コロナ不況に光明も雇用回復になお時間、人手不足業種への「人材レンタル」も

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新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向け、わが国の社会経済活動は急激なスローダウンを余儀なくされ、雇用にはリーマン・ショック時以上の深刻な影響が及んでいる。雇用の回復にはなお時間がかかると見られ、「人材レンタル」のような新たな手法が注目される。

見えない失業者

中国・武漢市で新型コロナの感染者が最初に確認されてから早1年が経過する。当初は中国の国内問題と捉えられたものが、3月に入って欧州に飛び火し、世界的なパンデミックに発展。わが国も4月に緊急事態宣言を発した(5月に解除)ほか、秋からの「第3波」では、宿泊・外食需要を喚起するための「Go Toキャンペーン」の部分停止が余儀なくされた。自由な行動を許せば一気に感染者が広がり、高齢者や基礎疾患者などの高リスク層で重症者が急増し、医療崩壊につながるからである。

結果として、治療法の確立や有効なワクチンの普及まで、人々の活動は制限され、経済活動も制約されたままになる。当然、雇用情勢にもインパクトが及ぶ。世界に目を向けると、米国の失業率は4月単月で10ポイント超というショッキングな上昇を示し、その後低下するも10月時点で6.9%と依然高い水準にある。ドイツでも9月に4.6%と、コロナ禍以前の2月から1ポイント余り上昇している。

これに対し、わが国では10月時点で3.1%と低く、2月対比でみても0.7ポイントの上昇にとどまる。しかし、「見えない失業者」が多くいることに注意が必要である。実は4月の就業者数は、単月で100万人以上減っており、リーマン・ショック時には数カ月かけて生じた雇用の消失がわずか1カ月で生じている。職を失った人々の内訳をみると、若年・子育て世代女性・シニアの非正規労働者が多い。

この乖離(かいり)の背景には、失業者とは失職者を意味するのではなく、そのうち職を探している人のみを指すためである。かつての認識ではこうした層に世帯主の人は少なく、急いで職を探す必要がないため、失業者になっていないという解釈になる。

しかし、近年、親の仕送りの無い学生、夫の低収入のため働かざるを得ない主婦パート、低年金のシニアが増えており、状況を軽くみるべきではない。さらに、一時に比べれば大きく減ったとはいえ、休業者がなお平時よりも多く存在する。売り上げが大きく回復していかなければ、労働分配率が高止まる分、失業率はこの先悪化していく可能性が大きい。

ワクチン投与も経済回復には数年

今後の雇用情勢を展望するには景気動向を見通す必要がある。景気の先行きを左右する最大ファクターはパンデミックの行方であるが、明るいニュースが報じられている。欧米製薬メーカーが複数の有効なワクチン開発に成功し、来年前半には投与される見通しである。

かつてない規模での投与になり、2次被害発生リスクなど不透明な部分はあるが、ワクチン接種が徐々に進み、免疫を持つ人が増えていけば、感染スピードは抑えられるようになる。この冬を何とか乗り切れば、来年春以降は経済活動水準の引き上げが可能になるであろう。

しかし、パンデミックが収束に向かったとしても、経済活動がコロナ前の水準を回復するにはなお数年かかるとみられる。新型コロナは世界経済の在り方を変えてしまったからである。米中対立が決定的になったことで世界貿易の拡大ペースの鈍化は避けられない。コロナ危機対応で各国の国家財政は悪化し、財政健全化の必要性が成長率を抑制して輸入の伸び悩みにつながるだろう。外需依存が強いわが国経済には逆風が吹くことになる。

同時に、デジタル化加速のインパクトも大きい。消費のオンライン化やテレワークの普及は、店舗やオフィスの在り方や立地を変え、物流や公共交通の在り方も変える。既存の産業の枠を超えた事業の融合や新規事業が生まれ、その過程で事業再構築・産業再編があらゆる業界で生じていく。とりわけ、売上高が当面元に戻らなければ、既存産業については効率化圧力が強く働き、合併・買収や倒産・廃業が増えていくことになろう。

こうした環境の下で雇用情勢は向こう1年、厳しい状況が続くことが予想される。既存事業では効率化のための人員削減圧力が生じる。コロナ前は「売り手市場」が続いていた新卒採用も、当面は学生にとって厳しい状況になることが懸念される。

「失業なき労働移動」を進めよ

こうした状況に対し、日本政府は雇用調整助成金の特例措置をはじめ、矢継ぎ早に対応策を講じてきた。雇用調整助成金は、企業が余剰になった労働力を維持する場合、その際の休業手当を助成する制度であるが、今回はその助成率を大幅に引き上げ、手続きを簡素化した。

資金不足で休業手当が支払えない中小企業には、国が休業者に直接支払う「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」も創設された。これらの施策はわが国の低失業に貢献しているのは確かであり、それ自体は評価されるものの、無視できない課題がある。

それは既に見たように、雇用されている人が前提の仕組みであるため、救済できない労働者が少なくないことである。既に多くの非正規労働者が失職しており、雇用情勢の悪化が長引けば手元資金は底をつき、失業給付期間が短いこれらの人々は路頭に迷う恐れがある。

雇用が確保された家族と同居しているケースでも賞与の減少などで、生活が苦しくなるリスクがある。リーマン・ショック後に求職者支援制度が設けられ、職業訓練とセットで生活費を支援する仕組みはあるが、有効な職業訓練には限界があり、対象者は大幅に増やせない。

欧州では一般的な、失業保険と生活保護の中間に位置付けられる「第2の失業保険」が日本では弱いことが、セーフティーネット上の問題なのである。求職活動を前提に、雇用保険対象外の失職者向けの生活支援給付を制度化すべきであろう。

もう一つの雇用調整助成金の問題は、それが長く継続されれば、産業・雇用構造の転換を遅らせ(ゾンビ企業の延命)、将来的な企業倒産につながる恐れがあるほか、経済成長率を押し下げるリスクがあることだ。米国が一時的には大きく失業率が上昇しても、いずれ経済が力強く回復し、新たな雇用を生み出すのは、雇用維持政策が行われず、衰退産業から成長産業に労働力の移動が起こるからである。

だからと言って、わが国で直ちに雇用維持策を放棄すべきということにはならない。米国では、企業をまたいで職業団体(同じ職業の人々のアソシエーション)が形成されることで、特定企業に依存しない主体的なキャリア形成が支えられているほか、コミュニティーカレッジのような敗者復活を支える教育システムが存在しており、社会環境がわが国と異なる。また、同国では大きな所得格差が生まれ、成長から取り残された人々を増やすという副作用が生じていることは見逃せない。

そうした中、今回、わが国では注目される動きがみられる。「シェアリング型一時就労(人材シェア)」というべき、人手が過剰になった産業から、人手不足にある産業・企業に人材を「レンタル」する仕組みである。

苦境にある企業がアフター・コロナでの事業再開に備えて人材を確保しつつ、雇用維持の枠組みを保持することで、仕事のなくなった人々の生活不安を軽減できる。効果はそれにとどまらず、労働者が新たなスキルや知見を身につけることで、新規事業の創造につなげることができる。あるいは産業が融合するきっかけになったり、結果として縮小部門から成長部門への「失業なき労働移動」につながったりする可能性もある。

政府は12月8日に閣議決定した経済対策で、産業雇用安定センターによるマッチング体制の強化や助成金の創設を盛り込んだ。その実効性を上げるには民による主体的・積極的な取り組みが不可欠であり、産業・地域横断的に官民が協力して推進が図られることを期待したい。

バナー写真:ハローワーク渋谷で職業相談の順番を待つ人たち(共同)

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