菅政権誕生:好意と批判が入り混じる各国メディアの報道

政治・外交

菅政権の誕生を受け、各国のメディアはさまざまな報道をしている。好意的な受け止めがある一方で、辛辣(しんらつ)な論評もみられる。世界の目に新首相・菅義偉はどう映り、どう紹介されているのか、報道をまとめてみた。

甘党のたたき上げ

多くのメディアが着目しているのが出自。「日本の政治リーダーとしては珍しく二世議員ではなく、派閥に所属していない」(ストレーツ・タイムズ=シンガポール)、「素朴な農家の息子が日本の政権を支配へ」(レバノン24)、「慎ましい家庭の出身で、自らの将来を創りあげた」(ミレニオ=メキシコ)、「目立たたないが、たたき上げの経歴に誇りを持つ」(リベラシオン=フランス)と報じた。

素顔については、一斉に「甘いもの好き」(聯合報=台湾)、「パンケーキやそばが好物」(ルモンド=フランス)、「酒を飲まない甘党の地味な政治家」(リベラシオン=フランス)、「オーストラリア発祥のスイーツのファン」(ABCオーストラリア)、「毎日、朝と夜に100回腹筋をして、(パンケーキの)カロリーを消費しているらしい」(ガーディアン=英国)と紹介。一方で、「謎の多い人物」(ニューヨークタイムズ=米国)との見方もあった。

記者会見に対する厳しい批判

厳しい指摘が目立つのが、自民党総裁に選出された過程だ。「派閥に属さず、通常ならば選択されない妥協の産物」(エルパイス=スペイン)であり、「党内外から不透明で非民主的との批判がある」(ラナシオン=アルゼンチン)。中には、ベラルーシの大統領選を引き合いにして「法の下の民主主義を裏切ったのも同然」(スペクテーター=英国)と、斬って捨てる論評もあった。

政治家としては、市議会議員と官房長官時代の報道が多い。「横浜市議選では、靴6足を履きつぶして3万軒を歩き回った」(ウォール・ストリート・ジャーナル=米国)、「影の横浜市長と呼ばれていた」(アルカバス=クウェート)と、タフさと仕事師ぶりを強調した。

一方、官房長官としては、記者会見に関して冷ややかな記述が多い。「安倍政権のスキャンダルを巧みに処理した」(ルモンド)はましな方で、「毎日2回、無味乾燥な記者会見をしていた」(NEWS.BG=ブルガリア)、「この8年間、いつも気難しく不機嫌でユーモアのかけらもなかった」(タイムズ=英国)と手厳しい。一方、記者会見に絞った記事ではないが、二世議員でないことを理由に「安倍晋三氏より根気強く仕事をするだろうし、安倍氏に欠けていた有権者とのコミュニケーションもとれるだろう」(FR24ニュース=フランス)との識者コメントを掲載したメディアもあった。

外交経験の浅さを指摘

政策面では、「安倍政権の内政外交政策は安定的に継続していく見込み」(観察者網=中国)、「安倍氏の政策を引き継ぐだろう」(BBC=英国)などと、大きな変化を予想する見方は少ないようだ。政治思想については、「ハト派からは程遠いが、安倍氏の歴史修正主義には心を動かさず、同氏に靖国参拝を自制するよう進言した」(ルモンド)との報道が目に付いた。

ほぼすべてのメディアが指摘するのが外交経験の浅さ。「外遊が少なくコミュニケーションが得意でない」(リベラシオン)、「外交経験が欠けている」(レバノン24)、「(安倍外交が失敗だったと断じた上で)継承者の菅も外交が得意でない」(観察網)と報じた。

ロシアとの関係では、研究者の談話を引用する形で「菅首相の就任は、ロシアと日本の関係が後退に向かう小さな一歩」(ノヴォスチ通信=ロシア)と形容した。逆に鈴木宗男参院議員のコメントを引いて「モスクワと東京の関係は、新しい日本の首相の下でさらに前進していく」(連邦通信社=ロシア)という正反対の論評も取り上げられた。

組閣を受けて、安倍前首相の弟、岸信夫衆院議員が防衛大臣に就任した(中央通信社=台湾)ことも報じられた。このほか、「SNS上ではすでに『スガやめろ』のハッシュタグがトレンド入りした」(ルモンド)との報道があった。

バナー写真:秋田県湯沢市のJR湯沢駅前で、菅官房長官が自民党新総裁に選出されたことを報じる号外を読む高校生=2020年9月14日(共同)

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