『亀戸天神境内』:浮世写真家 喜千也の「名所江戸百景」第1回

記念すべき連載初回は、藤の名所として名高い「亀戸天神社」を紹介。歌川広重の名所江戸百景では、57景「亀戸天神境内」となる。

下町情緒が楽しめる学問の神様で藤棚をめでる

名所江戸百景の中では有名な絵である。

亀戸天神は、江戸中を焼き尽くした明暦の大火(1657年)の復興事業の一環として将軍家綱が社地を寄進したのが始まりだそう。太鼓橋の上から、境内の藤棚を一望できる名所として、広重の時代以前から有名だったようだ。

広重は太鼓橋を恐る恐る降りる母子を描いているが、その様子がなんともほほ笑ましい。

2013年、私が名所江戸百景を意識して撮った、最初の写真が亀戸天神である。後で気がついたのだが、太鼓橋には男橋、女橋と2つある。その時に撮影したのは、実は広重が描いたのとは違う女橋だった。そこで、2016年の春に男橋で撮り直したのが、この写真である。

藤の花が咲く時期の亀戸天神は大層な人出で、太鼓橋を撮影すると多くの見物客が写ってしまう。そのため、早朝に伺って撮影した。絵とほぼ同じ高さに橋を入れ、水面も同じ高さにできたので、広重の構図にかなり近いものになった。

●スポット情報
亀戸天神社

菅原道真を祭る亀戸天神社は、下町にある学問の神様として親しまれている。特に「東京一の藤の名所」として知られ、4月下旬から子供の日(55日)頃まで開催される「藤まつり」は多くの見物客でにぎわう。大鳥居をくぐり境内に入ると、心字池(しんじいけ)に「男橋」、平らな「平橋」、「女橋」と3つの橋が架かる。それぞれが「過去」、「現在」、「未来」を象徴しており、それらを渡ることで身を清めてから、神前に向かうという構造になっている。

  • 住所:東京都江東区亀戸3-6-1
  • TEL : 03-3681-0010
  • アクセス:JR総武線「亀戸駅」より徒歩15分、JR総武線・東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」より徒歩15分

浮世写真家 喜千也「名所江戸百景」――広重目線で眺めた東京の今
「名所江戸百景」は、ゴッホやモネなどに影響を与たことで知られる浮世絵師・歌川広重(うたがわ・ひろしげ)の傑作シリーズ。 安政3年(1856年)から5年にかけて、最晩年の広重が四季折々の江戸の風景を描いた。大胆な構図、高所からの見下ろしたような鳥瞰(ちょうかん)、鮮やかな色彩などを用いて生み出された独創的な絵は、世界的に高い評価を得ている。その名所の数々を、浮世絵と同じ場所、同じ季節、同じアングルで、現代の東京として切り取ろうと試みているのが、浮世写真家を名乗る喜千也氏。この連載では、彼のアート作品と古地図の知識、江戸雑学によって、東京と江戸の名所を巡って行く。

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