不透明感あっても景気回復継続か:2020年の日本経済予測

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2020年の日本経済には、米中などの不安定な国際環境、東京五輪後の反動を理由にした悲観論がある。しかし、日本有数のエコノミストである筆者は、先行きの不透明さを認めつつも、景気は20年も緩やかに回復を続けると予測する。

最新の日銀短観は悪化したが…

日銀が2019年12月13日に発表した全国企業短期経済観測調査(短観)12月調査で、大企業・製造業の業況判断DI(「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数)が0と前回9月調査の+5から悪化した。悪化は4期連続で、2013年3月調査(▲8)以来の低水準になった。米中貿易戦争に起因する世界経済の減速や、台風19号をはじめとする自然災害による工場の操業停止などが影響した。

20年3月までの大企業・製造業の先行き判断DIは横ばいの0。12月短観の調査期間が11月13日~12月12日だったことは残念だ。ひとまず世界経済の不透明要因を緩和する結果となった12月13日の米中通商交渉での「第1段階」の合意や、12月12日の英国総選挙の結果が反映されていれば、先行き判断DIはプラスになっていただろう。

一方、大企業・非製造業の業況判断DIは、9月調査の+21から12月調査では+20と1ポイントの低下にとどまった。消費税が引き上げられたにもかかわらず、四半期ベースで3年(12四半期)連続+20台と高水準が続いている。消費増税対策として導入されたキャッシュレス決済へのポイント還元制度や、ラグビー・ワールドカップ日本大会に絡んだインバウンド需要の盛り上がりが景況感の下支え材料になっているようだ。中小企業・非製造業の業況判断DIも12月調査は+7と長期間のプラス継続で、非製造業の高水準なDIは、内需の底堅さを示唆している。

全規模・全産業の業況判断DIは、12月調査で+4と9月調査の+8から4ポイント低下した。しかし、9月調査の先行き見通しの+2よりはしっかりした数字になり、全体の景況感としては「良い」が「悪い」を依然として上回っている。

ソフトウエア研究開発を含めた19年度全規模・全産業の設備投資計画も、5.0%増と堅調に推移している。

経済対策が効果

日本の民間エコノミストが景気動向をどう判断しているかのコンセンサスを示す「ESPフォーキャスト調査」(2019年12月調査)で、20年度実質国内総生産(GDP)の伸び率見通しの平均値は、+0.49%(高位8人平均+0. 75%、低位8人平均+0.26%)となった。11月調査の平均値+0.39%(高位8人平均+0.65%、低位8人平均+0.08%)から上方修正となった。極めて緩やかながら、プラス成長は続く見込みだ。

予測値が高まったのは、政府が19年12月5日に財政支出13.2兆円規模の経済対策を閣議決定したことを反映したからだ。経済対策は民間の支出も加えた事業規模では26兆円程度になる。①災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、②経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、③未来への投資と東京五輪・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上-が3本の柱である。

「ESPフォーキャスト調査」(12月調査)の日米金利見通しは、ともに2020年末にかけ現状水準で推移するという見方が大多数。金融緩和が継続する見込みだ。

2020年の日本経済は、不透明さはあるものの、外需・製造業の落ち込みに歯止めが掛かり、内需の堅調さを維持しつつ、景気回復が継続する見込みである。その要因は、①足元の世界経済の不透明要因緩和の動きに伴う外需の持ち直し期待、②次世代通信規格5G用の基地局投資や新型スマートフォンの製品開発活発化などに伴う電子部品・デバイス工業の在庫サイクル底打ち、③内需の底堅さの継続、④政府の経済対策、⑤東京五輪・パラリンピック開催-などだ。

消費増税で景況感が一時ダウン

景気ウォッチャー調査から「消費税・増税」関連DIを作ってみた(図表1)。これは、回答者のコメントから、消費増税に絡んで景気がどうなると観ているかを示しており、50を超えると景気が良くなるとの見方になる。

図表1:2019年1月~11月調査:消費税・増税関連コメント集計表

関連コメント数 関連DI
1月調査 現状判断DI 40 51.9
先行き判断DI 196 49.1
2月調査 現状判断DI 44 49.4
先行き判断DI 190 50.5
3月調査 現状判断DI 58 48.3
先行き判断DI 216 49.5
4月調査 現状判断DI 60 44.2
先行き判断DI 284 51.9
5月調査 現状判断DI 54 45.8
先行き判断DI 338 48.4
6月調査 現状判断DI 103 45.6
先行き判断DI 450 48.2
7月調査 現状判断DI 124 43.5
先行き判断DI 578 39.1
8月調査 現状判断DI 229 45.4
先行き判断DI 714 30.7
9月調査 現状判断DI 548 50.5
先行き判断DI 796 29.4
10月調査 現状判断DI 580 30.1
先行き判断DI 455 41.8
11月調査 現状判断DI 414 34.1
先行き判断DI 303 44.2

出典:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成

現状判断の回答者は、2019年1月調査の40人から大きく増加し9月調査では548人、10月調査で580人になった後、11月調査で414人になった。消費税率引き上げが近づくにつれ関心が高まり、実施されると薄まったと考えられる。

「消費税・増税」に関する9月調査の現状判断DIは、50.5と、景気判断の分岐点の50を上回っていた。「良くなった」が43人いたが、ほとんど「駆け込み」について触れていた。しかし、消費税増税が実施された10月調査でDI は30.1まで大きく低下し、11月調査で34.1にやや持ち直した。

先行き判断DIでの回答者は1月調査では196人だったのに対し、9月調査では796人に大きく増え、DIは29.4の低水準になった。10月調査では455人に、11月調査では303人に回答数が減少し、DIは10月調査で41.8、11月調査では44.2まで戻した。消費税引き上げ実施後には一時的に消費支出が落ち込むが、そこで底打ちすると判断する人が多いことを示唆していよう。

高齢者の消費マインドに底打ち感

消費税増税1年前となった18年10月から1年間にわたって高齢者を中心に低下を続けていた内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(50を超えると消費者の景気判断が「良い」とされる。2人以上世帯、季節調整値)は、19年10月分が前月より0.6ポイント高い36.2になり1年ぶりに下降が止まった。そして11月調査では、前月より2.5ポイント高い38.7になったことは明るいデータだ。実際に消費税率が引き上げられると、改善方向に向くことが多かったが、今回もそうなった。下落を続けてきた高齢者のマインドが底打ちした形だ。

「ESPフォーキャスト調査」における、フォーキャスター(エコノミスト)全員の総意を示す「総合景気判断DI」を、11月調査と12月調査の2回分並べて示したグラフ(図表2)を見ると、2019年7~9月期は景気判断の分岐点に当たる50を上回っていた。消費税増税が実施された10~12月期には「総合景気判断DI」は大きく一時低下するものの、2020年1~3月期には分岐点の50を再び上回る水準まで回復し、直近の12月調査では20年4~6月、7~9月と80以上となっている。

その後、五輪・パラリンピックの反動が懸念されるため、10~12月は11月調査までは50を若干下回る見込みだったが、五輪後も見据えた経済対策実施が決まったこともあり、12月調査では50を上回る結果となった。21年に入ると1~3月、4~6月、7~9月と再び上昇し、緩やかな景気回復が続くというのがエコノミストのコンセンサスとなっている。

紅白歌合戦から景気を読み取ると

国民の多くが注目する大晦日のNHK紅白歌合戦と景気の間には密接な関係がある。例えば、北島三郎さんが紅白歌合戦で元気に明るく「まつり」を歌った全ての年の大みそかは景気拡張局面だった。2020年末までで活動休止する人気グループの嵐の紅白歌合戦も大みそかの景気局面と関係がある。

19年の紅白歌合戦で、嵐は11回目の出場を果たしたが、嵐が紅白歌合戦に出場した年の大みそかは、全て景気拡張局面である。なお、2019年末の景気局面に関してはエコノミストで見解が分かれるところだが、ESPフォーキャスト調査12月調査では拡張局面とみるエコノミストが34人中25人と7割を超えている。

嵐が初出場した2009年以降、景気はおおむね拡張局面で唯一の後退局面であった2012年も3月の景気の山のあと後退局面に入ったが11月には景気の谷をつけたので、大みそかは拡張局面に戻っていた。紅白ではメドレーで歌ってきているが、Happinessなど明るめで元気が出る曲が多かった。2019年は、NHK2020ソング(実質的な同局の東京五輪テーマソング)の「カイト」を初披露した。

嵐が活動休止する前の最後の仕事は2020年の紅白歌合戦となる可能性が大きそうだが、嵐と紅白歌合戦との関係から見ると少なくとも20年末まで、景気拡張局面継続の可能性が大きいと言えそうだ。

バナー写真:東京・丸の内の風景(PIXTA)

【用語解説:消費税・増税関連DI】

筆者の宅森昭吉氏は、景気ウォッチャー調査の景気判断理由のコメントの中から、「消費税」や「増税」に触れたものを選び出した。そうしたコメント数が増えていくと、消費増税の景気への影響について、関心が高まっていることを表す。コメントは景気判断の内容に応じて分類し、それぞれ点数化した。具体的には、景気が「良くなる」(1点)、「やや良くなる」(0.75点)、「変わらない」(0.5点)、「やや悪くなる」(0.25点)、「悪くなる」(0点)。これらを集計して、加重平均した結果が消費税・増税関連DIだ。50を分岐点として、これを上回ると「景気はよい」、下回ると「悪い」と判断される。

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