日本人の7割が「日米関係は悪化」、4割が「自力で防衛を」:戦後80年、ニッポンドットコム世論調査

政治・外交 経済・ビジネス

トランプ2期政権の発足後、日本人の7割近くが「日米関係が悪くなった」と感じ、日本の防衛については米国からの自立志向が4割強に──。米国との関係を問う世論調査でそんな国民意識が浮かび上がった。

トランプ2.0の前後で対米意識に大きな変化か?

ニッポンドットコムは戦後80年の節目に日本人の米国観を探ろうと、7月22日から24日にかけて、JX通信社と共同でインターネットによる世論調査を実施した。

まず今年1月に米国で第2次トランプ政権が発足した後、日米関係が「良くなったか、悪くなったか」を尋ねたところ、「どちらかと言えば」を含めて「良くなった」との回答はわずか2.3%にとどまった。

逆に「どちらかと言えば悪くなった」が47.1%、「とても悪くなった」が22.4%を占め、両方を合わせて69.5%の人が「日米関係は悪化」と受け止めていた。「変わらない」との回答も28.3%あった。

日米関係への評価

年代別では、60代の7割強、70代の8割強が「悪くなった」と答えた。逆に若年層では20代と30代の多くが「変わらない」か「どちらかと言えば悪くなった」と回答し、高齢層よりも「悪化感」が薄かった。高齢層ほど日米関係が良好だった時代を経験しているためとみられる。男女別では、男性の28.5%が「とても悪くなった」と回答し、16.3%の女性よりも厳しく受け止めていた。

調査の時期は、日本で参院選が終わり、米国が日本に課す「相互関税」について、それまでの25%から15%に引き下げることで日本と合意したと、トランプ大統領が発表したタイミングと重なる。トランプ氏の一方的な強硬姿勢がいくらか緩和された時期でも「日米悪化」が7割近くに上ったということは、交渉の行方が不透明な時期だとさらに高率になっていた可能性がある。

内閣府がトランプ2期政権発足前の昨年10~11月に実施した「外交に関する世論調査」(郵送方式、有効回答数1734人)によると、日米関係が全体として「良好だと思うかどうか」との質問に対して、85.5%が「良好だと思う」と回答している。「良好だと思わない」は11.4%にとどまっていた。

調査方法が異なるので単純な比較はできないが、トランプ2.0の前と後とでは、日米関係に対する日本人の受け止め方に大きな変化があったと考えられる。

平和と安全に「日米強化」は、もはや少数派

こうした対米観の変化は、日本の安全保障のあり方にも影響を及ぼしているようだ。

今回の調査で「日本は今後、自国の平和と安全を守るために、どうしたらいいと思うか」と聞いたところ、(1)「米国との関係をもっと強める」が24.7%、(2)「米国以外の国と連携する」が33.7%で、最も回答割合が高かったのは、(3)「自力で防衛できるように努める」の41.7%だった。

日本の平和と安全について

日本は日米安全保障条約を国家防衛の機軸にしているため、(1)は主にこの政策の継続を意味する。(2)の「米国以外との連携」は、オーストラリアや韓国、フィリピンなどとの「多国間安全保障」の構想に近い。(3)はいわゆる「自主防衛」志向だ。

回答を年代別に見ると、「自力で防衛」との回答率は30代から60代までいずれも4割を超えた。一方、70代では「米国以外との連携」が4割を超え、「自力で防衛」よりも多かった。男女別では、「米国以外との連携」が男性36.2%、女性31.1%、「自力で防衛」が男性40.6%、女性42.8%と男女間であまり違いはなかった。

中国、ロシア、北朝鮮という権威主義の核保有国に囲まれている日本が、米国の抑止力に頼らずに自主防衛を目指す場合には、従来とはケタ違いの防衛予算と、憲法など法体系の抜本的変更が必要になる。「自力で防衛」の回答が多数を占めたのは、これらの難題に取り組む意思の表れというよりも、米国がもう頼りにならないという「不安感」の反映とみられる。

防衛省で事務次官を経験した1人は、「自力で防衛」が多数を占めた調査結果について「トランプのパーソナリティーに引きずられた結果だと思う。この半年でアメリカが嫌いになった人は実際に多いだろうが、日本の置かれた安全保障環境を冷静に考える必要がある。自力防衛論には飛躍がある」と話す。

米国の影響を感じる分野:1位経済、ソフトパワーは希薄

調査ではさらに、米国の影響を最も強く感じる分野はどれか、6つの選択肢から選んでもらった。

最多は「経済活動」の59.7%、続いて「国の防衛」22.0%、「ものごとの考え方」7.2%、「音楽や映画、ファッションなどの文化」4.3%、「デジタル技術」2.1%の順だった。「その他の分野」という回答も4.7%あった。

米国の影響を最も強く感じる分野は ?

「経済」が最多だったのは、日米の関税交渉が大詰めを迎えていたことによる影響と考えられる。20代から70代まで全世代で「経済」を挙げる人が5~6割を占めた。「デジタル技術」という回答は20代の5.6%が目立った。男女別では女性の方が「ものごとの考え方」(8.6%)や「文化」(5.2%)を挙げる割合が男性より高かった。

日本にとって戦後とは、全面的に米国の影響下に入る時代の始まりだった。かつては日本人のライフスタイルや娯楽、文化の領域でも米国の「ソフトパワー」が広範に浸透していたが、調査結果を見る限り、それほど顕著ではなくなっている。

調査は、事前登録されたネットモニターにランダムに質問を配信する形式で実施し、1042人から回答を得た。

バナー写真:PIXTA

米国 ドナルド・トランプ 日米関係 世論調査 戦後80年