流れとは無関係に、関学のクォーターバック(QB)に背後からタックルして、けがを負わせた事件は、連日、マスメディアに大きく取り上げられた。

この事件では、タックルの悪質性以上に、問題が起きた背景や、その後の関係者の対応が注目を集めた。とりわけ、日大DLが、監督やコーチから関学QBを「1プレー目でつぶせ」と指示されていたことを巡って、監督とコーチは「けがをさせるような意図で言ったのではない」と主張し、これが大きな非難を浴びることとなった。

その詳細は他に譲るとして、この記事では、事件の背景にある運動部活動やスポーツ指導の在り方について考えてみたい。

「自分で判断できなかった」

今回の事件で人々の記憶に最も残ったのは、日大DLの会見であろう。20歳になったばかりの学生が、実名と顔を出して会見に臨んだ。そして、相手を負傷させる意図をもって関学QBにタックルしたことを、自ら認めた。

「プレー中の出来事だ」「勢いが止まらなかった」と言い訳することも可能だっただろう。だがそうした言い訳はなく、意図的にタックルしたのだと、刑事責任が問われることになっても不思議ではないほどに、正直な告白であった。確たる信念をもって、発言しているように見えた。

その信念は、会見時に読み上げた陳述書の最後に、こう示されている。

本件は、たとえ監督やコーチに指示されたとしても、私自身が「やらない」という判断をできずに、指示に従って反則行為をしてしまったことが原因であり、その結果、相手選手に卑劣な行為でけがを負わせてしまったことについて、退場になった後から今まで思い悩み、反省してきました。そして、真実を明らかにすることが償いの第一歩だとして、決意して、この陳述書を書きました。

「つぶせ」という監督やコーチからの指示の問題性に気付くことができなかった。そして、指示どおりに危険なタックルを入れてしまった。自分で判断できなかったことが最大の問題である、と日大DLは謝罪した。

「恐怖の下では、教育は成り立たない」

日大DLの会見から4日後に開かれた関西学院大学側の会見は、日大DLの苦悩をよく理解しているかのようであった。記者から学生スポーツの在り方を問われた際に、関西学院大学アメフット部・鳥内秀晃監督はこう述べた。

大学スポーツですけど、もともとスポーツいうのは自分らで考えてやるもんで、その中から人格が形成されていく (略) 恐怖の下、体罰の下でやって教育が成り立つかといえば、あり得ないと思います。これ、いろんな競技が今ありますけど、いまだにそういう体質でやっておられるところがあるんであれば、今こそ改革するチャンスではないかなと。これは小学校、中学校、高校と、みんな同じや思いますけど。

監督におびえながらその指示通りに動くということではなく、自分の力で一つ一つ判断していく。鳥内監督は、小学校から大学まで、スポーツ指導の意義はそこにあると考えている。

名ばかりの「自主性」

鳥内監督が、「小学校、中学校、高校と、みんな同じや思います」と述べたことは、とても意義深い。

大学もまた教育機関であり小中高と同じように、部活動指導は立派な教育活動である。果たして学校の部活動は、部員自らが考えるプロセスを重視できているだろうか。

実は中学校・高校の部活動は、そもそも「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」ものとして、国の学習指導要領に定められている。規定上はあくまで、自主性あるいは自発性を直接的に具現化する機会のはずである。しかし現実には、部活動への参加が強制されていることも多く、自主的なものであるということを知らない生徒さえいる。

スポーツ庁が2017年に実施した「運動部活動等に関する実態調査」によると、公立中学校では、全体の32.5%において、生徒全員の入部制をとっている。全国の3分の1の中学校は、部活動を生徒に強制しているのが現実で、「自主性」とは名ばかりである。

また、強制かどうかに関係なく、おおよそ9割の中高生が部活動に参加している。高校で運動部に所属していた生徒の6~7割が、大学に入学する際に運動部から離脱するという実態を考えると、強制はなくとも半強制という現実があると考えられる(拙著『ブラック部活動』)。

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  • [2018.07.18]

名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授。1976年生まれ。博士(教育学)。専門は,教育社会学。関心テーマは,学校リスク(スポーツ事故,組体操事故,転落事故,「体罰」,自殺,2分の1成人式,教員の部活動負担など)。ヤフーオーサーアワード2015受賞。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社),『教育という病』(光文社新書),『柔道事故』(河出書房新社),『教師のブラック残業』(学陽書房,共編著)など。

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