カメラ片手に古都・鎌倉さんぽ

爛漫!鎌倉の桜巡り:古寺社で憩う花見ウオーキング

環境・自然・生物 文化

日本は国花を定めていないが、候補を挙げるとすれば筆頭は「桜」に違いない。自然豊かな鎌倉(神奈川県)を薄紅色に染め上げる、春爛漫(らんまん)の絶景を古都写真家が紹介する。

鎌倉の花見は歩いて楽しむ

春の訪れを知らせる桜の開花は、日本人なら誰もが待ち遠しいもの。花見が楽しみなのはもちろんのこと、卒業や入学、就職など人生の節目を鮮やかに彩ってくれる。

年によって多少の違いはあるが、鎌倉ではおおむね3月下旬から4月上旬までが開花シーズン。花見といえば敷物を広げて宴会をするのが一般的だが、鎌倉の街中ではあまり見ない風習である。寺社を巡って桜をめでるのが“鎌倉流”なので、1日で散策できるお薦めの花見コースを案内したい。

北鎌倉駅の北東に立つ六国見山(ろっこくけんざん) 写真=原田寛
北鎌倉駅の北東に立つ六国見山(ろっこくけんざん) 写真=原田寛

まずはJR北鎌倉駅をスタート。県道21号を南東へ進むと、道を挟む丘陵で桜が咲き競う。中でも白や淡紅色の花を付けるヤマザクラは見事で、「鎌倉市の木」に指定されている。

1キロほど歩くと、やがて左側に建長寺が見えてくる。鎌倉時代、禅寺を格付けした「五山」の最高位とされた名刹(めいさつ)である。総門から三門へと続く参道は、鎌倉有数の桜並木になっていて実に壮観。三門をくぐってからも、あちこちで多様な品種を目にできる。

建長寺三門前の桜並木 写真=原田寛
建長寺三門前の桜並木 写真=原田寛

さらに巨福呂坂(こぶくろざか)を越えれば、鎌倉の中心地・鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)に出る。正面入り口の三ノ鳥居をくぐった右手にある源氏池は、ソメイヨシノに囲まれている。ここでは満開の花に加え、「散り桜」にも注目。風に吹かれて舞い落ちる「桜吹雪」や、花びらが水面に浮かぶ「花筏(はないかだ)」も多くの人の琴線に触れるだろう。

花びらが浮かぶ源氏池 写真=原田寛
花びらが浮かぶ源氏池 写真=原田寛

春の盛りに花景色が移ろう

鶴岡八幡宮の参詣道「段葛(だんかづら)」は、約180本の桜並木。薄紅色のトンネルをくぐり抜けたら鎌倉駅から西鎌倉エリアの長谷寺へ。江ノ電に乗れば最寄りの長谷駅まで5分、徒歩でも30分ほどで着く。

鎌倉駅前と鶴岡八幡宮を結ぶ全長500メートルの「段葛(だんかづら)」 写真=原田寛
鎌倉駅前と鶴岡八幡宮を結ぶ全長500メートルの「段葛」 写真=原田寛

この地区では高徳院の鎌倉大仏(トップ写真)が有名だが、長谷寺の十一面観世音菩薩(ぼさつ)立像も日本最大級の木像仏として名高い。9メートル超の本尊を安置する観音堂(本堂)の脇には、大きな桜の木が立つ。4月8日にはその下で、釈迦(しゃか)の誕生日を祝う「花まつり(灌仏会=かんぶつえ)」が開かれる。

長谷寺の本堂を彩る桜。青空に映えてまばゆいほど美しい 写真=原田寛
長谷寺の本堂を彩る桜。青空に映えてまばゆいほど美しい 写真=原田寛

日が傾く前に鎌倉駅に戻り、東口から徒歩5分ほどの妙本寺を訪ねよう。日蓮(にちれん)宗最古の寺で、ソメイヨシノが周辺より早めに開花することでも知られる。満開を過ぎた頃も見逃せない。散り桜が境内を彩り、その背後で濃いピンク色のカイドウが花開くのだ。

妙本寺祖師堂前。散りゆく桜の後を追ってカイドウが見頃を迎える 写真=原田寛
妙本寺祖師堂前。散りゆく桜の後を追ってカイドウが見頃を迎える 写真=原田寛

桜巡りの締めくくりは、駅側に近接する本覚寺へ。鎌倉でいち早く開花するシダレザクラが人気で、夕日を背にした姿はあかね空に映えて魅力的。さらに暗くなると灯籠がともり、夜桜も楽しめる。このシダレザクラはひと足早く見頃を終えるものの、その隣のヤエザクラが暮春まで咲いてもてなしてくれるだろう。

本覚寺シダレザクラの夕景 写真=原田寛
本覚寺シダレザクラの夕景 写真=原田寛

写真・文=原田寛

バナー写真:高徳院 鎌倉大仏 写真=原田寛

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