高市新総裁はどんな人?:党内右派のシンボル、アベノミクス回帰も
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バンドのドラム担当、民放のキャスターも
10月4日の投票は、高市氏と小泉進次郎氏(44)の上位2人による決選投票にもつれ込み、高市氏185票(議員票149、党員票36)、小泉氏156票(議員票145、党員票11)の大差がついた。議員票では小泉氏が優勢とみられていたが、経験不足による不安感から失速した。
総裁選の演説を「奈良の女です。大和の国で育ちました」から始めたように、奈良県の出身。自民党有力者に多く見られる「2世」や「3世」の議員ではなく、サラリーマンの共働き家庭に育った。神戸大在学時はヘビメタ・バンドのドラムスを担当している。
大学卒業後の1984年に松下政経塾に入り、同塾からの派遣で米議会下院の民主党議員事務所でスタッフを経験した。さらに政界入りする前は、1989年から民放テレビ局でキャスターを務めるなど異色の経歴を持つ。
選挙初挑戦は1992年の参院選。奈良選挙区から無所属で立候補するも大差をつけられて落選した。翌93年の衆院選奈良全県区に再び無所属で挑戦し、今度はトップで初当選を果たした。この時の当選同期が、後に接近する安倍晋三元首相だ。94年に旧新進党の結党に参加。96年の衆院選奈良1区で再選されたものの、間もなく自民党に入った。
自民党では清和政策研究会(後の森派、安倍派)に所属し、森喜朗元首相に可愛がられる。初入閣は第1次安倍政権の2006年。沖縄・北方担当相に就任した。自民党が政権を奪還した2012年には女性初の党政調会長、14年には女性初の総務相に就いている。
総務相時代はテレビ局に対する「電波停止」発言で物議を醸したほか、総務省に影響力のある菅義偉元首相(小泉氏の後見人)と省内人事をめぐって対立したこともあった。2021年からの岸田文雄政権で再び政調会長や経済安全保障担当相に就くが、首相の方針に公然と異を唱えて一部の不評を買った。
尊敬するのはサッチャー元英首相
政治姿勢は、保守強硬派に属する。男系男子による皇位継承を強く訴え、積極財政・金融緩和のアベノミクスを「サナエノミクス」として継承する方針だ。安倍シンパの支持を得るため、昨年の総裁選では「首相に就任しても靖国神社に参拝する」と公約したが、今回はあいまいにした。尊敬する人物はマーガレット・サッチャー元英首相。

靖国神社の参拝に訪れた超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーら。左手前は自民党の高市早苗氏=2014年8月15日、東京都千代田区(時事)
ただし、連立与党である公明党の斉藤鉄夫代表は総裁選前に「保守中道路線で理念に合った方でなければ、連立政権を組むわけにはいかない」と発言し、高市氏との距離感をうかがわせた。高市政権になれば、連立の枠組み拡大が大きな課題になるが、高市氏に日本維新の会や国民民主党とのパイプは見受けられない。
私生活では2004年に元自民党衆院議員の山本拓氏と結婚したが、2017年にいったん離婚し、その後再び同じ山本氏と結婚している。昨年暮れに鼻の手術を受けたことをSNSで発信するなど、開けっぴろげな性格で知られる。プロ野球・阪神タイガーズの大ファン。
総裁当選直後のあいさつでは「自民党の新しい時代を刻みました」「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます(捨てて働くの意味)」と語った。
文:ニッポンドットコム編集部
バナー写真:自民党の総裁選に選出され、笑みを浮かべる高市早苗氏=10月4日、東京・自民党本部(時事)
