原発「最大活用」は合理的か:「脱原発依存」削除の政府第7次エネ基本計画
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原発の依存度は「2割程度」
第7次エネルギー基本計画は、電力需要の増加に対応しつつ、2050年の脱炭素化を目指す方針を示したものだ。
電源構成の比率は、再生可能エネルギーを現状の2割から4~5割に増やして主力電源とし、原子力は23年の8.5%から40年には2割程度まで増やすとした。温室効果ガスの排出が多い火力発電は、現状の7割を3~4割まで低減させる計画だ。
日本の電源構成の実績と予測
| 2023年度(速報値) | 40年度 | |
|---|---|---|
| 太陽光 | 9.8% | 23~29% |
| 風力 | 1.1% | 4~8% |
| 水力 | 7.6% | 8~10% |
| 地熱 | 0.3% | 1~2% |
| バイオマス | 4.1% | 5~6% |
| 原子力 | 8.5% | 2割 |
| 火力 | 68.6% | 3~4割 |
※資源エネルギー庁第7次エネルギー基本計画の概要からnippon.com作成
原子力については、活用を「最大限」にまで引き上げ、原発の40年の運転期間制限を見直して「延長・建て替えの容認」などを明記した点で、大きな転換点を迎えたと言って良い。
確実性欠く需要予想に依拠
日本のエネルギー政策は、以前から「長期エネルギー需給見通し」に基づいてまとめられてきた。基本計画も長期需給見通しをベースにしており、今回、政府は「原発の最大限活用」方針に大転換した理由を、人工知能(AI)や情報産業による電力需要の増加を根拠にしている。
しかし、電力のこの需要見通しは、実際の電力需要とは乖離(かいり)が生じた例が複数ある。〈図・電力需要予測と実績〉は電力広域的運営推進機関(OCCTO)による、電力需要の予測と実績を比較したものだ。2016年以降、毎年のように高い需要見通しを示したが、実際の需要量は予想を大きく下回っており、需要予測がいかに不正確なものかを物語っている。
今回の基本計画の変更は、データセンターの需要増大により大量の電力が必要になるという前提に立っている。一方、デジタル化によるエネルギー効率が革新的に改善され、電力需要を低減させるとの指摘もある。かなりの不確実性があるエネルギー需要予測に基づいた「エネルギー基本計画」は、そもそも根本的な問題を抱えているのである。
意思決定プロセスに課題
実はこの「エネルギー基本計画」自体、不確実性を内包する電力自由化の時代に適合できない性質を持つ。
第1に、政府はエネルギー市場の自由化に伴う市場原理の活用を進めてきた。実際、都市ガスや大手通信会社など多種多様な企業が電気事業に参入し、供給体制や価格などで競い合っている。だが、そういった自由化がもたらす不確実性と政府主導のエネルギー基本計画は、そもそも整合性が取りにくい関係にある。市場原理の活用は、むしろ「計画」的発想から離れる必要があるはずだ。自由化を進めた欧州や米国で、日本のような「需給構造を政府が決め打ちする中央集権的な計画型モデル」が一般的ではなくなっているのも、そういう背景がある。
第2に代替案評価の欠如である。複数の選択肢から最適なものを選ぶために多角的に比較検討する「代替案の評価」という重要な視点が、エネルギー基本計画の議論にはほとんど欠けている。言い換えれば、日本のエネルギー政策には、不確実な将来に対応できる「プランB」が存在していない。これが決定的な欠陥であり、硬直的な政策につながっている。
第3に意思決定プロセスにも問題がある。従来通りの審議会方式の意思決定プロセスでは、あまりにも意見の幅が狭い。中心となっている総合資源エネルギー調査会をみても、直接の利害関係者が多く、意見の多様性も見えにくい。いわゆる市民社会からの参加プロセスが全く見えてこない。
これでは国民的課題として原発の稼働が注目されても、原発稼働の意思決定が一部の利害関係者による議論の結果、と見られても仕方ない。
経済性への疑問
原発「最大限活用」の経済的合理性の根拠は極めて不透明だ。
原発は、経済産業省の発表でも既に2021年時点で既に「最も経済性の高い電源」ではなくなっている。今回発表された発電コスト評価でも、原発は太陽光よりも高く、「最も安い電源」ではないとされる。
今回、古い原発の更新が認められ、福島原発事故以降、初めて建て替えの意向を示す電力会社が登場した。だが新設原発の経済性に不安があるのか、関西電力の森望社長は「投資の回収の予見性を確保することが重要なので、国の政策に基づく事業環境整備などが必要となる」と述べている(※1)。
これを受け、政府も原発の新設支援に向け、建設費の回収を確実にすべく新たな料金制度の導入を検討し始めた。新規原発の建設は自由な市場では成り立たないことを裏付けたもので、国民負担の増加につながると懸念されている。
また、政府は原発の寿命延長も認めたが、新設政策との整合性も問題になるだろう。
供給安定性や気候変動対策への貢献は限定的
原子力発電の最大限活用の理由として「供給安定性」と「気候変動対策への貢献」が挙げられている。だが、これも限定的な効果しか期待できない。
原発は一定出力で発電容量を確保できる点、つまり「供給安定性」が特徴だ。ただ、頻発する地震による稼働停止や、再稼働計画の不確実性の高まりにより、計画に沿った発電容量の確保を予測することも難しくなっている。平均稼働率は2024年現在で30.6%にとどまっており(※2)、安定したベースロード電源としての信頼性にも陰りが見える。
温暖化対策としては、既存の原発が稼働して火力発電を代替すれば確かに効果があるだろう。しかし、原発の稼働により再生可能エネルギーの出力を抑制することになると、温暖化対策への効果は限定的になる。さらに、原発の新設には少なくとも20年はかかると言われているので、新設して効果を上げるなら早くても45年以降になってしまう。要は、新規原発は温暖化対策として「間に合わない」のである。

新潟県知事が再稼働を容認した東京電力柏崎刈羽原発(PIXTA)
国民理解へ重要課題の解決を
最後に、原発の「推進・反対」に関わらず、原子力政策の最大の課題として挙げられるのが、高レベル放射性廃棄物(いわゆる『核のごみ』)の最終処分場選定や福島第1原発の廃炉の問題だ。このような問題の解決の見通しが立たない限り、原子力政策への国民の理解は得られないだろう。
「核のごみ問題」は、北海道と佐賀県の計3町村で調査が行われているが、処分地の決定は見通せていない。推進・反対に関わらず解決が必要な課題であることを、法律に明記し、体制もそれに従った組織に改変することが望ましい。さらに、処分プロセスを客観的に評価する、独立した「第三者機関」の設置も法改正で明記することが重要だ。
福島第1原発の廃炉や復興も、原発の推進・反対に関わらず必要な重要課題だ。廃炉のためのロードマップは法的根拠もなく、30~40年で完了するという科学的には根拠の薄い目標がいまだに維持されている。事故後14年もたった今でも、廃炉全体の目標、実施体制、評価体制(独立した第三者機関が必要)、総費用の見直しやその負担の在り方、除染土の処分や汚染処理水の問題、地元をはじめ国際社会との合意形成プロセスなど、課題は山積みのままだ。ここでも根本的な見直しが必要だ。
情報公開と公正な評価が必要
原子力政策の円滑な実行には、自国の市民のみならず、国際社会からの信頼も不可欠である。そのためには、政策の根拠となる情報を公開し、代替案との比較をした上で、多くのステークホルダーの意見を反映する仕組みが必要だ。政策評価には自らの評価のみならず、第三者機関の設置など、公正な評価が市民の信頼を生む。市民の信頼回復には、そのような政策決定過程における透明性の確保が不可欠であり、さらには平常時から真摯(しんし)な対話を継続していくべきだ。
今回のエネルギー基本計画が市民や国際社会に信頼されるものとなるよう、政策決定プロセスの根本的な見直しが求められる。
バナー写真:東京電力福島第1原子力発電所を視察し、東京電力ホールディングス(HD)の小野明副社長(左端)から説明を受ける高市早苗首相(左から2人目)=2025年12月2日、福島県大熊町(代表撮影、時事)
(※1) ^ NHK ニュース、「関西電力 美浜原発敷地内に建て替えに向け調査再開へ」、25年7月22日。
(※2) ^ 石川公一、「国内原子力発電2024年度の設備利用率は30.6%」、25年1月10日。
