出口の見えないイラン戦争:米欧の亀裂が深刻化
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欧州は「トランプの戦争」参加を拒否
イラン攻撃は国連や米議会の承認なしに始まった。ましてや同盟国への事前通告や相談もなく、欧州の反応も当初から前向きではなかった。米国への風当たりがさらに強まったのは、イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」がホルムズ海峡の封鎖を宣言し、世界の原油価格が急上昇したことだ。
米国の対応が二転三転する一方で、中東からの原油供給が途絶えるかもしれないとの不安から、世界経済は大混乱に陥った。トランプ氏は日本や韓国、欧州同盟国にホルムズ海峡の安全航行に向けた艦船派遣を要求したが、応じる国はなく、かえって結束の乱れを露呈した。この事態を招いた原因は、米国の戦略ミスにある。にもかかわらず、その解決を同盟・パートナー諸国などに押し付けるのは、無責任としかいいようがない。
当初からイラン攻撃に異を唱えていたスペインは、米軍の基地利用や領空通過を拒む姿勢を明らかにした。ドイツのピストリウス国防相は艦船派遣要求について「われわれの戦争でなく、われわれが始めたのでもない」と拒否した。欧州連合(EU)の対応も同様で、海峡の商船警護についてカラス外交安全保障上級代表(EU外相)は「この戦争に積極的に関わりたい人は誰もいない」と述べた(3月16日)(※1)。トランプ氏のお気に入りとされてきたメローニ首相のイタリアも米軍機の着陸を拒絶したという。
トランプ氏の逆恨み「NATOは張り子の虎」
トランプ氏は一方的に失望と怒りを募らせている。とりわけ激怒したのは、欧州の主要同盟国とされてきたフランス、英国が艦船派遣に応じようとしなかったことだ。トランプ氏はマクロン仏大統領が作戦参加を断ったことを「絶対に忘れない」と非難し、英国に対しては「米国が抜けたNATOは張り子の虎にすぎない」などと毒づいた上で、NATO脱退を検討しているとまで述べた(※2)。
トランプ氏の目には、ウクライナ問題で米国が多額の軍事、財政支援を投じてきたのに、イラン攻撃で欧州が米国の要請に二の足を踏むのが「裏切り」と映ったようだ。だが、トランプ氏は1期目政権時から「NATO軽視」「欧州軽視」の姿勢が目立ち、2期目の「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」では、さらに進んで「ウクライナ問題は欧州の戦争」という位置づけになった。イラン攻撃が独断専行で行われたことに加えて、こうした経緯が積もり積もって、欧州から「しっぺ返し」を受けたともいえる。
トランプ氏がNATOからの脱退を示唆したのは初めてではない。しかし、そうした言動はNATOの結束を損なうだけでなく、先進7カ国(G7)の連帯をも危うくなる。ロシアの脅威にさらされる欧州にとって大きなマイナスとなるのは言うまでもない。「欧州の安全保障とインド太平洋の安全保障は不可分」と訴えてきた日本にとっても、NATOやG7の弱体化の影響は計り知れない。
ホルムズ海峡の安全航行が最優先
欧州諸国も手をこまねいているわけではない。高市早苗首相とトランプ氏の首脳会談が行われた3月19日、英、仏、独、イタリア、オランダは日本を加えて「6カ国共同声明」を発表し、ホルムズ海峡の「安全航行を確保するための適切な措置に貢献する用意」を表明した。
中東の混迷が深まる中で国際社会に最も重要なのは、ホルムズ海峡の封鎖を解除して航行の自由と安全を復活させることだ。国際海峡の通航でイランに通航料を支払うこともあってはならない。その前提となるのは、速やかな停戦の実現と事態の鎮静化だ。
6カ国共同声明に賛同する国々は35カ国に増えた。さらに英国主導で有志国の会合が4月2日、オンラインで開かれ、40か国以上が参加した。会合ではイランの海峡封鎖を非難するとともに、自由な航行を回復させるために有志国がとり得る外交、軍事、経済措置を話し合っていくことになったという(※3)。
米国の中東介入が長期化すれば、台湾を含むインド太平洋で日米同盟の抑止力にも懸念が生じる。米欧の亀裂の修復は、6月にフランスで開かれるG7サミットの成功と結束の回復にもつながるだろう。そこへ向けて高市外交の構想力が問われる。
バナー写真:フランスのマクロン大統領(左)とトランプ米大統領(AFP=時事)
(※1) ^ 3月18日読売新聞朝刊、『スキャナー 米圧力、首相ジレンマ 中東艦船派遣日米結束」「リスク回避」両立探る』。
(※2) ^ “Trump’s Brusque Threat to Europe: Go It Alone,” By Michael D. Shear, NYT, Apr. 1, 2026.
(※3) ^ “Britain says 40 countries discuss reopening Strait of Hormuz after Iran blockade,” By Andrew Macaskill, John Irish, Muvija M, Reuters, Apr. 2, 2026