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シリーズ 日本の刑事司法を問う
更生はできているのか?:日本の刑務所の現状と問題点
[2018.09.05]

日本の受刑者数は2016年末に5万人を切った。1952年以降、2006年が最多で約7万人だったが、その後は減少を続けている。「再犯が多い」と指摘されるが、その実態はどうなのか。日本の刑務所が抱える課題は何か。「NPO法人監獄人権センター」の事務局長を務める弁護士の田鎖麻衣子氏に聞いた。

田鎖 麻衣子

田鎖 麻衣子TAGUSARI Maiko弁護士、NPO法人「監獄人権センター」事務局長、一橋大学法学研究科非常勤講師。東京大学法学部卒業。95年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2016年一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了(法学博士)。主な著作に「孤立する日本の死刑」(デイビッド・ジョンソンと共著、現代人文社)

法の趣旨通りに運用されていない処遇法

——刑務所の問題には、どういうきっかけでかかわるようになったのですか。

大学1年生の時に、社会問題などをリサーチするサークルに入り、当時問題になっていた拘禁二法案などを取り上げることになりました。そんな中で、手に取ったのが『全国監獄実態』(緑風出版)という本でした。受刑者が革手錠で縛られて犬食い状態で食事をしているという記述などがあり、これが人間のいるところなのかと衝撃を受けました。それが刑務所問題にかかわるきっかけとなり、1995年3月の監獄人権センターの立ち上げに参加し、今年で24年目になりました。

田鎖麻衣子弁護士

——日本の刑務所(刑事施設)はどのような歴史的経緯をたどってきたのか、教えてください。2006年に旧監獄法は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(処遇法)に改正されましたが、どう変わりましたか。

監獄法は明治時代に制定され、その後100年近く生き延びて来ました。新しい処遇法ができて、受刑者の権利・義務が、それ以前に比べると明確になりました。

刑務所の職員からは「自分たちの待遇は変わらないのに受刑者の権利ばかりが強調されるようになった」と、不満の声が多く上がったほどです。しかし、刑務所が処遇法の趣旨通りに運用されてきたかというと、そうはなっていないのが実情です。

確かに新法の施行直後、面会、手紙などの外部交通や物品の差し入れの実務はドラスティックに変わって交流のできる相手方が広がり、受刑者から喜びの声が聞かれました。でも、暴力団関係者などが新たな制度を悪用する事例も現れたことから、すぐに締め付けが厳しくなった。「適正な外部交通が受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものである」と法が掲げているのに、制限する動きがどんどん出て来ました。受刑者が起こした訴訟で、保守的な裁判所ですら「制限は行き過ぎだ」という判断を出しているものもあります。

施設長が代わればガラッと変わる体質

——処遇法で受刑者の待遇は良くなりましたか。

一概には言い切れません。確かに法律が変わったことで、各施設の施設長の裁量でできることが増えました。たとえば、官民が共同で運営するPFI型の刑務所では、盲導犬の育成など先進的なプログラムや、外部の専門協力者らと一緒に再犯防止プログラムを取り入れるなど、さまざまな試みがされています。

ただ、日本の刑務所は1、2カ所の施設を見て、「こんな感じ」とは言いにくい。施設ごとの違いだけでなく、同じ施設でも施設長が代わればガラッと体質が変わってしまうなど、把握しづらいのが実情です。

——確かに、日本の刑務所は施設によってルールが違いますね。

刑務所としては、受刑者を管理するための裁量の余地を出来る限り広く残しておきたい。また、監獄法時代はほとんど受刑者の権利がゼロに近かったので、刑務所としては、受刑者の権利があまりに広く認められるようになり、むしろ適切に制限しなければならない、という意識もあるのだと思います。

それに、職員が少ない中で事故や不祥事のリスクをゼロにするのが刑務所当局の目標ですが、犯罪傾向が進んでいる受刑者を収容する施設かどうかによって、ニーズも違います。ただ、全体的な傾向として、できる限り規則を細かく制定し、規則違反がないかどうか受刑者を監視して、細かく把握したがる。だから面会には原則職員が立ち会ってメモをとり、手紙は検閲するのです。

諸外国はもう少し割り切っていて、一般の受刑者は大部屋のロビーのようなところに何の壁もなくテーブルや椅子がいくつも並べてあり、そこで面会する。リスクが高い人は個室で対応したりして、その受刑者に合わせて段階的に対応しています。

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