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シリーズ ニッポンおもしろ博物館
日本銀行で見るお金の歴史:貨幣博物館

ジュリアン・ライオール【Profile】

[2017.12.08]

「お金」は、永遠のテーマの1つだ。東京・日本橋本石町にある日本銀行の貨幣博物館には、日本や東アジアで使われていた歴史的に重要な貨幣、日銀がこれまで発行した紙幣が展示されている。静かで広い館内には、大人や子供向けの体験コーナーもあり、お金の歴史を見て、触れて、楽しく学ぶことができる。

布地からまばゆい黄金の大判、米俵から銀貨まで、日本の長い歴史で、お金はさまざまな形に姿を変えてきた。現金からクレジットカード、電子マネーへの移行が進む現代社会において、貨幣博物館は「形のあるお金」の歴史を記録にとどめる大切な役割を担っている。

日銀・金融研究所の一部である貨幣博物館は、日銀創立100周年を記念に設立され、3年後の1985年に開館した。日本貨幣の歴史的、文化的な資料を収集・保存し、調査研究を進めるとともに一般に広く公開している。

博物館の展示物の中核となっているのは、貨幣学者で収集家の田中啓文(1884–1956)が数十年にわたって収集した「銭幣(せんぺい)館コレクション」だ。田中は、日本だけでなく東アジア、特に中国の歴史的価値のある貨幣を収集していた。それらは「銭幣館」に保管されていたが、第二次世界大戦末期の1944年、戦火を避けて日銀に寄贈された。

広くて見やすい館内

日銀はかつての金貨鋳造所

貨幣博物館は、東京・日本橋本石町の日銀敷地内にある。ここは江戸時代(1603–1867)に「金座」、つまり金貨の鋳造所があった場所で、幕末まで金貨が造られていた。そう遠くないところには「銀座」がある。1612年に建てられた銀貨鋳造所が地名の由来だが、今では高級ショッピング街の代名詞となっている。

日本で初めて独自の硬貨が発行されたのは7世紀後半だった。歴史書には、683年に制定された法令によって銀銭が禁止され、代わりに銅銭の使用が義務付けられたと記されている。その銅銭が富本銭(ふほんせん)と考えられている。

7世紀後半に日本で鋳造されていた初めての硬貨・富本銭(複製)

日本初の銅銭・富本銭は日本で鋳造されていたが、そのモデルとなったのは半両銭と呼ばれる丸い形に四角い穴(円形方孔)の中国で作られる硬貨だった。半両銭の起源は紀元前4世紀までさかのぼり、その後円形方孔の銭貨は、日本を含む東アジアでも徐々に流通するようになった。初期の日本の硬貨も四角い穴が開いていた。

中国・明王朝時代(1368–1644)の硬貨

銅銭・和同開珎(わどうかいちん)が鋳造されたのは8世紀初頭。古代日本では13種類の銅貨が発行されていた。しかしその後、銅の生産量が減少するにつれて銭貨が徐々に小さくなり、質も悪くなっていった。小さくなった硬貨は徐々に使われなくなり、絹やコメなどを通じた物々交換に取って替わられていった。

12世紀半ばごろになると中国から流入する銭貨の数が急増し、その普及とともに15、16世紀になると日本国内でも銭貨が鋳造されるようになった。

展示物の中で特に興味をそそられるのは、高さ約60センチメートルのつぼ状の土器だ。宮崎県で発見されたこのつぼには、約7700枚の中国の硬貨が入っていた。誰が埋めたのか、なぜ掘り返さなかったのか、いまだに謎だ。

1603年に始まり、264年間続いた江戸時代には、幕府が金貨、銀貨、銭貨(銅や鉄の硬貨)を発行していた。一方、各領地でもそれぞれの藩が独自の紙幣「藩札」を発行し、全国で200種類もの藩札が流通していた。

日本の各領地では約8割の藩が独自の紙幣(藩札)を発行していた。博物館には各地でどのような藩札が発行されていたのかを示すマップが展示されている

硬貨から紙幣へ

貨幣博物館には、備蓄用の金の分銅や、大判・小判も展示されている。大判は10両(165グラム)であるが、小判7枚分程度の価値があったとされ、男性の手のひらより大きい。また16世紀から17世紀にかけて作られた刻印のある金の分銅も展示されていて、金の含有率はいずれも約95%、およそ375グラムだ。

体験コーナーでは、大判金貨を持ち上げて重さを体感できる

19世紀後半、開国によって海外との貿易が始まると、近代的な貨幣制度を確立する必要性が高まっていった。1871年、明治政府によって国の通貨単位として円が制定され、硬貨と紙幣の両方が流通されることになった。1882年10月には各地で運営されていた民間銀行を結びつける目的で日本銀行が創設され、その3年後には日銀が唯一の発券銀行となり、通貨の価値を安定させた。

日銀が最初に発行した10円銀行券には富の神「大黒天」が描かれている

これまでに発行した53種類の紙幣

貨幣博物館には、日銀がこれまで発行した全ての紙幣が展示されている。また昔の硬貨の鋳造方法や、藩札の偽造を防ぐために当時用いられていたさまざまな偽造防止技術も紹介されている。

各藩が発行していた藩札には透かしのような高度な偽造防止策が施されていた

博物館の体験コーナーでは、千両箱や、1万円札で1億円分の札束を持ち上げてその重みを体感できる。

1億円の重み(約10キログラム)を感じてみよう。ただし持ち出しは厳禁!

日本銀行貨幣博物館

  • 所在地:〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町1-3-1
  • 電話:03-3277-3037
  • ホームページ:https://www.imes.boj.or.jp/cm/
  • 開館時間:火曜日~日曜日の午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで);祝・休日の月曜日は開館;年末年始(12月29日~1月4日)は休館
  • 入館料:無料

 

原文=英語

バナー写真:展示物には日本銀行がこれまで発行した全ての紙幣も含まれている

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  • [2017.12.08]

英紙デーリー・テレグラフ特派員で、日本と韓国を担当。ウルバーハンプトン大学、セント・ランカシャー大学院でジャーナリズムの学位を習得。ロンドン出身。1992年来日、現在横浜在住。サウス・チャイナ・モーニング・ポストなど他紙にもフリーランスとして執筆。

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