パネル調査による2026年総選挙分析:感情温度で勝った自民、低迷した中道

政治・外交

2026年2月8日に行われた衆議院総選挙は、自由民主党が316議席を獲得し大勝利を収めた。本稿では、ネット上で実施したパネル調査のデータを用いて、有権者の投票行動を分析する。

公明抜きでも自民は700万票近く増やす

はじめに、選挙結果に関する基本的な事実を確認しておこう。総務省は国政選挙ごとに選挙結果をまとめている。2024年10月の第50回総選挙と今回の第51回総選挙についてはまだ確定結果が公表されておらず、速報結果のみが示されているので、ここでは速報結果を用いる。

まず投票率であるが、24年総選挙は小選挙区で53.85%、比例区が53.84%であるのに対し、26年総選挙は小選挙区が56.26%、比例区が56.25%と、いずれも2.4ポイントほど上昇している。26年総選挙は厳寒期で行われ、かつ解散日から投票日までの期間が16日間と戦後最短であったのに投票率が微増していることは、注目に値する。

政党ごとの得票数を見ると、まず目を引くのは自民党の増え方である。24年の前回総選挙では小選挙区で2086万7762.299票、比例区で1458万2690票だったものが、今回は小選挙区で2771万493.452票、比例区で2102万6140票を獲得している。

つまり自民党の獲得票数の伸びは小選挙区において684万票以上、比例区において644万票となっている。自民党は今回、小選挙区における公明党との選挙協力を失っている。それにもかかわらず、小選挙区で700万票近くを積み増した。しかもこの増加分は比例区より40万票ほど多い。なお、公明党との選挙協力のあった第49回総選挙(2021年10月)の小選挙区での自民党の得票は2762万6235.498票であり、今回とほぼ同水準である。公明党抜きにこの水準の票を得たこと自体は大変興味深い謎であるが、これを検証するには選挙区レベルの丁寧な分析が必要となるので、本稿での課題とはしない。

一方で野党第1党であった立憲民主党は今回の第51回総選挙に臨むにあたり、公明党と合流し中道改革連合を結成した。しかし中道改革連合は小選挙区で1220万9641.795票,比例区で1043万8802票の獲得にとどまり、いずれも24年総選挙における立憲民主党の獲得票数を下回っている。

それ以外に目を引く点としては、比例区における参政党とチームみらいの躍進である。参政党は24年総選挙で187万347票だった比例区の得票を、今回の総選挙では426万620票にまで伸ばし、獲得議席数も公示前の2から15へ大きく増やした。総選挙では今回が初参入だったチームみらいは、比例区で381万3750票、11議席を獲得している。

この両党よりも得票数、獲得議席数において上回っているのが日本維新の会と国民民主党であるが、いずれも獲得議席は公示前と大差がなかった。この結果、衆議院における自民党の議席占有率は68%に達する一方、野党第1党の規模は大幅に小さくなり、野党勢力のさらなる分散が見られたのが今回の第51回総選挙ということになる。

24年総選挙と26年総選挙との顕著な違いは内閣支持率の差である。前回の総選挙が行われた2024年10月における石破茂内閣への支持率(時事通信社調査)は28.0%だった。これに対して今回の総選挙が実施される直前の2026年1月における高市早苗内閣への支持率(同じく時事通信社調査)は61.0%であった。

有権者の投票先は24年と比べてどう変わったか

このような選挙結果を踏まえ、以下では有権者の投票行動を政党別に分析していく。分析のポイントは、自民党票が増えた仕組み、中道改革連合はなぜ忌避されたか、そして参政党とチームみらいの票はどこから来たか、である。

図1はネット調査(※1)の回答から、小選挙区における各党の得票を24年総選挙と26年総選挙で比較したものである。

26年総選挙で自民党に投票したと回答している人の24年総選挙における投票行動を見ると、前回も自民党に投票したと回答した人の割合は57.7%である。2年前の前回は自民党に投票していないが、今回は自民党に投票した人を見ると、割合が最も多いのは「覚えていない」の7.8%であり、これに次ぐのは前回棄権者(「投票には行っていない・していない」と回答)の5.6%である。他党からの流入としては立憲民主党と国民民主党からがそれぞれ4.9%、日本維新の会からが4.7%であり、それ以外の政党からの流入の総和は5.7%である。前述したように、自民党は小選挙区において公明党との選挙協力を解消していたにもかかわらず、700万票近くを積み増している。ここから生まれる推測は、自民党が投票率の上昇分や他党に流れていた分を今回はかなりの程度吸収したのだろうということである。

図1:2026年衆院選・小選挙区で自民党に投票した人の24年衆院選・小選挙区での投票行動

小選挙区では政党の候補者擁立がまちまちであり、有権者としては投票したい政党の候補者がいないということも少なくない。よってそのような制約から自由な比例区における投票移動を図2でよって確認してみよう。

今回比例区で自民党に投票したという回答者のうち、前回も自民党に投票したと回答したのは58.1%である。前回自民党に投票していなかったのに、今回自民党に投票した人の内訳を見ると、「覚えていない」が6.6%、国民民主党に投票していた人が6.3%、「投票には行っていない・していない」が5.8%、日本維新の会が4.1%、立憲民主党が3.8%となっている。それ以外の政党からの流入の総和は7.1%である。この結果から他党からの票のみならず、これまで選挙にあまり強い関心を抱いていなかった層を自民党が掘り起こしている可能性が示唆される。

図2:2026年衆院選・比例区で自民党に投票した人の24年衆院選・比例区での投票行動

同様に他の政党への比例区投票についても見てみよう。図3は中道改革連合への投票者が前回総選挙の比例区でどのような投票行動をとっていたかを示している。この図を見ると、前回比例区で立憲民主党に投票したと回答した人の割合が54.9%で最も高く、次いで公明党からが13.0%、自民党からが8.7%となっている。これらの政党以外から中道改革連合に流入してきたのは全部合わせて11.5%ほどである。一方で「覚えていない」は6.0%、「投票には行っていない・していない」は2.1%であり、図2における自民党と比較すると、こうした層からの流入は少ないようである.

図3:2026年衆院選・比例区で中道改革連合に投票した人の24年衆院選・比例区での投票行動

比例区で得票を伸ばした参政党(図4)とチームみらい(図5)についても見ておこう。参政党に今回投票したと回答した人のうち、前回も参政党に投票していたと回答した人の割合は28.8%である。他党からの流入を見ると、最も多いのが自民党からで12.8%、次いで国民民主党からの10.3%である。また前回は維新に投票していたと回答している人は7.0%となっている。それ以外の政党からの流入の総和は13.2%である。また「覚えていない」が11.2%、「投票には行っていない・していない」が7.2%となっており、自民党同様にこれまであまり選挙に強い関心を持っていなかったと思われる層をひきつけた可能性が高い。

チームみらいに投票した層の前回総選挙での比例区における投票先を確認すると、割合の高い順に立憲民主党(17.1%)、自民党(15.1%)、「覚えていない」(14.2%)、国民民主党(13.5%)、日本維新の会(10.5%)となっている。それ以外の政党からの流入の総和を取ると15.0%であり、広範な層から得票していることがわかる。

図4:2026年衆院選・比例区で参政党に投票した人の24年衆院選・比例区での投票行動

図5:2026年衆院選・比例区でチームみらいに投票した人の24年衆院選・比例区での投票行動

中道改革連合はなぜ忌避されたか

われわれが選挙前に行ったネット調査では、各政党について投票する可能性を10段階で回答してもらった。0であれば投票する可能性はなく、10なら可能性があるものとし、0から10までの整数を回答者に1つ選んでもらう形式である(※2)。その回答結果を下表にまとめた。投票される可能性が最も高いのは自民党で4.92である。次いで国民民主党の4.35、日本維新の会の3.98と続く。中道改革連合は3.01であり、チームみらいの3.44、参政党の3.27よりも劣っていた。

投票する可能性

平均値 標準偏差
自民党 4.92 3.36
中道改革連合 3.01 3.15
日本維新の会 3.98 3.00
国民民主党 4.35 2.90
参政党 3.27 3.09
れいわ新選組 2.18 2.74
共産党 1.92 2.68
日本保守党 2.84 2.91
社会民主党 2.00 2.53
チームみらい 3.44 2.96

(注)投票する可能性がない場合を0,可能性がある場合を10

われわれの調査には各政党に対する感情温度を尋ねる設問がある。0を「とても嫌い」、10を「とても好き」として、0から10までの整数値で政党に対する好悪を尋ねている。下表がその結果である。もっとも好かれているのは自民党と国民民主党の4.50で、それに次ぐのが日本維新の会の4.15だ。以下チームみらい3.89、参政党3.53、日本保守党3.13と続き、その下に中道改革連合の3.03がある。れいわ新選組(2.55、共産党(2.16)、社会民主党(2.29)と左派政党に対する嫌悪が有権者の間で総じて強いことがうかがえる。

政党に対する感情温度

平均値 標準偏差
自民党 4.50 2.846
中道改革連合 3.03 2.779
日本維新の会 4.15 2.666
国民民主党 4.50 2.467
参政党 3.53 2.837
れいわ新選組 2.55 2.683
共産党 2.16 2.593
日本保守党 3.13 2.741
社会民主党 2.29 2.508
チームみらい 3.89 2.640

(注)0が「とても嫌い」、10は「とても好き」

党首に対する好悪も同様に尋ねている。下の表をみると自民党の高市早苗に対する好感度が群を抜いていることがわかる。これに次ぐのは維新の吉村洋文の4.69、国民民主の玉木雄一郎の4.27で、この3人以外に4を超える党首はいない。そんな中で中道改革連合の共同代表だった野田佳彦は3.21、同じく共同代表だった斉藤鉄夫は2.79であり、中道改革は党首についてもあまり好感を持たれていないことがわかる。

以上から、政党のイメージ、党首の魅力といった点において中道改革連合の結成はプラスに働くところがなかったように見受けられる。

党首に対する感情温度

平均値 標準偏差
高市早苗 5.69 3.25
野田佳彦 3.21 2.63
斎藤鉄夫 2.79 2.57
吉村洋文 4.69 2.83
玉木雄一郎 4.27 2.55
神谷宗幣 3.48 2.85
山本太郎 2.78 2.78
田村智子 2.44 2.58
百田尚樹 2.89 2.68
福島瑞穂 2.31 2.51
安野貴博 3.98 2.66

(注)0が「とても嫌い」、10は「とても好き」

左派政党に厳しい有権者の「左右」分布

これまでの分析からわかるように、現在の日本において左翼政党とその指導者に対する有権者の好感度は低い。図6は有権者に左(0)から右(10)までの10段階で自身の位置を尋ねたものである(※3)。見てわかる通り、分布は左右均一ではない。4以下と答える左寄りの回答者は18.2%に過ぎず、6以上と認識する右寄りの有権者は40%を超えている。すなわち政党がこの尺度上で多くの票を得ようと思えば、5から8の間の有権者層にリーチすることが合理的ということになる。

図6:有識者の左右自己認知(2026年選挙前調査)

下表は26年総選挙における各党の比例区得票が、左右の軸上でどのように分布しているかを四分位点(パーセンタイル)で確認したものである。自民党は6を中心に5から8まで50%の得票を得ていることがわかる。これに対して中道改革連合は4と5の間での得票が50%となっている。日本維新の会と国民民主党は5から7、参政党は5から8となっており、各政党がどの層の有権者を軸に得票しているかがわかる。現在比較的有権者から好意的に評価されている政党は5から右を中心に得票しているのである。

各政党の比例区得票と左右イデオロギー

パーセンタイル
25 50 75
自民党 5 6 8
中道改革連合 4 5 5
日本維新の会 5 5 7
国民民主党 5 5 7
参政党 5 6 8
れいわ新選組 3 5 5
共産党 2 3 5
日本保守党 6 8 9
社会民主党 3 4 5
チームみらい 5 5 6

この状況は、中央から左にかけての政策(マイノリティや弱者救済の視点を重視したものが多く含まれるであろう)を志向する政党にとって逆境に他ならない。左右尺度上の多数派に拠ろうとすれば、それは左翼政党的なアイデンティティを失うことになる。活路を見出すとすれば、この左右尺度に乗っていない有権者、すなわち左右自己認知を持たない有権者にリーチして支持基盤とすることであろう。

このような有権者はわれわれのデータにおいては30%程度存在する。もちろんこの30%が現状に満足していて幸福であれば、野党のアプローチに応じる可能性は少ないし、この層の不安や不満をすくいとり、政策に反映させることで信頼を得ることは容易ではない。しかも左翼的な野党はいずれも資金や人員といった組織資源において保守政党よりも不利であることが少なくない。そうであればあるほど、弱い野党であるからこそ、まとまらねば生き残れないのではなかろうか。日本の左翼政党が小異を捨てて大同につくことができないのであれば、その未来に明るい展望は開けないだろう。

バナー写真:自民党の開票センターで、ニコニコ動画の取材に臨む高市早苗首相(同党総裁)=2026年2月8日夜、東京・永田町の同党本部(時事)

(※1) ^ 選挙前調査(n=19927)は2026年1月28日から2月7日、選挙後調査(n=14405)は2026年2月10日から2月12日までの期間で実施された。調査経費は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(S)「民主主義の揺らぎとその克服」(研究代表者は松林哲也大阪大学教授)による。

(※2) ^ 具体的な設問は以下のとおりである.「政治に関して、ときどき、「左寄り、右寄り」という表現をすることがあります。0が「左」を意味し 10 が「右」を意味するとします。あなた自身はどこに位置すると思いますか。(中略)0から 10 までの中から数字を1つお選びください。」

(※3) ^ 具体的な設問は以下のとおりである.「政治に関して、ときどき、「左寄り、右寄り」という表現をすることがあります。0が「左」を意味し 10 が「右」を意味するとします。あなた自身はどこに位置すると思いますか。(中略)0 から 10 までの中から数字を1つお選びください。」

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