参政党は他の新興政党とどこが違うのか―組織拡大戦略に見る2つの特徴

政治・外交 社会

「日本人ファースト」のキャッチコピーを掲げ、2025年7月の参院選で躍進した参政党。結党から5年、全国で勢力を広げてきた背景にどんな戦略があるのか。同党の組織づくりの特徴を浮き彫りにする。

第1の特徴:地方議員の獲得に注力

参政党には、他の新興政党とは大きく異なる特徴が二つある。

一つは、地方議員の多さだ。2020年4月に同党が結成されて以来、参政党は一貫して地方議員の当選に全力を注いできた。25年7月末の時点で、同党所属の市町村議会議員・都道府県議会議員を合わせた地方議員の総数は155人である。

2019年に結党して勢力を伸ばしてきたれいわ新選組の60人と比較すると、約2.5倍と各段の差がある。また23年に結党した日本保守党の地方議員はわずか9人だ。過去5年間で、参政党がいかに地方議員の獲得に力を注いできたのかが分かる。

日本における新興政党はおおむね国政選挙での当選を第一とし、地方議員の獲得をおざなりにしてきた。現代日本の政治状況では、地方議会は軽視されがちである。

その理由は戦後日本が憲法上、地方主導の自治を謳(うた)っておきながら(第二次大戦前の日本では、地方自治の考えは薄弱であった)、実際には中央から交付される地方交付金・交付税などによる介入的な予算措置のために、地方議会が独自な政策を打ち出せないでいることが大きい。歳入に占める地方税の割合から「2割自治」「3割自治」などと揶揄(やゆ)される。

このような現代日本の政治状況を踏まえれば、ただでさえ既存政党に対して知名度や組織力の弱い新興政党が、地方議会選挙を重視せず、もっぱら国政選挙に絞ってあらゆるリソースを割いてきた理由が分かるはずである。

しかし実は国政選挙においてこそ、地方議員の果たす役割は大きい。

国政選挙の「実働部隊」

日本の地方議会は、年間に平均で約90~120日間しか議会を開催しない。つまり地方議員は、1年のうち約3分の2は議会に出席する必要がない。むろん閉会期間には、地元有権者との懇談や視察などの活動がある。しかし実態としては、地方議員の主要な役割は、この長大な“有給期間”を利用して、所属政党の国政選挙などを手伝うことにこそある。

国政選挙の頻度を見ると、参院は任期6年だが3年ごとに半数改選、衆院は任期4年だが、平均で約2年半に1回、議会の解散に伴う総選挙がある。つまり日本は約1年おきに確実に国政選挙を実施している、極めて選挙の多い国なのである。

そんな状況下で、地方議員は国政選挙の「実働部隊」としての活躍が期待されている。それまでの議員活動で培った支持者との関係や地域のさまざまな有益な情報を、国政選挙の「傾向と対策」に生かせるからだ。よって所属する地方議員が多ければ多いほど、その政党は国政選挙で有利になる図式が成り立っている。このことを指して「地方議員の多寡は国政政党の足腰」といわれる。

この点から考えると、参政党は、国政選挙で躍進するために、地方議会で議席を獲得し、地域のネットワークを構築してきた、と分析できるだろう。

敷居の低い自治体で確実に当選を狙う

参政党は、明確な戦略の下に地方議員を続々と誕生させてきた。議員定数に対して、立候補者が少ない自治体の選挙、つまり「当選確率が高い自治体」を意図的にピックアップして候補者を擁立することを繰り返してきたのだ。

日本の有権者の多くは、前述のような地方議会の自由度の低さもあって、地方選挙に興味を示さない傾向にある。2023年春の統一地方選挙における市町村議会議員選挙の平均投票率43.92%、都道府県議会議員選挙は41.85%と、24年の衆院選挙に比べて10~15ポイントも低い。

同時に、地方議員のなり手不足が深刻化している。議員定数と同数の立候補者しか存在せず、「無投票」のまま地方議員が決まった自治体が増えているのだ。23年の統一地方選では、無投票当選者の割合が首長選で40.2%(96人)、議員選で13.9%(2057人)に及んだ(朝日新聞・23年6月5日)。この時、参政党は100人の当選者を出している。

裏を返せば、当選確率の高い自治体の選挙事情(その自治体における有権者の人口分布や年齢構成、支持の傾向など)を十分に研究すれば、その地域のことをよく知らない立候補者であっても、当選はたやすいということだ。この手法を使って参政党は結党以来約5年間で、冒頭のような地方議会での躍進を遂げてきたのである。

第二次大戦後の日本では、地方の課題に精通しているとは言えない立候補者が「売名」などの目的で立候補することを防ぐため、経済開発協力機構(OECD)諸国の中でも厳格な供託金制度を設けてきた。

しかし町村議会選挙は例外的で、一律15万円と相対的に廉価だ。市議会では一律30万円と決まっている。当然この金額は、選挙で一定程度の得票があれば全額が返還される。

少額な準備金で立候補できる自治体選挙は、「とにかく国政選挙の実働部隊としての地方議員を増やしたい」という目的に特化した参政党にとっては、選挙制度のからめ手を突く戦略だと言える。

第2の特徴:小選挙区単位で支部設置

参政党が他の新興政党と一線を画すもう一つの特徴は、小選挙区ごとの地方支部の充実である。2025年8月時点での参政党の地方支部は、全国に287を数える。衆議院の289小選挙区のほぼ全てに、地方支部が存在することになる。

他の新興政党のほとんどは、せいぜい都道府県単位でしか地方支部を設置できておらず、場合によってはもっと少ない。参政党の突出した地方支部の多さは、それが小選挙区単位で設置されていることを踏まえても、明らかに国政選挙を見通した「最前線の党組織」のネットワークに他ならない。

第二次大戦後、日本では長らく中選挙区制度が用いられてきた。その制度により、恒常的に同じ政党から2人以上が立候補する状況が続いた結果、自民党内での派閥争いが激化し、政策競争ではなく派閥抗争の様相を見せた。これがいわゆる「派閥政治」の根源である。

この弊害が強く議論され、1980年代には中選挙区を廃止し、米国・英国などの議会選挙と同じく立候補者の首位1人しか当選しない小選挙区制を導入するべきとの機運が高まってきた。

1993年に非自民の連立政権となった細川護熙内閣下において、当時連立与党であった新生党幹事長の小沢一郎が主導する形で公職選挙法が改正され(94年)、96年の衆議院議員選挙から適用された。これが現在でも続く、小選挙区比例代表並立制の始まりである。

戦後日本の政治状況は、郡部・農村部に基盤を持つ自民党、主に大都市部に基盤を持つ社会党の2大政党の勢力が固着した構造を有した(55年体制)。小選挙区制度が導入されてからも、議会の中で大きな勢力を保持した自民党は、農村部に有利な選挙区の区割りにこだわったが、「一票の格差」がしばしば最高裁判所で「違憲状態」と判断されて、人口比に見合った選挙区の区割り見直しが頻繁に行われるようになった。

90年代初頭まで続いた未曽有の日本経済の好況は、おおむね92年ごろには終わり、不況・低成長の時代となった。農業経営も厳しさを増し、疲弊した郡部・農村から東京圏への人口流入に歯止めがかからず、それに伴って特に東京圏での小選挙区の細分化が行われている。

国政選挙での躍進は続くか

参政党支持層の主力は大都市部とその周辺に暮らす中産階級であり、同党にとっては都市部の小選挙区が増えれば増えるほど選挙情勢が有利になると期待できる。このような中で、同党が都道府県単位ではなく小選挙区単位で、ほとんど全ての選挙区に支部を設置していることは、繰り返すが、他の新興政党にはない特徴である。

仮に小選挙区で落選しても、衆院の選挙制度は比例代表と並立しているため、いわゆる「死に票」を救済する名目で、比例代表との重複立候補を認めている。これが「比例復活当選」であり、参政党が必ずしも強くない小選挙区にすら地方支部を綿密に設置するのは、比例代表での「救済」を目的としているからである。この事実は、近い将来に想定し得る解散・総選挙でも躍進を継続させるに足る大きな要素であろう。

以上、2つの観点から参政党の政治運動体としての特色を見てきた。参政党の党員・党友は2022年時点で約4万5000人(25年現在、約6万8000人の推計あり)とされているが、18年に結党した国民民主党が25年現在で約5万人以上と推計されることを考えると、そこまで過剰な数字ではない。

注目すべきなのは党員・党友の多い少ないではなく、参政党が政治運動体として持つ上記のようなシステムの強さにこそあるのである。

バナー写真:参院選投開票日の翌日東京・新橋駅前で開かれた参政党の集会=2025年7月21日/共同

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