【動画】世界一豪華なモスクと日本最古のモスク

文化

いま世界で最も注目されているイスラム教のモスクが、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビにある。その名は「シェイク・ザイード・モスク(Sheikh Zayed Mosque)」。最大の旅行サイト・トリップアドバイザーの2014年「世界の観光ベスト25」で第2位に選ばれている。その理由は、世界で最も豪華で壮麗なモスクの一つだからだ。

日本最古の「神戸モスク」は、豪華さもなく、礼拝日以外は訪れる人もまばらだ。しかし、建立は1935年で、イスラム教と縁遠かった日本の中で80年間もの歴史を刻んできた。強運なモスクは、第二次世界大戦の神戸大空襲(45年)での焼失を免れ、阪神・淡路大震災(95年)も奇跡的に乗り切ってきた。

神戸モスクの外観

「ひざまずく」という意味のモスク

モスク(Mosque)は、イスラム教の礼拝堂を指すが、アラビア語ではマスジド(مَسْجِد‎)で 「ひざまずく場所」という意味を持つ。nippon.comは2013年、日本最大のモスク「東京ジャーミー」を徹底取材し、多くの読者からの反響をいただいた。モスクを通じて、イスラム世界の理解への一助になればと考える。

神戸モスクの、「ミフラーブ」と呼ばれる壁のくぼみと階段状の説教壇

モスクはあくまでも欧米や日本における呼び名であって、礼拝を行うための場所だ。内部には、崇拝の対象物となる神や預言者などの偶像を設置したりすることはなく、その美しい幾何学模様、デザインによって飾られている。

大事なのは、聖地メッカの方角を礼拝者の知らせる「ミフラーブ」と呼ばれる壁のくぼみであり、その横に集団礼拝の際に説教を行う階段状の説教壇がある。とても簡素な構造だ。日本から言うとメッカの方角は西北西となっている。

絢爛豪華さを誇るシャンデリアと絨毯

シェイク・ザーイド・モスクの外観

しかし、アブダビで見た「シェイク・ザーイド・モスク」は、絢爛豪華さとその巨大さに圧倒される。世界第3位の石油輸出国UAEならではの、石油資本が生み出したモスクであると分かっていても、その存在感はすごいというべきだろう。

このモスクは、“UAE建国の父”と呼ばれるシェイク・ザイード・ビン・スルタン・アル・ナヒヤーン初代大統領(国王)の名前からとられたもの。UAEの独立は1971年で、歴史は浅い。それだけに砂漠地帯の貧しかった部族をまとめ上げ、「中東の奇跡」と言われる国家に作り上げた大統領への国民の感謝と思慕はとても強い。

約10年の歳月と総工費約550億円をかけて造られたが、完成したのは大統領の死後から3年後の2007年だった。全体の広さは野球場5個分に相当する2万2412m2で、収容人数は約4万人、82個のドーム、約1000本の円柱を誇る。

シェイク・ザーイド・モスクの、直径10メートルの「黄金のシャンデリア」

ひときわ存在感を放つのが、礼拝堂に飾られた黄金のシャンデリアだ。直径10メートル、高さ15メートル、重さは12トンで、数百万個ものスワロフスキー・クリスタルがキラキラと輝く世界最大級のものだ。

もう1つの魅力は、世界最大の一枚織のペルシャ絨毯がモスク内に敷き詰められていること。緑を色調とした絨毯は、広さ5627m2、総重量が47トン、約1200人のイラン人職人が約2年の歳月をかけて織上げた。

“贅の限りを尽くした”内部そのものだが、プールに囲まれた白の大理石で覆われたモスクは、『世界を結びつける』をテーマに世界中の職人や材料、素材が集められた。内部の美しさは、スペイン・バルセロナの「サグラダ・ファミリア」のようにも見えた。

シェイク・ザーイド・モスクの豪華な内部と、世界最大のペルシャ絨毯

住宅街にたたずむ「神戸ムスリムモスク」

神戸モスクの正式名称は「神戸ムスリムモスク」で、兵庫県神戸市中央区のマンションや戸建て住宅などが立ち並ぶ住宅街にある。神戸在住のインド人貿易商やタタール人たちの出資で建造されたため、外観はインド的な雰囲気を漂わせている。

しかし、日本のモスク建立計画は神戸が最初ではない。1909年に東京が最初の候補となったが、用地確保ができず頓挫した。神戸に白羽の矢が立ったのは、第一次世界大戦(1914~1918年)の際に、神戸に移住するイスラム教徒が増加したためだった。

建設は竹中工務店が請負、チェコの建築家ヤン・ヨセフ・スワガーが設計し、地上3階、地下1階の建造物となった。アブダビの巨大モスクからは見劣りするが、日本のイスラム教徒の聖地であることに変わりはない。

建設から満80年、金曜日には200人を超える礼拝者

1935年7月末に竣工し、8月2日の金曜日に、参列者が「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」と唱え、献堂式を行なった。今年で満80年を迎える。戦時中の43年には日本海軍に接収されている。

神戸モスクの内部

さらに、完成から10年後の45年3月、第2次世界大戦の神戸大空襲では奇跡的に焼け残った。その50年後の阪神・淡路大震災(95年1月17日)でも大きな被害を受けず、住民の避難所として使われた。

モスクの1階は男性、中2階は女性のための礼拝所で、毎週金曜の集団礼拝日には神戸だけでなく、関西各地から信者200人以上が参拝に訪れるという。イスラム教徒かどうかを問わず、モスク内部の見学は可能。多数の見学の場合は事前に連絡の必要がある。見学の際は、半ズボンやミニスカートなど“肌の露出”は慎むことになっている。

文・写真:原野 城治(ニッポンドットコム代表理事)

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