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「東京ゲームショウ」30年の軌跡:時代を映して進化する祭典

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30年目の節目となる「東京ゲームショウ2026」が、9月17日から21日まで千葉市の幕張メッセで開催される。このアジアで最も歴史あるゲームの祭典の歴史を振り返り、ゲームハードの世代交代やeスポーツの普及など、ゲームシーンの変遷を展望する。

ゲームを文化産業に

世界最大規模のゲームの祭典「東京ゲームショウ(TGS)」が始まったのは1996年8月。次世代ハードが繚乱(りょうらん)したころでもあり、2日間で10万人超が押し寄せ大盛況となった。以来、コロナ禍でオンライン開催となった2020年と21年を除き、来場者数が10万人を下回ることはなく、18年度は4日間で29万8690人を動員。出展社数も87社から増え続け、26年度は過去最多の1138社が集まった。

TGSは単なる見本市にとどまらない。主催するコンピュータエンターテインメント協会(CESA、東京都新宿区)の常任理事・増田努さんは「ゲームを文化的価値のある一大産業に発展させることを目的としていた」と説明する。

初開催に先立つ1995年に設立されたCESAは、加盟するゲーム関連企業からのメンバーも在籍。増田さん自身もカプコンで長年マーケティング担当を務め、出展側としてもTGSに関わってきた。ゲーム文化の発展と共に歩み続けてきたTGSの30年を、増田さんの言葉と共に振り返っていこう。

TGSを統括する増田さん。カプコンでは『バイオハザード』『モンスターハンター』などのプロモーションを担当した
TGSを統括する増田さん。カプコンでは『バイオハザード』『モンスターハンター』などのプロモーションを担当した(ニッポンドットコム編集部撮影)

家庭用ハードが覇を争う時代

初開催した1996年当時、日本の家庭用ゲームシーンは任天堂の「スーパーファミコン(SFC)」の独壇場から、高画質な3Dグラフィックを表現できる次世代機への移行期にあった。SFCの後継機「NINTENDO64」、光ディスクを媒体とする「セガサターン」やソニーの「プレイステーション(初代=PS1)」といったハードが市場競争を展開し、ユーザー層を幅広い年代に広げていた。「ビッグタイトルは国内だけで売上が百万本を超えていた」(増田さん)という時代だ。

記念すべき第1回の目玉が、翌年1月に発売を控えた人気シリーズ最新作『ファイナルファンタジーVII(FF7)』の体験版ディスクの限定配布だった。前作のSFCからPS1への参入、3DCGの全面採用などが開催前から話題となり、ブースには長蛇の列ができた。期待感を高めた『FF7』はリリースと同時に大ヒット。さらに、日本製ロールプレイング・ゲーム未開の地だった欧米のユーザーも圧倒的な映像美で魅了し、全世界売上は1000万本を突破した。

初回は成功裏に終わり、TGSのPR効果と、「注目タイトルをいち早く楽しめる」という醍醐味を強く印象付けた。97年4月の第2回では、現在もCESAが主催する「日本ゲーム大賞」の前身「CESA大賞'96」を初開催(作品賞は『サクラ大戦』)。以降は春と秋の年2回開催となって、ゲーム業界での存在感を高めた。

第1回の会場風景(CESA提供)
第1回の会場風景(CESA提供)

2000年代に入るとハードはさらに世代交代し、描画スペックを飛躍的に向上させた「プレイステーション 2」や「ニンテンドーゲームキューブ」、マイクロソフト「Xbox」などが続々と登場する。ところが、年間の発売タイトル数はミレニアム前をピークに減少へ転じた。ハードの性能向上に伴ってソフト開発は長期化し、コストも高騰したため、業界全体の発売ペースが鈍化したのだ。

当時、出展社側にいた増田さんは「現実問題として、年に2回も新作のデモ版制作などイベントの準備をすることは困難だった」と振り返る。出展各社の打ち出したい内容を明確にすることで、TGSのテーマをより強固にしていこうと、02年からは年1回、年末年始商戦に直結する秋開催へと集約する。

TGS2001秋でXboxとPS2向け新作ゲームのデモを見学する来場者(ロイター)
TGS2001秋でXboxとPS2向け新作ゲームのデモを見学する来場者(ロイター)

モバイル、PCへのシフト

欧米ではパソコン(PC)の普及が進んだ1990年代からデジタル配信が普及する2000年代にかけて、PCゲームの存在感が高まっていったが、日本は2000年代後半まで家庭用ゲーム機が市場の9割を占める「専用ハード王国」だった。据え置き機と並行して、携帯ゲーム機の需要も高まった。04年の「ニンテンドーDS」「プレイステーションポータブル(PSP)」以後は無線通信機能が搭載され、PS2の人気作『モンスターハンター』がPSPに移植されると、友人同士が集まっての協力プレイがブームになった。

しかし、2010年代にスマートフォンが爆発的に普及して、ゲームのトレンドは一変。好きなタイトルをアプリでダウンロードして、いつでもどこでも遊べるモバイルゲームが主役となる。

この時期、ソフト開発においては汎用ゲームエンジンが一般化して、異なるハード向けの出力が容易になり、PS4などのハード側もPCに近い設計を採用。ゲームソフトの形態は、スマホやPCを含む複数のハードに対応する「マルチプラットホーム」へとシフトしていく。

日常の娯楽としてのゲーム文化が発展する一方、PCでのオンライン対戦を主軸とするeスポーツのジャンルで日本は後れを取ってきた。TGSでもeスポーツ普及のため、競技大会を開催するなど、プロゲーマーとファンの裾野を広げている。

「人気配信者の実況で盛り上がるといった、鑑賞する楽しみにもフォーカスしてきました。今年の愛知・名古屋アジア大会で正式競技になるなど、eスポーツへの注目は着実に高まっています」(増田さん)

プロによる競技イベント「e-Sports X」はTGSの目玉イベントに成長した(CESA提供)
プロによる競技イベント「e-Sports X」はTGSの目玉に成長した(CESA提供)

オンラインも駆使して国際的なハブに

新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年、初の完全オンライン開催としたことは、TGSにとって大きな転機となる。それまで出展社が独自に映像を配信することはあったが、この年から公式番組が始まり、リアルイベントとオンラインのハイブリッド開催が恒例となった。

「TGSは会場が千葉のため、関東圏からの来場者が多くを占めています。海外をはじめ遠方の方もリアルタイムで参加しやすい環境が作れたことは、けがの功名でした」(増田さん)

オンラインのメリットは大きいが、やはり世界のゲームファンが集まる年に一度のお祭り。熱気に包まれながら、新発売のゲームソフトや最先端のハードに触れ、最高の画質と音質で試遊を満喫できるのが魅力だ。

「出展社にとっても、ユーザーの感想や意見を直接聞き、開発現場にフィードバックすることはモチベーションアップや品質改善につながる。イベントステージも観客の反応がじかに伝わると、盛り上がりが違います」(増田さん)

近年はゲーム環境への関心の高まりを受け、ゲーミングチェアや周辺機器のコーナーも充実。2025年に設けたオールアクセシビリティコーナーでは、手が不自由でもプレイできる脳波コントーローラーが話題を集めた。技術の発展と共に出展社は増え、新しいジャンルのコーナーも生まれていく。

TGSはプレーヤーだけでなく、ゲーム人材の裾野も広げてきた。早い時期から専門学校や大学などの教育機関や、インディーゲーム開発者のコーナーを設けている。

クリエイターの種をまく試みには、CESAが設置している「ファミリーゲームパーク」もある。担当する河村健太郎さんは「中学生以下と大人の同伴者は無料で楽しめるゾーンです。子どもたちにプログラミングやサウンドクリエイト体験などを通じて、ゲームの仕事に興味を持ってもらいたい」と説明する。

専用コーナーやコンテストでインディーゲームにも焦点を当てる(CESA提供)
専用コーナーやコンテストでインディーゲームにも焦点を当てる(CESA提供)

人材育成・研究機関が集まるゲームアカデミーコーナー(CESA提供)
人材育成・研究機関が集まるゲームアカデミーコーナー(CESA提供)

プログラミングが必修科目の現代っ子と、ゲーム世代の親が一緒に遊んで学べるファミリーゲームパーク(CESA提供)
プログラミングが必修科目の現代っ子と、ゲーム世代の親が一緒に遊んで学べるファミリーゲームパーク(CESA提供)

現在、日本の主要ゲームメーカーの売り上げは海外市場が7〜8割。TGSもアジア圏を中心に海外出展社が過半数を占め、その役割は国内向けの新作のお披露目から、世界中のゲーム文化の発信へシフトしてきた。30年前と比べて会場は多国籍化しつつも、そこに集まる誰もがゲーム愛を共有しているという雰囲気は変わらない。

「年齢も出身地もさまざまな方が一緒に楽しんでいる姿を見ると、人と人を結びつけるゲームの力を実感します。海外のゲームファンには配信だけでなく、ぜひ会場へ遊びに来ていただきたい」(増田さん)

コスプレイヤーも会場を盛り上げる(Stanislav Kogiku / SOPA Images via Reuters Connect)
コスプレイヤーも会場を盛り上げる(Stanislav Kogiku / SOPA Images via Reuters Connect)

CESAの増田さんと河村さん(右)。2人ともゲーム好きが高じて業界入りしたそうだ
CESAの増田さんと河村さん(右)。2人ともゲーム好きが高じて業界入りしたそうだ(ニッポンドットコム編集部撮影)

参照:TGS30周年記念特設サイト

取材・文=吉村 慎一、アラストゥルエイ・チャビ

バナー写真:海外出展が初めて過半数を占めたTGS2024会場風景(CFOTO via Reuters Connect)

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