知らずに乗れない自転車の「新」交通ルール:一時不停止、小回り右折、傘差し運転も反則金!
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自転車は歩行者の仲間だった!?
日本の自転車保有率はおよそ2人に1台、利用率は12%でオランダ、ドイツ、デンマークなど欧州諸国に次ぐ高さを誇る(※1)。しかし、自転車先進国から訪日した人は、都市部の交通実態に驚くかもしれない。自転車が歩道に乗り上げ、歩行者の間を縫うように走る光景が珍しくないからだ。道路交通法では、自動車やオートバイと同じ「車両」の一種だが、歩行者との“すみ分け”があいまいなのである。
自転車の歩道通行が道交法改正で認められたのは、交通事故の死者が年間1万6765人と史上最悪を記録した1970年のこと。「急速なモータリゼーションの中で事故が激増して“交通戦争”と呼ばれた時期。自転車の安全を守るための特例措置でした」と、自転車の交通ルールに詳しい弁護士の本田聡さんは説明する。
近年は事故数が徐々に減ってきて、2025年には28万7023件、死者は過去最少の2547人にとどまっている。一方で、自転車関連事故の割合は4分の1近くに高まっており、特に対歩行者事故は増加傾向。自転車関連死亡・重傷事故のうち、4分の3で自転車の法令違反が認められる(※2)。
警察は従来、自転車の悪質・危険な違反には「赤切符(告知票)」を交付してきた。刑事手続きを受け、裁判で有罪になれば前科がつく仕組みだ。軽微な違反なら指導警告で済むことも多かったが、26年4月、交通ルールへの意識を高めるため「青切符(交通反則通告書)」制度を導入。反則金を納めれば前科はつかないものの、無視すれば刑事手続きへと移行する。
道交法が定める自転車の違反行為は113項目に上る。事故に直結する「しゃ断踏切立ち入り」(反則金7000円)、「信号無視」(同6000円)、「整備不良」(同5000円)などは言うまでもないが、街中でよく見かける行為も含まれる。たとえば、買い物袋をハンドルにぶら下げたり、片手で傘を差したり、ヘッドホンを使用するなど周囲の音が聞きづらい状態で運転すると「公安委員会遵守事項違反」(同5000円)または「安全運転義務違反」(同6000円)に該当する。
青切符の対象は16歳以上の違反者で、外国人も含まれる。「日本は道路交通に関するウィーン条約に未加盟で、国際基準とは異なるルールや標識もある」と本田さんは指摘する。思わぬ違反を犯さないよう、要注意ポイントを解説したい。

一方通行の出口に立つ「車両進入禁止」の標識。ほとんどが「自転車を除く」と補助標識が付くものの、外国人には分かりづらいだろう

上からドイツ、ポーランド、イタリアの標識。自転車が通行できる旨が伝わりやすい(フォトAC)
歩道通行の特例に要注意
まず大原則は「車道走行」と「左側通行」で、自動車と同じ進行方向に、車道の一番左側を走る。
歩道を通行できるのは「普通自転車歩道通行可」の標識がある場所や、安全上やむを得ない場合に限られ、車道側を徐行運転(概ね時速6~8キロ以下)するのが決まり。歩行者優先が前提であり、混み合うからといって「どけ!」とばかりにベルを鳴らせば違反になる(同3000円)。横断歩道も同様で、自転車を押して歩くのが安全だ。

青地に自転車マークの標識、または「歩行者専用」標識に「自転車を除く」「自転車は通行可」とただし書きがあれば歩道を通行できる
安全確認すれば交差点のノンストップ通過を認める国もあるが、日本は「止まれ」標識があれば車輪を完全停止するルール。自転車事故は出会い頭が5割を占めるため、「一時不停止」は厳しく取り締まられる(同5000円)。

道路標識で最も多い「止まれ」(イラストAC)。外国人に配慮して英語併記が増えている。停止線があればその手前で一時停止を
車道と横断歩道で信号が青になるタイミングをずらす「歩車分離式」では、歩道を進行していれば歩行者用信号に、車道を進行していれば車両用信号に従う。車道進行中、歩行者につられて一緒に渡ると信号無視になるので要注意。

車道走行中は車両用信号が青の時に通行。左折時には巻き込みに注意(イラスト=さとうただし)

約5%を占める歩車分離式信号(フォトAC)。スクランブル式もその一種で、横断歩道を斜めに渡るなら自転車を降りること
「二段階右折」の徹底も肝に銘じたい。交差点を直進して渡り切った後、右に向きを変え、改めて前方の信号が青になるまで待って進むというルール。あらかじめ車道の右側に寄って右折する国もあるが、日本は”交差点では二段階右折”が原則。急いでいても、小回り右折や斜め横断は厳禁だ(同6000円)。

二段階右折時は最初の横断後、右方向の信号が青になるまで待つ。後続車両を妨げないよう交差点の手前側で(イラスト=さとうただし)
昨今、自動車と同じく自転車でも「携帯電話使用(ながらスマホ)」は危険視されている。通話や画面の注視は青切符で最も高額な1万2000円の反則金、スマホ片手に事故でも起こせば赤切符となる。通話はもちろん、地図アプリを見る時も必ず安全な場所に停車しよう。
さらに深刻な事故につながる違反が「酒気帯び・酒酔い運転」である。これらは言語道断で、青切符ではなく一発で赤切符が切られ、自動車並みの非常に重い刑罰を受ける。警察官の飲酒検知を拒否することも同様だ。

スマホホルダーに固定しても運転中は操作・注視しない(PIXTA)
青切符の効果は?
警察庁によると、青切符導入から1カ月間で全国の交付件数は2147件、赤切符は833件(※3)。合計の検挙数は前年同月比で41%減った一方、指導警告は13万5855件と約35%増えている。摘発対象は重大事故につながる違反に絞り、ルール周知を重視する方針だったとうかがえる。
この間、警察をかたり反則金と称して現金をだまし取る「青切符詐欺」のニュースが注目された。実際には“即時払い”ではなく、翌日から7日以内に金融機関で納付するシステムだ。なお取り締まりでは、身分証や家族への連絡などで身元を確認する。外国人であれば、パスポートまたは在留カードの携帯義務があるので注意したい。

傘差し運転を取り締まる警察官=2026年4月1日・岡山市(山陽新聞/共同)
都内では最近、電動キックスケーターなどの「特定小型原動機付自転車(特定原付)」も増えてきた。原付の一種だが、16歳以上であれば免許不要。訪日客も利用可能なシェアサイクルでは、歩道通行を認められた車種が提供されている。特定原付は便利な反面、交通違反の多発が社会問題になっている。2024年の検挙数は4万件を超え、「1台につき1.8件」と自転車をはるかにしのぐ割合だった(※4)。
日本では半世紀以上“事故との戦い“が続いている。“武装”として交通ルールを熟知し、身の安全を守って自転車を楽しもう。

最高時速20キロの特定原付。速度切り替え機能を搭載し、6キロモード時には歩道の通行が認められている
監修:本田聡(HONDA Satoshi)
弁護士。鳥飼総合法律事務所で会社関係法務などを中心に取り扱う。往復20キロのロードバイク通勤を日課とする。自転車協会「ENJOY SPORTS BICYCLE」で自転車ルールについて連載中。
取材・文・撮影(クレジットのない写真)=ニッポンドットコム編集部
バナーイラスト=さとうただし
(※1) ^ 国土交通省「自転車の活用に関する現状について」
(※3) ^ 警察庁「自転車に対する交通反則通告制度導入後1月間の運用状況について」
(※4) ^ 警察庁「特定小型原動機付自転車の交通違反の検挙状況」


